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トランプ大統領の突然の首脳会談受諾により発生した「外交的試練」に対応するために、日本が血眼になっていたことが推測できる。

2020-09-10 | 米朝首脳会談
ボルトン-谷内の合意、
核交渉を破局に追い込む

登録:2020-09-09 02:28 修正:2020-09-09 09:36


キル・ユンヒョンの新冷戦韓日戦_05

          

対北朝鮮超強硬派の米ジョン・ボルトン前国家安保担当大統領補佐官(左)と安倍晋三首相の「外交の懐刀」と呼ばれた谷内正太郎前国家安全保障局長=ボルトン前補佐官のツイッターより//ハンギョレ新聞社

ボルトン氏はこの会談について「東京の予測は韓国の予測と180度違い、簡単に言えば私と非常に似ている」と評した。ボルトン氏はトランプ大統領の深い信頼を得ている「安倍の日本」という友軍に出会ったのだ。

 「トランプ-金正恩(キム・ジョンウン)首脳会談について知れば知るほど、私はこの会談についていっそう落胆し否定的になった」

 6月末に大きな波紋を呼んだ回顧録『ジョン・ボルトン回顧録 トランプ大統領との453日』で、ジョン・ボルトン前国家安保担当大統領補佐官は、この2年にわたる朝米核交渉を、上のように渇いた陰鬱な表現で回想している。ボルトン氏は北朝鮮核問題の解決のために歴代の米政府がこの20年余りにわたり傾けてきた多くの努力をまとめて非難した後、「金正恩に会う」というドナルド・トランプ大統領の情熱についても「頭が痛かった(sick at heart)」との表現で冷笑した。

 対北朝鮮超強硬論者である「ネオコン」のボルトン氏がチョン・ウィヨン大統領府安保室長と初めて顔を合わせたのは、任命22日目の2018年4月12日だった。この会談でボルトン氏はチョン室長に対し、同月27日に予定される「板門店会談」において韓国からは「非核化についての具体的論議を避けること」を要求した。「北朝鮮が韓国を引き入れ、韓国と米日の仲たがいをさせるのではないかと懸念される」との理由からだったが、米政府内で北朝鮮に要求する「非核化の方式」についての十分な意見調整が行われていなかったことも影響を及ぼしたものとみられる。この頃、米国はマイク・ポンペオ国務長官による4月1日の1回目の訪朝を通じて、北朝鮮の金正恩国務委員長の非核化に対する意志を「直接」確認したばかりだった。それまでのトランプ大統領の対北朝鮮政策は、すべてのオプションをテーブルの上にのせる「最大限の圧迫」を通じて非核化を誘導する、というのがすべてだった。対話が始まったのだから、それにともなう準備が必要だった。

 チョン室長がホワイトハウスを訪問した「まさにその日」に、ボルトン氏を訪れたもう一人の客がいた。安倍晋三首相の外交の「懐刀」であり、12・28韓日合意を通じて、日本軍「慰安婦」問題の「最終的かつ不可逆的解決」を試みた谷内正太郎・前国家安全保障局長だった。ボルトン氏の表現を借りれば、谷内氏は「できるだけ早く(北朝鮮の核問題についての)自分たちの見通しを話したい」と述べた。トランプ大統領の突然の首脳会談受諾により発生した「外交的試練」に対応するために、日本が血眼になっていたことが推測できる。

 堅苦しく事務的な雰囲気で終わったと思われるチョン・ウィヨン-ボルトン会談とは異なり、ボルトン-谷内会談では、その後の朝米核交渉の方向性を事実上決定する「驚くべき化学作用」が発生した。谷内氏はボルトン氏に「核を持つという北朝鮮の決心は確定したものなので、この問題を平和的に解決しうる最後の機会に近づいている」とし、日本はブッシュ政権が2000年代半ばの6カ国協議で試みた「行動対行動」の解決策を望んでいないと述べた。「行動対行動」原則は一見合理的に見えるが、北朝鮮が意味ある措置を取る前に経済的利益を得ることを認めているため、肝心の非核化を「永遠に遅らせる」との理由からだった。谷内氏はさらに「トランプ政権下で直ちに(北朝鮮の核の)解体を開始し、(非核化に)2年以上かからないことを望んでいる」と述べた。するとボルトン氏は、自らが主導した2004~5年のリビアの非核化に言及し「6~9カ月あれば十分」と答えた。ボルトン氏は谷内氏が「返事の代わりに妙な笑みを残した」と書いている。ボルトン氏はこの会談について「東京の予測は韓国の予測と180度違い、簡単に言えば私と非常に似ている」と評した。ボルトン氏はトランプ大統領の深い信頼を得ている「安倍の日本」という友軍に出会ったのだ。

 1週間後には安倍首相が直接乗り出してきた。安倍首相は4月17~18日、フロリダ州にあるトランプ大統領の別荘「マール・ア・ラーゴ」で「北朝鮮と合意を結ぶには、本当に実効性のある合意を結ばなければならない」と要求した。さらに北朝鮮に核だけでなく、あらゆる生物・化学兵器も放棄させねばならず、米国を攻撃できる大陸間弾道ミサイル(ICBM)はもちろん、日本を脅かす中・短距離弾道ミサイルも放棄させるべきだと強調した。北朝鮮が事実上受け入れがたい「最大値の要求」をしたのだ。

 それから10日後の27日、南北首脳が板門店(パンムンジョム)で会談した。4・27「板門店宣言」には米国の要求通り「南北は『完全な非核化』を通じて核のない朝鮮半島を実現するという共同の目標を確認」するという宣言的な文句だけが盛り込まれた。今度は米国の出番だった。

