まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

和歌山6番「道成寺」~神仏霊場巡拝の道めぐり・110(物語の古刹)

2024年08月25日 | 神仏霊場巡拝の道

8月17日、和歌山県・海南の朝。前日の16日は台風16号が関東に接近したことで東海道新幹線の東京~名古屋間が終日運休し、山陽新幹線も本数を減らしての運行となったが、この日は始発から平常通りの模様だ。この日は海南から御坊を経て道成寺に向かい、そこから折り返すコース。当初は、朝は海南でのんびりしてから道成寺に行くことも考えたが、朝風呂にも入ったし、朝食も済ませたし、早めに出かけるとしよう。その分、帰りの新幹線も繰り上げるつもりだ。

ルートインホテルをチェックアウトして、7時43分発の御坊行きに乗る。227系のロングシート車である。気のせいか、乗客は日本人より外国人のほうが多いように見える。それもインバウンドというよりは地域の貴重な働き手ということで・・。関西2府4県すべてで人口減少傾向にあるが、中でも和歌山県は人口、減少率とも関西ワースト。まあそれでも、山陰や四国に比べればまだまだ多いのだが、そりゃ、全国の「鈴木さん」の移住促進もしたくなるわな・・。

ちらりと海岸が見え、昨年操業停止となったENEOSの和歌山製油所の横を通る。脱炭素化の影響による石油需要の減少、人口減少によるものだが、和歌山県としては雇用の受け皿がまた一つ消えることでまた人口流出につながる悪循環だろう。

箕島、藤並、湯浅といったところを過ぎる。藤並からはかつて有田鉄道という私鉄が走っており、現在も廃線跡や車両が残る鉄道公園もある。海南からの野上電鉄もそうだが、和歌山以南にはかつてこうしたミニ路線がいくつか存在していた。

8時32分、御坊着。目指す道成寺は御坊の次の駅だが、次の紀伊田辺行きは9時12分発。いったん改札を出て荷物をコインロッカーに収める。

その御坊駅前には、この方のポスターがまだ健在だ。8月14日に岸田首相が次の自民党総裁選への不出馬を表明してから、政局は次の総裁選への立候補者の話題となっている。裏金問題を受けて自民党の派閥がほとんど解散したこともあり、10~11人が立候補に意欲を示している状況だが、二階俊博氏についてはまったくといっていいほど触れられていない。次期総選挙には子息を候補者に立てることで政界引退はいいが、それで裏金問題もフェードアウトさせるとは・・。

駅に戻る。次に乗るのは9時12分発の紀伊田辺行きだが、その発車直前に和歌山からの列車が到着し、乗り継ぎ客でシートがほぼ埋まった。青春18きっぷでの乗り継ぎ客だろう。この先、紀伊田辺、串本、新宮、亀山と乗り継いできのくに線~紀勢線で紀伊半島を一周することもできる。

御坊を発車したかと思うとすぐに次の道成寺に到着。地図を見ると、御坊駅から道成寺まで2キロほど。本数の少ない列車を待つこともなく歩いても行けそうだ。もっとも、この猛暑の中では無理をせず・・。

駅から2~3分で参道に入る。「天音山道成寺」の石標が立つ。その先には「あんちん」「雲水」といった土産物店が並ぶ。「あんちん」とは、道成寺の「安珍清姫」の物語に登場する修行僧・安珍である。

石段を上がり、山門をくぐる。そのまま正面の本堂に向かってお勤めとする。ちょうど僧の方が堂内にいて「ようお参りです」と声をかけられる。

道成寺が開かれたのは藤原京時代、文武天皇の勅願で義淵僧正によるとされる。義淵は法相宗の僧で、飛鳥の岡寺を開いた人物である。岡寺には「龍蓋寺」という正式名称があるが、飛鳥の地を荒らして人々を困らせた龍を義淵がその法力で池に閉じ込めて蓋をしたことからその名がついている。

道成寺には、文武天皇の后で聖武天皇の母である藤原宮子にまつわる「髪長姫」の伝説がある。その昔、九海士の村長に娘が産まれたが、髪の毛が全く生えていなかった。その時、海中に光るものがあり、海に潜って採り上げると観音像だった。これを拝むうち、娘にも髪が生え始め、「髪長姫」と呼ばれる美しい姿に成長した。それを聞きつけた都人の目に留まり、藤原不比等の養女に召し出された。そして後に文武天皇の后となる。その恩返しとして観音像を祀る寺として開かれたのが道成寺である。

境内の一角にある宝仏殿・縁起堂に向かう。ここで神仏霊場めぐりの朱印をいただくとともに、有料拝観を申し出る。宝仏殿には国宝指定の本尊・千手観音像や脇侍の日光・月光菩薩をはじめとした諸仏が祀られている。エアコンが効いて涼しい室内にて改めての拝観である。

道成寺といえば縁起堂での「絵とき説法」である。髪長姫、そして安珍清姫の物語を住職や職員の方が絵巻物を広げながら説明してくれるものである。有料拝観の方で、申し出れば随時「絵とき説法」をしてくれるそうだ。

・・ただ、この時境内にいた参詣者は時間が早いこともあってか私一人。さすがに差し向かいで説法をいただくのも恐れ多い(というより気恥ずかしい)し、以前道成寺に参詣した時に説法をいただいたことはあるので、今回は朱印のみいただいて失礼する。

安珍清姫の伝説は「道成寺物」として能・歌舞伎で数多く演じられているが、まあ、女性に言い寄られたり愛を告白されたことのない私には縁のない話・・。

「絵とき説法」を省略したことでそのまま道成寺の駅に戻り、今回の神仏霊場めぐりは終了。また一駅、御坊に向かう・・・。

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