魯生のパクパク

占いという もう一つの眼

反骨の死

2015年12月10日 | 日記・エッセイ・コラム

火星は天秤座にいる
戦後70年の年に焼跡派の旗を掲げた野坂昭如が死んだ。85歳。終戦時15歳。
大昔、野坂と同生年月日の人の奥さんから、ご主人の仕事の相談を受けたことがある。病弱で仕事が続かず、本人は落語家になりたいと言っていると聞いて、感慨深かった。
グランドクロスを抱えて生まれた人の苦悩とはどういうものか、解ったような気がした。

どう答えたか、よく憶えていないが、多角的好奇心と集中力を活かすために、定職にこだわらず、当時はまだ無かった、便利屋のようなことをしてはどうかと言ったと思う。
落語については、良い師匠がいれば是非やってみた方が良いが、創作落語のようなものでなければ、多分、ものにならないと思いますと答えたように思う。

野坂の作品を全部読んだわけではないが、感動したのは、「エロ事師たち」と「好色の魂」だろうか、お上が定める感性や価値に、不屈の反骨精神で立ち向かう人生に、野坂自身が乗りうつっているようで、ファンになった。ただ、半世紀近くにもなるので、定かな記憶は無い。
「火垂るの墓」は、受賞時に読んだが、何か視点が違うような気がするので、アニメ版は観ていない。深い悲しみに涙は出ない。

権力と戦争の愚かしさを知る、語り部がまた一人いなくなった。