羽鳥操の日々あれこれ

「からだはいちばん身近な自然」ほんとうにそうなの?自然さと文化のはざ間で何が起こっているのか、語り合ってみたい。

憂国

2006年12月14日 19時28分57秒 | Weblog
今朝、宅急便で再校ゲラを送った。
 いよいよ私の手を離れてしまった。21日までは、ちょっとの手直しはできそうだが、手元に原稿がないので、難しい。実質、今日で仕上がりというわけだ。

 佐治さんから表紙のデザインも知らせていただいた。
 いろいろがまとまってきて、最後の追い込みだ。昨日は、編集者からメールが入って、期日を守ってほしいという希望が、遠まわしに書かれていた。

 ところで三島由紀夫は、原稿が遅れることはなかったらしい。遅刻もしない。
 こんなエピソードを読んだことがある。
 三島は或る美しい女性に銀座でフランス料理をご馳走する約束をした。その日、女性はなかなかあらわれない。30分まった三島は
「○○さんがいらっしゃったら、一人でお食事をしてくださいとお伝えください」
 で、三島は一人分の料金を支払って先に帰ってしまった。
 遅れてきた女性は一人寂しく食事をしたらしい。

 遅れるほうが悪いといえば言えるのだが。

 三島が市谷のバルコニーに立った日は、自宅の机の上には、最後の作品『豊饒の海』最終編の原稿がきちんと揃えられて、置かれていたという。

 レベルは違いすぎるが、原稿締め切りの日には、必ずこの話を思い出す。

 締め切りに間に合わない作家がほとんだというのに、律儀な作家・三島由紀夫は、驚くべき結末を自らに課した。

 憂国とは、今の時代を予想したのだろうか。
コメント
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