転妻よしこ の 道楽日記
舞台パフォーマンス全般をこよなく愛する道楽者の記録です。
ブログ開始時は「転妻」でしたが現在は広島に定住しています。
 



宙組『翼ある人びと―ブラームスとクララ・シューマン』の
本日12時公演を観てきた(@シアター・ドラマシティ)。
本当は公演期間の終わり頃になってから観たかったのだが、
今週後半には仕事の関係で岡山に行かなくてはならず、
昼に行って来られるというと今日しかなかったので決行した(汗)。

今回は宙組だからとか誰が出るからとかいう理由ではなく、
題材がブラームスとシューマン夫妻だから、行った。
宝塚でこうした音楽家たちがどう描かれるか興味があったのだ。
行ってみてわかったが、リストやワーグナー、ヨーゼフ・ヨアヒム、
それにベートーヴェン?まで登場したのは嬉しかった(笑)。
バックに流れるのは『暁の歌』『メフィスト・ワルツ』『ラインの黄金』、
ブラームス作品118-2『間奏曲』(聴きながら「速い!テンポ速いよ!!」
と反射的に思ってしまったのは、私がビョーキだからであった・汗)、
それに作品118の『ロマンス』、『ハンガリー舞曲』『子守唄』、等々。
そうそう、クララがバッハの平均律第一巻第3番のプレリュードを
チラリと弾いたのも私は聞き逃さなかったぞ(笑)。
そして繰り返し歌われる主題歌はブラームスの交響曲第3番の第3楽章。

若きブラームスを演じるまぁくん(朝夏まなと)は、
生真面目でまっすぐだが大変に不器用な青年、
という役どころがとてもよく似合っていた。
私はまだよく知らないのだが、男役まぁくんというのは
普段からこういう雰囲気を持っているのだろうか?
確か『銀英伝』ではキルヒアイスを演っていた筈……。
人付き合いが得意でなく、何かと気難しい面を持ちながらも、
シューマン家の子供達と自然に接する場面などでは、
ナイーブなブラームスの本質的な素直さがよく伝わって来た。
子供の人数は大幅に省略されて、長男エミールと末子フェリックスと、
あとは女の子ひとりで、全部で3人という設定になっていたが(笑)。

クララの伶美うららちゃんは、すらりとしたドレス姿が素敵で、
声が良く、台詞の滑舌が見事なのには感心させられたし、
ピアニストとして大活躍したクララらしい華やかさがあり、
それでいてまぁくんとのバランスが良く、
「準主役」としての位取りが本当に的確だった。
シューマンのきたろう(緒月遠麻)くんは、二枚目なのだが
他の皆より年長であるシューマンの雰囲気が適切に出ていて、
しかも優しさに溢れており、これまたとても魅力的だった。
生活力がないこと以外は、まさに理想の夫という感じだった。
勿論、死因についてはあまり追求されていなかった(^_^;
(「ロベルト、どのタイミングで身投げするのかな~…」
と観ながらずっと私が構えて待っていたことは、ここだけの話(!))。

脚本・演出は上田久美子先生で、私は今回、
特定の贔屓の生徒さんのために観たのではないので、
青年ブラームスの旅立ちという幕切れに深く感動したわけでは、
実のところ、なかったのだけれども(^_^;、
繊細なテーマを扱っていながら、同時に、
不思議なリアリティのある「笑い」の要素が
あちこちに仕掛けられていたことが、とても面白いと感じた
(シューマンがクララを深く愛しているとのろける一方で、
『彼女は、…ケチなんだ。キミも結婚するときは気をつけなさい』
と真面目にブラームスに打ち明けるところとか、
終盤に家政婦のカタリーナ(花里まな)が
『(老ブラームスが亡くなるとき)気持ち悪かったけど(←!)
手を握ってあげた。そうしたらとても安心して逝きなさった』
などと言うところ、等々、良い間合いのユーモアがあったと思う)。

しかし私にとって今回何より大きな発見だったのは、
白シャツの襟元に赤いスカーフ、それにロングコート、という服装は、
それだけで観客の皆にすぐ「ベートーヴェン」だと伝わる、
という事実(!)だった。
音楽の教科書(のヨーゼフ・カール・シュティーラーによる肖像)は
どんだけ威力があるのかという(爆)。
演じていたキラ(凜城きら)くんは十分に格好いいのに(^_^;、
あのいでたちは、出てきただけで何もしなくてもベトベンだった。
ちなみにフランツ・リスト(愛月ひかる)は
メフィスト・ワルツ第1番を弾いて華麗に登場したのですぐわかった。
女性たちのアイドルであったリストの雰囲気が、ふんだんにあった。
一方リヒャルト・ワグナー(春瀬央季)は肖像画等より美形過ぎたので、
紹介があってからも、わたしゃヨソのワグナーかと思ったでした。
あれほど格好良ければ、女にだらしがなくても借金男でも、許す(爆)。

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