【東京発】
朝日会談の合意内容を再度報道 行動措置7項目を紹介/朝鮮中央通信
朝鮮民主主義人民共和国の国営朝鮮中央通信は30日、スウェーデンのストックホルムで行われた朝日政府間会談で合意した内容を再度報じた。
同通信の記事は、日本側が29日に発表した「全文」と同じ形式で、朝日双方が取る行動措置を「日本側」「朝鮮側」に分けて各7項目を紹介した。
同通信は29日、「朝日政府間会談の結果に関する報道」と題して会談での合意内容を詳しく伝えていた。
【露・モスクワ=東京発】
「今回はだいぶ前進あった」 日朝協議終えた北朝鮮大使/日・共同通信
スウェーデン・ストックホルムでの日朝政府間協議を終え帰途に就いた北朝鮮の宋日昊・朝日国交正常化交渉担当大使は29日、経由地モスクワの空港で一部記者団に対し「長い間何度も会談をやってきたが、今回の会談はだいぶ前進があったと評価する」と述べた。
協議では、北朝鮮が日本人拉致被害者の全面的再調査を実施し、再調査開始段階で日本は独自制裁を一部解除することで合意。宋大使は「双方が一定の問題について共通の理解を持った。双方が共通の目的に向かって行動で示すべきだろう」と指摘。合意内容については日本が「誠実に履行してくれることを期待する」と述べた。
宋大使は拉致問題をめぐり「われわれは誠実な努力を重ねてきた。日本政府もわれわれの努力を認定したということを評価しつつ、やるべきことは全部する」と語った。
【中・北京=ソウル=東京発】
日本との外務省局長級による政府間協議に出席した北朝鮮の宋日昊(ソン・イルホ)朝日国交正常化交渉担当大使は30日、スウェーデンから帰国するため経由した中国・北京空港で記者団に対し、早期に特別調査委員会を構成し日本人拉致問題の再調査を行うと明らかにした。
宋大使は「できる限り早く迅速に日本側に(調査結果を)通知する考え」と述べた。菅義偉官房長官は29日の会見で、北朝鮮の調査委の設置には3週間程度かかるとの見通しを示している。
今回の協議での合意に在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)中央本部の競売問題が含まれるかとの質問には、「合意文で在日朝鮮人の地位問題に言及した。これに朝鮮総連会館の問題も必ず含まれる」と強調した。前回の日朝政府間協議に出席した宋大使は同問題に関連し先月1日、「この問題の解決がなければ朝日(日朝)関係の進展自体が必要ない」と述べていた。
宋大使はまた、「信頼関係を深め、この方向の通りに解決することが重要だ」と述べた。
宋大使はスウェーデン・ストックホルムで26~28日の3日間、日本外務省の伊原純一アジア大洋州局長と協議を行い、拉致問題に関する全面的な再調査を実施することで合意した。北朝鮮の調査が始まる段階で、日本は北朝鮮に対する独自制裁の一部を解除するほか、北朝鮮への支援を検討することで合意した。
【中・北京=東京発】
北朝鮮の宋日昊・朝日国交正常化交渉担当大使は30日、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)中央本部の売却問題が、今回の日朝合意に含まれているとの認識を示した。中国・北京の空港で記者団に答えた。
北朝鮮はスウェーデンで28日まで開かれた日本との政府間協議で、朝鮮総連中央本部ビルの強制競売問題をめぐり、ビルの継続使用を要求したが、日本側は司法判断には介入できないと主張。菅義偉官房長官は29日、この問題が今回の合意には入っていないと説明していた。
【東京発/論評全文】
平壌宣言履行のための行動措置合意 ストックホルム朝日政府間会談、信頼造成のための第一歩/金志栄・朝鮮新報平壌支局長~ 制裁と対話は両立され得ないし、日本は悪化した国内世論に自らしばられ、外交交渉を沈滞に。 状況を改善しようとするならば、対朝鮮制裁の解除が避けられない。それでこそ日本は自らの手足を縛った鎖を外して対朝鮮外交で身動きの幅を広げることができる。これは、持続的な交渉を繰り広げていくための最低限の条件
