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あるきメデス

あちこちを歩いて、見たこと、聞いたこと、知ったこと、感じたことなどを…

四国遍路道ある記(前編)・徳島その6

2006-09-13 23:00:23 | 初めての四国遍路
 今日も1日雨で、最高気温も20℃前後と10月下旬並みとか。
長袖とブルゾンを着用して外出しました。

 引き続き四国遍路道ある記・徳島の続きを報告します。


 第6日 2004年2月25日(水) 曇後晴 <20番鶴林寺~22番平等寺>
 =二つ目のへんろ転がしを越える=
 
 5時50分起床、6時20分朝食、7時5分に出発する。雲が一杯だが
雨の心配はなさそう。

 今日は「1に焼山、2にお鶴、3に太龍寺」といわれる2つのへんろ
転がし、鶴林寺(かくりんじ)と太龍寺(たいりゅうじ)越えである。

 民宿の少し先からへんろ道に入る。家並みが途切れると、西側の
勝浦川沿いの集落やその向こうの山並みの展望が開けてきた。


 ミカン畑の間の上りですぐに汗ばみ、厚手のシャツを1枚脱ぐ。
今朝もウグイスがきれいな声でさえずる。

 ミカン畑が終わると疑木の階段。疲労が片寄らぬよう、足の踏み
出しと折り畳み杖を持つ手を、意識して交互に変える。

 林道を横断して先行のSさんを抜く。上り一方の道だが、1時間
15分で20番鶴林寺に着いた。

 重厚な山門をくぐり、静寂な杉木立とこけむす岩の間を上がる。
ゲラが「トトトトト……」と木を突く。

 本堂の両脇に鶴の彫刻がある。境内には、ゆうべ同宿のご夫妻と
Mさん、そして車で来たご夫妻のみ。

 納経印をもらい、山門まで戻らずに大師堂の前から、太龍寺へ
向かう急坂のへんろ道を下る。

 落ち葉の多い杉林は疑木の階段の急降下、下りなのに緊張して
汗が出る。車道まで下って、ほっとしてひと休みした。

 再び杉林の下ってゆくと、ご神木の大杉が立つ八幡神社があり、
ほどなく大井の車道へ。神光本宮という新興宗教の新しい社殿の
先、水井橋で那賀川を渡る。


 支流の若杉谷川の手前から、川の左岸に沿ったへんろ道に入る。
歩きやすい簡易舗装の道、心地よい水音をはるか下から聞きなが
ら進むと、こけむす東屋(あずまや)があった。

 阿南市史跡・若杉山遺跡の説明板があり、ここは全国最古の
辰砂(しんしゃ)生産地とのこと。辰砂とは水銀朱のことで、縄文
時代から赤い顔料として土器を彩ったのだという。

 歩いていると、こういう新しい知識や発見が増えるのが楽しみだ。

 いつの間にか右岸に回り、ウグイスのさえずりを聞きながら沢沿い
に進む。沢を離れて山道となって間もなく、石鳥居があるが社殿
のない神社跡らしいところに出た。

 周辺に数枚の棚田があり、農作業を終えたご夫妻が帰り支度中。
ご挨拶をしたら、奥さんからミカンのお接待をいただいた。

 山間にあるこの棚田周辺には鹿が多く、田植え後すぐに食べられ
てしまうので目が離せないとのこと。

 神社に大きな木があるのに気づき、聞くとムクノキだという。以前、
この辺りには集落があったのだが、皆、下りてしまったとも話して
くれた。確かに、近くに1戸だけ建物が残っていた。

 その先は疑木の付いた緩やかな上りが続き、やがて平等寺への
分岐に出た。11時過ぎ、21番太龍寺の風格ある山門をくぐる。

 太い杉木立に囲まれた参道、かなりの傾斜を上がり、もう一つ山門
をくぐって納経所横に着く。幽玄な山上の霊場というふんい気。本堂
には、灯の入ったすかし灯籠がたくさん下がっていた。

 本堂と大師堂の間に古い多宝塔、納経所のそばには六角堂がある。
納経所の建物の廊下は、龍天井と呼ばれ、天井に龍が描かれていた。

 納経を終え山門に下る途中で、野宿で回っているという大荷物の
逆打ち遍路氏が上がってきた。

 お勧めの宿とそうでない宿、遍路に心暖かい喫茶、歩き遍路に
冷たい札所のことなど、いろいろ話してくれた。「いい出会いを
つくって下さい」と言われて分かれる。

 山門を出て沢沿いに車道をどんどん下る。「車道太龍寺参道」と
記された三差路の隅にシートを広げて昼食。青空が広がってきた。

 黒川集落に下る。棚田のそばに龍山荘、加茂川との合流点には
坂口屋と、2つの民宿があった。

 県道28号、阿南小松島線は沢沿いの道、途中で、少しだけ小魚
の泳ぐ小川に沿ったあぜ道に入って県道をショートカット、阿瀬比
町で国道195号を横断する。

 すぐ先に、へんろ小屋2号と記された休憩舎があった。阿瀬比
地区住民の善意と近畿大教授・歌一洋さんの設計企画で生まれた
と記された新しい建物。

 ただし宿泊はお断りと書いてあり、太龍寺で会った野宿遍路氏の
苦言が、ノートに記されていた。類似のものはこの後、何カ所かで
お目にかかる。

 その先は、野宿遍路氏お勧めのへんろ道。ミカン畑や田んぼの
横を進む簡易舗装の快適な道。ミカン畑が終わると杉林。


 木漏れ日の林をトラバース、その先の林も歩きやすく、今日は
もちろん、今まで一番のへんろ道だった。


 黒牛の牛舎を見下ろして岡花の車道に出る。西光寺集落を抜けて
22番平等寺(びょうどうじ)に着いた。

 手水鉢に実の付いたナンテンの葉があり、寺の心配りが嬉しい。
こぢんまりした寺だが、本堂には千羽鶴が下がり、本堂下の斜面に
スイセンが花盛りで気に入った。


 今日の宿は、山門のすぐ東、食堂兼営の山茶花。部屋は8畳間で
明るく、すぐに入れてもらった風呂にはお湯があふれ、洗濯機、乾燥
機とも無料で使わせてもらった。

 18時からの夕食も、盛りだくさんでおいしい。料理が多いので
ご飯は1杯で十分。3日ぶりの缶ビールがうまく、満足した。

 同宿は、きのうもご一緒した奈良市のご夫妻。2日くらいずつの
区切り打ちを続けているが、2人とも足にまめが出来たので、明日
は帰るとのことだった。

 へんろ転がしも案ずるほどでなく、車の多い国道歩きもなく、天気
もおだやか、この5日間で最良の宿と、よいことづくめだった。

〈コースタイム〉金子や7:05~20番鶴林寺8:20~45ー若杉谷川へんろ
道入り口9:40ー若杉山遺跡10:08~11ー21番太龍寺11:07~12:00ー
「車道太龍寺参道」標(昼食)12:28~58ー民宿龍山荘前13:20ーへんろ
小屋2号13:55~14:04ー峠(平等寺へ3㎞)14:33ー牛舎下15:00~05ー
22番平等寺15:28~50ー民宿山茶花15:50

(距離 22km、歩行地 勝浦町、阿南市、歩数37,700)

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