羽鳥操の日々あれこれ

「からだはいちばん身近な自然」ほんとうにそうなの?自然さと文化のはざ間で何が起こっているのか、語り合ってみたい。

ライフワーク

2006年12月22日 19時43分44秒 | Weblog
 岩波ジュニア新書『身体感覚をひらくー野口体操に学ぶ』が、今日、校了になった。
 メールと電話で、お昼まで、ぎりぎり校正を行った。
 第三校まで、校正したのは久しぶりだ。
 読むたびに発見して、手直しをしている。

 思い起こせば、野口三千三先生が亡くなった1998年の一年前に上梓できたのが、『野口体操・感覚こそ力』だ。私にとって最初の本だ。
 このときは柏樹社の中岡民興さんという編集者の方が、本つくりの「いろは」を手ほどきしてくださった。「つか見本」という中身が真っ白の本が、手元に残っている。これは、本当の本をつくる前に、同じ紙を使った同じページ数の本をつくって、手につかんだ感じをみるもの。表紙も同じ材料で作られている。中は、何も印刷されていなくて、あとから日記でもつけたらいいのかもしれないが、そのまま大切に保存してある。
 思えばこの『野口体操・感覚こそ力』は、野口三千三先生に師事して過ごした20数年の一つの区切りになる本だった。先生の授業を再現する形で野口体操を描き出したのだが、私自身にとっても大切な「野口体操」のまとめ本となった。

 それから先生の一周忌に合わせて『野口体操・自然直伝』というメモリアルの本を同じ柏樹社から出版させていただいた。この二つの本は、後に春秋社から出していただいた。『野口体操・自然直伝』は書名を改め『野口体操・ことばに貞くー野口三千三語録』である。中身も少し変更した。

 その後、岩波書店アクティブ新書『野口体操入門―からだからのメッセージ』が続いた。これは、野口三千三先生の『原初生命体としての人間』が岩波書店現代文庫に入るのとほとんど同時期だった。

 そして、2004年には、『DVDブック アーカイブス野口体操 野口三千三+養老孟司』を春秋社から共著として出させていただいた。これは、佐治嘉隆さんのご兄弟三人がいてくださらなければ残らなかったビデオ記録とともに、生前の野口三千三先生から伺った話をまとめることができた。

 思えばたくさんの本に恵まれている。
 そして今回、1月19日発売予定のジュニア新書は、私にとって5冊目の本になる。 野口三千三先生没後、大学で「野口体操」を指導するようになって5年が過ぎた。その経験を生かした本かもしれない。これも一つの区切りとなった観がある。

 もう一冊、花王antu(中高年女性のQOLを考えるプロジェクト)が今年の春まとめた『艶ブック』は、インタビュー記事と昨年11月に行った養老孟司先生・河合隼雄文化庁長官と羽鳥の鼎談をまとめたものが載っている。このプロジェクトにかかわった4年間の記録だ。

 ということで、これらの本は、野口体操とともに生きた私の30年を記録として残ったことに、感慨深いものを感じる。
 実は、10代のころから、本を書きたかった。その思いがこうした形で実現してくれるとは、夢にも思わなかった。
 一冊の本が、本日、校了して、すでに次の本のイメージがおぼろげながら浮かんでいる。
 いつのころからか野口体操がライフワークになったのだが、本を書くこともライフワークになりつつある。

 なんだか今日は、ほっとした一日だった。
 そして、私に本の読み方を指導してくださった「都丸書店」の瀬見さんに感謝している。すでにこの世にはいらっしゃらない。亡くなられて十数年は過ぎている。16歳で神田の古書店に丁稚奉公に入り、独学でロシア語をマスターし、コンピューターを超えた書物の知識を脳に蓄えた方だった。70歳を過ぎてからも、その記憶力は衰えなかった。
 10代のころ、瀬見さんに出会わなかったら、私は、本をこれほど愛する人間には育たなかったと思う。
 ほんとうにお世話になりました。
コメント (2)
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