(朝鮮新報 5.30)
スウェーデンのストックホルムで行われた朝日政府間会談で、日本人に対する包括的で全面的な調査と対朝鮮制裁措置の解除などが合意された。二国間の膠着状態を打開するための糸口が作られた。双方は朝日平壌宣言に従って不幸な過去を清算し、懸案問題を解決するために具体的な行動措置を取るようになる。
持続的交渉の条件
朝日双方は平壌宣言の履行という共同目標を確認し、再出発のための条件で一致を見た。今回の合意の意義がまさにここにある。
2002年の朝日首脳会談で国交正常化の早期実現を明記した平壌宣言が採択された。首脳会談を契機に再開された朝日会談では当然平壌宣言の履行問題が議題として上程されるべきだが、その間基本問題を論ずることができないまま時間だけ浪費する状況が持続して来た。
3月末にあった北京会談と今回行われたストックホルム会談で日本側は拉致被害者を含む日本人の調査を要請した。朝鮮側からは日本当局が実施している制裁措置の解除問題を提起した。いわゆる拉致被害者に対する《再調査》と《制裁解除》が対置されるこのような交渉構図は、朝日関係が膠着状態におちいることになった原因がどこにあるのかを如実に示す。
その間、日本は拉致問題を最大化して国民感情を刺激することによって、朝鮮に対する対決路線を合理化した。2006年には独自制裁まで敢行して出た。 ところが、制裁と対話は両立され得ないし、日本は悪化した国内世論に自らしばられる格好になった。無分別な圧力路線は朝日間の外交交渉を沈滞に陥れる結果を招いた。
状況を改善しようとするならば、対朝鮮制裁の解除が避けられない。それでこそ日本は自らの手足を縛った鎖を外して対朝鮮外交で身動きの幅を広げることができる。対朝鮮敵対視政策の集中的な表現である制裁の解除は、日本が朝鮮と持続的な交渉を繰り広げていくための最低限の条件だ。
高度な政治的判断
今回、日本側は1945年を前後して朝鮮領内で死亡した日本人の遺骨問題と残留日本人、日本人配偶者、拉致被害者および行方不明者を含むすべての日本人に対する調査を朝鮮側に要請した。これに対して朝鮮側は包括的であり全面的な調査を進め《最終的に日本人に関するすべての問題を解決する意思を表明》(朝鮮中央通信報道)したという。注目される部分だ。
朝日二国間の異常な関係によって発生した問題にもかかわらず、長い歳月が流れるまで無視されてきた問題がある。これを一括解決して海を間に置いた隣国の現実を直視し共有することについての朝鮮側の主動的提案は、対日関係で高度な政治的判断と決断があったことを示唆している。
その間、日本で論議されてきた拉致被害者に対する《再調査》は第2回朝日首脳会談が行われた年である2004年にも実施されたことがある。 ところが、当時日本当局は朝鮮に対する対決政策を捨てるつもりがなかったし、いわゆる《にせ遺骨説》が出てきたことによって、世論の関心がそこに集中した。拉致被害者に対する調査をすると言って朝鮮を訪問した日本政府代表団が現地で確認した一連の事実は国民にまともに伝えられなかった。
2008年8月に中国の瀋陽で開かれた朝日実務者協議でも《再調査》と制裁解除に関する合意が実現したことがある。ところが、その直後に日本の福田首相が退陣を表明した。日本の言論は当時、朝鮮側が《再調査》を一方的に取り消したように話しているが、事実は違う。 福田政権の後に続いた麻生政権は前任者が採択した合意を継承する意志を表示するどころか、朝鮮に対する制裁措置を延長する決定から下して対決姿勢を取った。
制裁解除は通過点