 ボルトン氏と谷内氏の間で、北朝鮮の非核化方式に関する「具体的合意」がなされたのは5月4日だった。同じ日に行われたチョン・ウィヨン-ボルトン会談を伝えるホワイトハウスの発表文には「文在寅(ムン・ジェイン)大統領の5月22日の訪米準備を開始する」との実務的な内容が書かれているに過ぎない。しかし、同日行われたボルトン-谷内会談の結果を伝える発表文には、北朝鮮のすべての核、弾道ミサイル、生物・化学兵器、さらには関連するすべてのプログラムを、完全かつ永久に解体するという共有された目標を、両氏が再確認したという文が含まれている。過度に結果論的な解釈とも言えるだろうが、翌年2・28「ハノイの悲劇」の直接の原因になったとされる(トランプ大統領が金正恩委員長に渡した)「非核化定義文書」の内容が、この日米日間で合意されていたことが分かる。そういった意味では、2018年5月4日を、朝米核交渉の悲劇的運命が事実上決定した「運命の日」と呼ぶこともできるかもしれない。

 ボルトン氏と谷内氏の合意内容がメディアに公開されたのは、それから9日後の5月13日だった。ボルトン氏はABC放送のインタビューで「非核化というのは単に核兵器のみをいうのではない」とし「弾道ミサイルもテーブルの上に載せてあり、化学・生物兵器にも触れる」と述べた。続いて「永久かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」とは「すべての核兵器をなくし、それらを解体して(米国の核施設)テネシー州オークリッジに持ってくることを意味する」と述べた。米国が北朝鮮の核・弾道ミサイルと化学・生物兵器を対象として、迅速かつ攻撃的な「ビッグディール」式の非核化を進めるという公開宣言だった。ボルトン氏の「強硬論」はその後、北朝鮮と直接交渉する国務省の「現実論」と対立し、浮き沈みすることになるが、結局ハノイでの2回目の首脳会談まで生き残り、核交渉を破局へと追い込むことになる。

 事実上の「白旗投降」を求めるボルトン氏の要求に北朝鮮は動揺した。3日後の16日、北朝鮮のキム・ゲグァン外務省第1次官(当時)は「ボルトンをはじめとするホワイトハウスと米国務省の高位官僚たちは『まず核放棄、後に補償』など(中略)リビア核放棄方式などの主張を行っている」とし「米国の処置には激怒を禁じえず、米国が真に健全な対話と交渉を通じて朝米関係改善を望んでいるのか疑わしい」という反応を見せた。続いて北朝鮮内の強硬派であるチェ・ソンヒ外務次官は24日、マイク・ペンス副大統領の3日前の「FOXニュース」のインタビューの内容を問題視し、「我々は米国に対話を乞うことはせず、米国が我々と向き合わないと言うのなら、強いて引き止めることもないだろう」と述べた。この頃の北朝鮮の最大の悩みは「米国を信じても良いのか」という信頼の問題だった。金正恩委員長は文在寅大統領との4・27徒歩橋会談などで「我々は核を放棄する誠意を持っている。米国が我々の要求を受け入れれば、1年以内に非核化することも可能だ。米国が受け入れるかどうか心配だ」と述べたという。

 北朝鮮の激しい反応に当惑したトランプ大統領は、その直後の24日午前9時45分(米国時間)、ツイッターにアップした公開書簡で「最近の談話文に表れた激しい怒りとあからさまな敵愾心からして、会談を開くのは不適切だと感じる」とし、6月12日にシンガポールで予定されていた会談を突然取り消した。チョン・ウィヨン室長はその朝遅く(韓国時間では真夜中だったはず)、ボルトン氏に「強い抗議」の意を込めた電話をかけたが、谷内氏は「会談が取り消されて非常に安心した」という反応を示した。

 もちろん、これは最終的な結末ではなかった。キム・ゲグァン氏は会談取り消し直後の25日、公開談話で「トランプ大統領が過去のどの大統領も下せなかった勇断を下したことを高く評価」したとし「朝鮮半島と人類の平和・安定のために、開かれた心で米国側に時間と機会を与える用意がある」と述べた。金委員長も26日、文大統領と板門閣(パンムンガク)で突然首脳会談を開き、朝米会談に対する切実な意志を示した。金委員長は感謝の意を込めて文大統領を抱擁した。

 鍵を握るトランプ大統領も、心から会談を取り消すつもりはなかった。板門閣で南北首脳会談が行われたというニュースが伝えられた後の26日、「われわれは6月12日にシンガポールで会う。これは変わっていない」と述べた。北朝鮮も『労働新聞』の1面で「6月12日に予定される朝米首脳会談」と表現し、会談を既成事実化した。実際に解決した問題は何もなかったが、破局はひとまず回避されたように見えた。
//ハンギョレ新聞社

キル・ユンヒョン|統一外交チーム記者。大学で政治外交学を専攻。駆け出し記者時代から強制動員の被害問題と韓日関係に関心を持ち、多くの記事を書いてきた。2013年秋から2017年春までハンギョレ東京特派員を務め、安倍政権が推進してきた様々な政策を間近で探った。韓国語著書に『私は朝鮮人カミカゼだ』、『安倍とは何者か』、『26日間の光復』など、訳書に『真実: 私は「捏造記者」ではない」(植村隆著)、『安倍三代』(青木理著)がある。 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )


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