羽鳥操の日々あれこれ

「からだはいちばん身近な自然」ほんとうにそうなの?自然さと文化のはざ間で何が起こっているのか、語り合ってみたい。

文化の日

2006年11月03日 09時05分45秒 | Weblog
 白川静さんが亡くなられて、新聞も連日のように追悼を載せている。
 佐治嘉隆さんも野口三千三先生の写真を、ブログ「芭璃庵」で見せてくれた。
 黒板には甲骨文字で「骨」が書かれ、野口先生が説明をしておられる姿。
「骨」の文字のわきには「死」の文字があって、なんとも象徴的な写真である。

 数名の方からコメントもいただき、皆さんの思いの深さが読み取れる。
 本当に今回は、野口三千三先生の導きで、白川文字学の話を書くにいたったのかもしれない。

 さて、11月1日は、幸田弘子の会に出かけて「樋口一葉」作品の朗読を聴いた。
 幸田さんは、昨年末、ご自宅の大部分を火事で失われ、傷心の日々を過ごされた。どれほどのご不自由が続いておられることか。まだ煙の匂いのこる翌朝に、火事見舞いに伺ったときには、入院されておられた。
 二度目の見舞いの折には、ご家族の皆さんと焼け跡の片付けをされておられた幸田さんにお目にかかれた。
 
 その日から、ほぼ11ヶ月が過ぎ、舞台の幕が開いた。
「一葉による一葉」、新たに構成しなおされた一葉の言葉でたどる一葉の生涯を、凛として気丈に語られた姿に、ほっと安堵の気持ちを得た。
 舞台を終わって、入り口に見送りに立った幸田さんと、握手をして帰った。しっかりと握る手には、舞台の声と同様に張りがあって、これからの気概十分と伝わった。
 ある知人が50の大台に乗ったとき「これで終わってたまるか」とのたまった。
 幸田さんは70歳を超えられた。火災にもめげず、こうして朗々と一葉を歌い上げる姿に、大いに元気をいただいた。

 実は、会場に入る前に、一ツ橋の岩波書店まで『仮題:身体感覚をひらくー野口体操に学ぶ』の校正したゲラ原稿を届けにいったのだ。そこでであったのが神保町で行われていた「古本まつり」。残念なことに最終日だった。
 ところが夕方帰宅してつけた日本テレビのニュースの時間枠の「お天気コーナー」で、ちょうど私が通ったところが映し出された。
「あと、5分で、古本まつりは終わりです。今年、こられなかった方は、ぜひ来年…」
 天気予報士の男性が語りかけていた。
 そのままカメラは左へ動いて、露天の本を映し出した。
「あっ、さっき私が買った露天よ! あそこの本が抜けているでしょ。あれあれ…」
 思わずテレビ画面を指差して、声をあげてしまった。
 ほしい本はたくさんあったのだけれど、紀尾井ホールまで行く前だからと、あきらめて一冊だけ手に入れた。
『イワヒバを楽しむ』岡島秀光著 NHK出版 家庭園芸百科9
 江戸の昔から愛されてきた古典園芸植物、イワヒバの代表的品種257種を紹介とある。
 紀尾井町まで移動する地下鉄・半蔵門線の電車のなかで、あけてびっくり。
 永田町で地上に出るとそこは弁慶橋。その橋の袂にしばし佇んで、本のページを最後までめくり続けた。
「まぁ、驚くこと」
 多様なイワヒバの世界に圧倒された。
 江戸期というのは、椿しかり・朝顔しかり、もちろん岩ひばしかり、みごとな芸術にまで自然を改良した文化の時代だったことが伝わる。

 白川文字学といい、幸田一葉といい、岡島イワヒバといい、文化の日を前に、野口先生の記念(カタミ)に遭遇している不思議さよ。
 今日は、11月3日。
コメント (1)
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