日本の立場で見る時、拉致被害者に対する《再調査》の実施はそれなりの覚悟と決断が前提にならなければならない。《再調査》の結果を受けて見て、拉致問題の《決着法》を日本国民に提示するのは日本の執権者の役割だからだ。
現在としては、福田政権の決断が何だったのかを知る方法がないが、麻生政権にはそういう意志がなかった。現政権はこの問題で一歩踏み出す姿勢を見せている。
今回、日本側は独自に取っている対朝鮮制裁措置を最終的に解除する意志を表明したが、それ自身は通過点に過ぎない。朝日会談に臨む朝鮮側の立場は一貫している。交渉の目的は、平壌宣言の履行だ。 日本は8年前に独自制裁措置を強行した張本人が今日首相の席にいるが、一旦は政府間会談で今までの立場を撤回して朝鮮側と歩調を合わせていくことを約束した。
朝日会談で合意した行動措置は、対決と不信という悪循環の輪を断って二国間に信頼を作る第一歩となる。平壌宣言の精神に従って合意事項が着実に実行されていくならば、双方は次の段階に歩みを移せる。
安倍晋三首相は29日、日本と北朝鮮による外務相局長級の政府間協議を受け、北朝鮮が全ての拉致被害者と拉致の可能性が排除できない特定失踪者について、包括的な全面的調査をすると約束したことを明らかにした。首相官邸で記者団に語った内容は次の通り。
「ストックホルムで行われた日朝協議の結果、北朝鮮側は拉致被害者および拉致の疑いが排除されない行方不明の方々を含め、全ての日本人の包括的全面調査を行うことを日本側に約束をしました。
その約束に従って、特別調査委員会が設置をされ、日本人拉致被害者の調査がスタートすることになります。
安倍政権にとりまして、拉致問題の全面解決、最重要課題の一つであります。
全ての拉致被害者のご家族がご自身の手でお子さんたちを抱きしめる日がやってくるまで、私たちの使命は終わらない。この決意を持って取り組んできたところでありますが、全面解決へ向けて第一歩となることを期待しています。
詳しくはこの後、官房長官からお話をさせていただきます」
--特別調査委員会の調査が検証可能だという言質は取っているのか?
「調査を開始する時点までに具体的な組織、構成、責任者を日本側に通報すると明確な発言があった。今後、北朝鮮がいかなる構成の委員会を立ち上げ、調査を行っていくかを十分見極めた上で、わが国の部分的制裁解除は行われるということだ」
--調査委員会の立ち上げ時期は?
「速やかにということになっているが、具体的には3週間前後だと報告を受けている」
--調査の期限は?
「具体的にいつまでということは決まっていない」
--調査開始は何をもって判断するのか。具体的な成果がなかった場合の措置は?
「委員会を立ち上げて、調査を開始した時点で日本側の制裁を解除する。調査について逐次日本側に報告して日本側が調査結果を確認できる仕組みを作ったことは実効性を確保する上で極めて重要なことだ」
--北朝鮮が再調査する拉致被害者らの人数は?
「全体で、まだ掌握していない」
--人道支援は調査開始時点で検討するのか?
「現時点で人道支援を実施する具体的な見通しがあるわけではない。調査が始まって、調査の方向を見た上で検討したい」
--日本人拉致被害者の再調査実施に関し、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)中央本部ビルの問題は条件に入っているのか?
「合意条件に入っていない。裁判所の下で競売の手続きが行われており、政府として司法に介入することは考えていない」
--今回の政府間協議で日本人拉致被害者の安否情報のやりとりは?
「そうしたことも交渉の中では行われていると思っているが、具体的内容は控えたい」
--日本の制裁解除の対象に北朝鮮貨客船「万峰(マンギョンボン)92」の入港再開は入っているのか?
