軍内での性暴力、
違法撮影も隠蔽…背後にあるのは「閉ざされた軍隊文化」=韓国
空軍副士官、性暴力通報後自殺の事件に続き
「女性兵士を対象とした違法撮影を摘発」
「隠蔽」生む閉鎖的な組織の中で
被害者は「関心をもたれたがる兵士」扱いなど
集団内いじめを受けるパターン
空軍の女性副士官(下士官)が強制わいせつ行為の被害を通報した後、自殺する事件が発生し、波紋が広がっている。そのような中、2日に空軍の別の部隊でも性暴力事件が発生したという主張が現れた。両事件とも犯行が明らかになった後、被害者と加害者を分離する措置をきちんと取っておらず、事件を隠蔽しようとしたという疑惑が提起されている。性暴力事件を隠すことに固執する閉鎖的な軍の組織文化などを変えない限り、被害者たちは2次被害に苦しみ続けるばかりだという指摘が出ている。
軍人権センターは2日、ソウル麻浦区(マポグ)の事務所で記者会見を開き、「5月初め、空軍第19戦闘飛行団で女性兵士を対象とした違法撮影を行った男性軍幹部が現行犯で摘発された」と明らかにした。当該部隊の軍事警察が確保したA下士(副士官の階級の一つ)のUSBと携帯電話をフォレンジックした結果、大量の違法撮影物が見つかった。特にUSBメモリの中には、被害を受けた女性兵士の名前をつけたフォルダに撮影物が収められていた。被害者は少なくとも5人以上にのぼるものとみられる。撮影物が流布されていたかどうかは把握されていないが、長期間保存されていたという。
加害者は8月に除隊が決まっていた軍事警察隊所属の下士で、公式な懲戒措置は取られていないという。そのうえ、加害者と被害者との分離措置も取られていない。軍人権センターによると、情報提供者の多くが「加害者にも人権があるので大目に見てほしい」「加害者を教育しているから安心していい」などと言われたという。
これは、先月22日に空軍副士官のL中士が自身の強制わいせつ被害を通報した後に自殺した事件と類似している。L中士の遺族は「強制わいせつ被害を通報した後のもみ消しや嫌がらせなどに耐え切れず、L中士が自ら命を絶った」と主張している。両事件いずれも、性暴力事件が起きた後に軍内部で被害者と加害者の分離措置を取っておらず、事件をもみ消そうとした情況が見受けられる。
専門家たちは、軍隊での女性兵士に対する性暴力のケースは、脆弱な被害者保護▽2次加害▽進まない事件調査▽露骨なもみ消しなど、事件が発生した後に似たようなパターンを示すと指摘する。軍人権センターのキム・スクキョン軍性暴力相談所長は「特に女性兵士に対する性暴力の場合、男性中心の権力関係では、階級の権力関係を越えて下級者が上級者に性暴力を犯すこともある」とし、閉鎖的な軍隊文化とその中で学習される無力感などを慢性的な問題として指摘した。
被害通報後に発生する2次加害も、とりわけ軍では深刻な水準だという指摘が出ている。集団の中の少数という女性兵士の特性上、被害者が特定され、普段の行動や被害事実についての悪意あるうわさが広がりやすいためだ。転補の措置が取られても、移動した部隊でまた別の圧迫感に苦しみもする。L中士の遺族は、当人が移動した先の部隊で「関心を持たれたがる兵士」という扱いを受けたと主張した。2018年の海軍上官による性的マイノリティの女性兵士の性暴力事件の上告審を担当したパク・インスク弁護士は「被害者の軍内の履歴などの過去の情報を上官である加害者が多く知っているため、悪いうわさを流すのも容易だ」とし「その後の表彰状や昇進などに影響を及ぼし得る構造」と指摘した。さらに、軍隊内の低い性認知感受性も影響を及ぼしている。キム所長は「男性中心社会である軍では、男性の性欲は抑えることができず、性暴力は被害者が誘発したという認識が依然として残っている」と話した。パク弁護士も「軍では、その程度の被害をなぜ問題視するのかという認識がある」と話した。
性暴力事件の処理が軍内部だけで行われている構造そのものが問題だという指摘もある。キム所長は「軍では性暴力などの事故が起これば指揮官に報告することになっている」とし「民間では上級者に対する報告で終わらず、警察に通報することもできる。一方、軍は立法と司法、行政機能をすべて持つ唯一の集団であり、関連事案は軍事機密であるという理由で外部からも介入が難しく、軍事警察すら指揮官の顔色を伺わざるを得ない」と述べた。抜き打ちでの訪問調査権を持つ軍人権保護官制度などの導入を通じて、民主的に軍を統制しなければならないというのがキム所長の助言だ。
一方、軍人権センターは今回の空軍の違法撮影物事件に関し、被害者たちが軍隊内での性暴力問題を解決すべきだという強い意志を示したと伝えた。軍人権センターは空軍に、加害者の即時拘束と捜査▽所属部隊である軍事警察隊の関連者の調査および問責▽事件を上級部隊に移牒し処理▽被害者保護措置などを要求した。