「入っていない。(制裁解除の対象は)在日の北朝鮮の方が本国に対して医薬品などを送りたい場合などだと理解している」
菅義偉官房長官は30日の記者会見で、北朝鮮の宋日昊・朝日国交正常化交渉担当大使が在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)中央本部の売却問題が日朝合意に含まれるとの認識を示したことに対し「裁判所で(競売)手続きが行われており、政府としては司法に介入すべきではないという立場だ。交渉で何回となく申し上げた」と反論し、今後の協議対象にはならないとの考えを示した。
朝日会談の合意内容を再度報道 行動措置7項目を紹介/朝鮮中央通信
朝鮮民主主義人民共和国の国営朝鮮中央通信は30日、スウェーデンのストックホルムで行われた朝日政府間会談で合意した内容を再度報じた。
同通信の記事は、日本側が29日に発表した「全文」と同じ形式で、朝日双方が取る行動措置を「日本側」「朝鮮側」に分けて各7項目を紹介した。
同通信は29日、「朝日政府間会談の結果に関する報道」と題して会談での合意内容を詳しく伝えていた。
【露・モスクワ=東京発】
「今回はだいぶ前進あった」 日朝協議終えた北朝鮮大使/日・共同通信
スウェーデン・ストックホルムでの日朝政府間協議を終え帰途に就いた北朝鮮の宋日昊・朝日国交正常化交渉担当大使は29日、経由地モスクワの空港で一部記者団に対し「長い間何度も会談をやってきたが、今回の会談はだいぶ前進があったと評価する」と述べた。
協議では、北朝鮮が日本人拉致被害者の全面的再調査を実施し、再調査開始段階で日本は独自制裁を一部解除することで合意。宋大使は「双方が一定の問題について共通の理解を持った。双方が共通の目的に向かって行動で示すべきだろう」と指摘。合意内容については日本が「誠実に履行してくれることを期待する」と述べた。
宋大使は拉致問題をめぐり「われわれは誠実な努力を重ねてきた。日本政府もわれわれの努力を認定したということを評価しつつ、やるべきことは全部する」と語った。
【中・北京=ソウル=東京発】
拉致問題の再調査 早急に実施へ=北朝鮮大使/聯合ニュース
日本との外務省局長級による政府間協議に出席した北朝鮮の宋日昊(ソン・イルホ)朝日国交正常化交渉担当大使は30日、スウェーデンから帰国するため経由した中国・北京空港で記者団に対し、早期に特別調査委員会を構成し日本人拉致問題の再調査を行うと明らかにした。
宋大使は「できる限り早く迅速に日本側に(調査結果を)通知する考え」と述べた。菅義偉官房長官は29日の会見で、北朝鮮の調査委の設置には3週間程度かかるとの見通しを示している。
今回の協議での合意に在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)中央本部の競売問題が含まれるかとの質問には、「合意文で在日朝鮮人の地位問題に言及した。これに朝鮮総連会館の問題も必ず含まれる」と強調した。前回の日朝政府間協議に出席した宋大使は同問題に関連し先月1日、「この問題の解決がなければ朝日(日朝)関係の進展自体が必要ない」と述べていた。
宋大使はまた、「信頼関係を深め、この方向の通りに解決することが重要だ」と述べた。
宋大使はスウェーデン・ストックホルムで26~28日の3日間、日本外務省の伊原純一アジア大洋州局長と協議を行い、拉致問題に関する全面的な再調査を実施することで合意した。北朝鮮の調査が始まる段階で、日本は北朝鮮に対する独自制裁の一部を解除するほか、北朝鮮への支援を検討することで合意した。
【中・北京=東京発】
「総連問題、日朝合意に含まれる」 北朝鮮大使が言明/日・共同通信
北朝鮮の宋日昊・朝日国交正常化交渉担当大使は30日、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)中央本部の売却問題が、今回の日朝合意に含まれているとの認識を示した。中国・北京の空港で記者団に答えた。
北朝鮮はスウェーデンで28日まで開かれた日本との政府間協議で、朝鮮総連中央本部ビルの強制競売問題をめぐり、ビルの継続使用を要求したが、日本側は司法判断には介入できないと主張。菅義偉官房長官は29日、この問題が今回の合意には入っていないと説明していた。
【東京発/論評全文】
平壌宣言履行のための行動措置合意 ストックホルム朝日政府間会談、信頼造成のための第一歩/金志栄・朝鮮新報平壌支局長~ 制裁と対話は両立され得ないし、日本は悪化した国内世論に自らしばられ、外交交渉を沈滞に。 状況を改善しようとするならば、対朝鮮制裁の解除が避けられない。それでこそ日本は自らの手足を縛った鎖を外して対朝鮮外交で身動きの幅を広げることができる。これは、持続的な交渉を繰り広げていくための最低限の条件
(朝鮮新報 5.30)
スウェーデンのストックホルムで行われた朝日政府間会談で、日本人に対する包括的で全面的な調査と対朝鮮制裁措置の解除などが合意された。二国間の膠着状態を打開するための糸口が作られた。双方は朝日平壌宣言に従って不幸な過去を清算し、懸案問題を解決するために具体的な行動措置を取るようになる。
持続的交渉の条件
朝日双方は平壌宣言の履行という共同目標を確認し、再出発のための条件で一致を見た。今回の合意の意義がまさにここにある。
2002年の朝日首脳会談で国交正常化の早期実現を明記した平壌宣言が採択された。首脳会談を契機に再開された朝日会談では当然平壌宣言の履行問題が議題として上程されるべきだが、その間基本問題を論ずることができないまま時間だけ浪費する状況が持続して来た。
3月末にあった北京会談と今回行われたストックホルム会談で日本側は拉致被害者を含む日本人の調査を要請した。朝鮮側からは日本当局が実施している制裁措置の解除問題を提起した。いわゆる拉致被害者に対する《再調査》と《制裁解除》が対置されるこのような交渉構図は、朝日関係が膠着状態におちいることになった原因がどこにあるのかを如実に示す。
その間、日本は拉致問題を最大化して国民感情を刺激することによって、朝鮮に対する対決路線を合理化した。2006年には独自制裁まで敢行して出た。 ところが、制裁と対話は両立され得ないし、日本は悪化した国内世論に自らしばられる格好になった。無分別な圧力路線は朝日間の外交交渉を沈滞に陥れる結果を招いた。
状況を改善しようとするならば、対朝鮮制裁の解除が避けられない。それでこそ日本は自らの手足を縛った鎖を外して対朝鮮外交で身動きの幅を広げることができる。対朝鮮敵対視政策の集中的な表現である制裁の解除は、日本が朝鮮と持続的な交渉を繰り広げていくための最低限の条件だ。
高度な政治的判断
今回、日本側は1945年を前後して朝鮮領内で死亡した日本人の遺骨問題と残留日本人、日本人配偶者、拉致被害者および行方不明者を含むすべての日本人に対する調査を朝鮮側に要請した。これに対して朝鮮側は包括的であり全面的な調査を進め《最終的に日本人に関するすべての問題を解決する意思を表明》(朝鮮中央通信報道)したという。注目される部分だ。
朝日二国間の異常な関係によって発生した問題にもかかわらず、長い歳月が流れるまで無視されてきた問題がある。これを一括解決して海を間に置いた隣国の現実を直視し共有することについての朝鮮側の主動的提案は、対日関係で高度な政治的判断と決断があったことを示唆している。
その間、日本で論議されてきた拉致被害者に対する《再調査》は第2回朝日首脳会談が行われた年である2004年にも実施されたことがある。 ところが、当時日本当局は朝鮮に対する対決政策を捨てるつもりがなかったし、いわゆる《にせ遺骨説》が出てきたことによって、世論の関心がそこに集中した。拉致被害者に対する調査をすると言って朝鮮を訪問した日本政府代表団が現地で確認した一連の事実は国民にまともに伝えられなかった。
2008年8月に中国の瀋陽で開かれた朝日実務者協議でも《再調査》と制裁解除に関する合意が実現したことがある。ところが、その直後に日本の福田首相が退陣を表明した。日本の言論は当時、朝鮮側が《再調査》を一方的に取り消したように話しているが、事実は違う。 福田政権の後に続いた麻生政権は前任者が採択した合意を継承する意志を表示するどころか、朝鮮に対する制裁措置を延長する決定から下して対決姿勢を取った。
制裁解除は通過点
日本の立場で見る時、拉致被害者に対する《再調査》の実施はそれなりの覚悟と決断が前提にならなければならない。《再調査》の結果を受けて見て、拉致問題の《決着法》を日本国民に提示するのは日本の執権者の役割だからだ。
現在としては、福田政権の決断が何だったのかを知る方法がないが、麻生政権にはそういう意志がなかった。現政権はこの問題で一歩踏み出す姿勢を見せている。
今回、日本側は独自に取っている対朝鮮制裁措置を最終的に解除する意志を表明したが、それ自身は通過点に過ぎない。朝日会談に臨む朝鮮側の立場は一貫している。交渉の目的は、平壌宣言の履行だ。 日本は8年前に独自制裁措置を強行した張本人が今日首相の席にいるが、一旦は政府間会談で今までの立場を撤回して朝鮮側と歩調を合わせていくことを約束した。
朝日会談で合意した行動措置は、対決と不信という悪循環の輪を断って二国間に信頼を作る第一歩となる。平壌宣言の精神に従って合意事項が着実に実行されていくならば、双方は次の段階に歩みを移せる。
安倍首相「全面解決へ向けて第一歩となる」 ぶら下がり会見全文
安倍晋三首相は29日、日本と北朝鮮による外務相局長級の政府間協議を受け、北朝鮮が全ての拉致被害者と拉致の可能性が排除できない特定失踪者について、包括的な全面的調査をすると約束したことを明らかにした。首相官邸で記者団に語った内容は次の通り。
「ストックホルムで行われた日朝協議の結果、北朝鮮側は拉致被害者および拉致の疑いが排除されない行方不明の方々を含め、全ての日本人の包括的全面調査を行うことを日本側に約束をしました。
その約束に従って、特別調査委員会が設置をされ、日本人拉致被害者の調査がスタートすることになります。
安倍政権にとりまして、拉致問題の全面解決、最重要課題の一つであります。
全ての拉致被害者のご家族がご自身の手でお子さんたちを抱きしめる日がやってくるまで、私たちの使命は終わらない。この決意を持って取り組んできたところでありますが、全面解決へ向けて第一歩となることを期待しています。
詳しくはこの後、官房長官からお話をさせていただきます」
菅長官の一問一答 制裁解除対象 万景峰号「入らず」(産経新聞 5.30)
--特別調査委員会の調査が検証可能だという言質は取っているのか?
「調査を開始する時点までに具体的な組織、構成、責任者を日本側に通報すると明確な発言があった。今後、北朝鮮がいかなる構成の委員会を立ち上げ、調査を行っていくかを十分見極めた上で、わが国の部分的制裁解除は行われるということだ」
--調査委員会の立ち上げ時期は?
「速やかにということになっているが、具体的には3週間前後だと報告を受けている」
--調査の期限は?
「具体的にいつまでということは決まっていない」
--調査開始は何をもって判断するのか。具体的な成果がなかった場合の措置は?
「委員会を立ち上げて、調査を開始した時点で日本側の制裁を解除する。調査について逐次日本側に報告して日本側が調査結果を確認できる仕組みを作ったことは実効性を確保する上で極めて重要なことだ」
--北朝鮮が再調査する拉致被害者らの人数は?
「全体で、まだ掌握していない」
--人道支援は調査開始時点で検討するのか?
「現時点で人道支援を実施する具体的な見通しがあるわけではない。調査が始まって、調査の方向を見た上で検討したい」
--日本人拉致被害者の再調査実施に関し、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)中央本部ビルの問題は条件に入っているのか?
「合意条件に入っていない。裁判所の下で競売の手続きが行われており、政府として司法に介入することは考えていない」
--今回の政府間協議で日本人拉致被害者の安否情報のやりとりは?
「そうしたことも交渉の中では行われていると思っているが、具体的内容は控えたい」
--日本の制裁解除の対象に北朝鮮貨客船「万峰(マンギョンボン)92」の入港再開は入っているのか?
「入っていない。(制裁解除の対象は)在日の北朝鮮の方が本国に対して医薬品などを送りたい場合などだと理解している」
総連本部問題「協議対象にならない」 菅長官が北大使に反論(産経新聞 5.30)
菅義偉官房長官は30日の記者会見で、北朝鮮の宋日昊・朝日国交正常化交渉担当大使が在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)中央本部の売却問題が日朝合意に含まれるとの認識を示したことに対し「裁判所で(競売)手続きが行われており、政府としては司法に介入すべきではないという立場だ。交渉で何回となく申し上げた」と反論し、今後の協議対象にはならないとの考えを示した。