まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

第15回九州八十八ヶ所百八霊場めぐり~西大山から枕崎へワープ、そして最後は大雨で・・

2024年05月26日 | 九州八十八ヶ所百八霊場

5月12日、午後からの鹿児島市内見物も雨のために取り止め、指宿枕崎線で枕崎に向かった。その途中、日本最南端の駅・西大山にて一時停車したのだが、しばらくの停車中にホームに降りている間に列車に乗り遅れてしまうというアホな事態となった・・。

スマホ、財布、パスケース、カメラは身に着けているので問題ないが、リュックの中には、九州八十八ヶ所百八霊場めぐりの朱印帳が入っており、それは私にとっては貴重品である。おまけに、傘が座席に残されたままである。私がいたボックス席には他に相客はいなかったが、周りのボックスの人たち、今頃ひょっとしたら「あのおっさん、西大山で積み残しになったようだぞ」と笑っているかもしれない。

西大山駅は今や観光スポットになっており、駅前には土産物店がある。とりあえずそこで雨宿りとする。まさかこのような形で西大山駅に「下車」することになるとは思わなかった。鹿児島中央から乗って来た韓国人グループも一緒に降りたが、どうやらこの駅を訪ねるのが目的だったようで、時刻表を見ると約1時間後に指宿行きの列車が着く。駅見物が目当てならちょうどよい滞在時間だろう。

さてこれからどうするか。おそらく荷物座席に残されたまま枕崎まで行くだろう。終点・枕崎到着後だが、枕崎は無人駅のため、ワンマンの運転士が到着後の車内点検で荷物を見つけ、いったん預かってくれれば幸いだ。そのまま折り返して鹿児島中央まで持ち帰り、持ち主が現れなければそのまま鹿児島中央駅に引き渡しとなるのではと思う。JR九州の忘れ物案内ダイヤルにかけてみたが、現在運行中の運転士に連絡することはできないので何ともいえないが、この状況であればおそらくそのような対応になるはずで、西大山でお待ちになってはいかがかとの案内があった。ただ、折り返し列車の到着は約3時間後の16時56分、さすがに土産物店の店先で3時間過ごすのはしんどい。

ふと思いついたのが、「列車を追いかけて枕崎に向かおう」ということ。折り返し列車の枕崎発は15時54分で、タクシーに乗れば間に合うだろう。枕崎で荷物を見つけたほうが安心だし、逆からながら指宿枕崎線の残りの区間にも乗ることができる。・・・こういう発想をしてしまうあたり、懲りないというか反省しないというか・・。

スマホで最寄りのタクシー会社を検索すると指宿の会社があった。電話すると幸いすぐに配車可能とのことで、25~30分ほどで着くという。これで多少は気持ちも落ち着き、タクシーが来るまでの時間で土産物店を物色する。日本最南端の駅に来た記念に、駅名標のマグネットと絵葉書を購入する。

案内よりも早く、20分ほどでタクシーが到着した。運転手は70歳代と思われる。一瞬、朝テレビでやっていた「さつま狂句」の選者の先生がタクシーのハンドルを握っているのかと思った。

枕崎駅までというと、これから枕崎に宿泊する客に見えたのか、ぜひともカツオ料理、中でも枕崎ならではという「ビンタ」を食べたり、鑑真和上の上陸地である坊津に行くのがおすすめとの案内いただく。私も枕崎の札所を訪ねた際にはそうしたスポットにも行きたいし、枕崎に泊まるのも面白そうなのだが、今こうしてタクシーに乗っている事情が事情だ。西大山駅での出来事を話すと運転手も大笑い。西大山から枕崎までは約35キロの距離、同時スタートならともかく、さすがに列車より先にタクシーが枕崎に着くことはないが、「そりゃあ、西大山で待つよりは枕崎で荷物を見つけたほうが安心でしょう」と。

それがきっかけで鉄道の話にもなった。運転手は鹿児島出身で東京の大学に進んだが、東京行きの「急行」に乗るのにも寝台は値段が高いので4人掛けの固い座席で24時間以上揺られたとか、逆に鹿児島に帰省する時は終点が近づくにつれて車内に鹿児島弁があふれるようになり懐かしく感じたとか、昔語りをしてくれた。福岡や熊本の人がいる時は大人しくしていたが、周りが鹿児島の人ばかりになると開放的になるのだとか。

一方で現在の指宿枕崎線について、そして沿線の状況についてはこの先見通せないという。指宿枕崎線は指宿までは観光客も乗るだろうが、その先は全然乗っていない、そもそも人口も減っているし、これといった見どころや産業もない(先ほど枕崎のおすすめスポットも紹介いただいたが、本土最南端だからといって全国的に人気があるところでもない)。若者の就職も鹿児島を通過して、福岡や広島、大阪に行ってしまうのだとか。

タクシーは国道226号線を快走する。雨の中、サツマイモ畑、時折海岸も見えるが、さすがに車窓をのんびり眺める気分ではない。その分、運転手からはその他にカツオや桜島の火山灰など、いろいろ話を聞かせていただいたのでまだよかった。

さすがに列車を先回りすることはなかったが、35キロの距離を40分ほどで走り、15時10分頃、枕崎駅に到着。先ほど乗っていた列車はホームに停車していた。おそらく荷物は大丈夫だろうと運転手とここでお別れ。西大山からのタクシー代は10300円、レンタカー1日分(プラスガソリン代)より高くついたが、運転手との一時を過ごしたし、何だか複雑な気持ちだ。

「本土最南端・始発・終着駅」の枕崎。こういう形でアプローチすることになるとは思わなかった。雨の中傘もなく、取り急ぎ駅やホームの写真を撮る。

現在の駅舎は2013年の完成で、駅前にはカツオの行商人の像が立つ。行商人といっても、幼い子どもを連れた女性の像である。明治中期、台風のためにカツオ漁船が転覆し、多くの漁師が犠牲になった。その妻子を救うために始められたのがカツオの行商だという。

「枕崎駅」の文字は、地元出身の立行司・第36代木村庄之助による。大相撲の番付の書き手も務めていたそうだ。

列車の発車までは結構時間があるが、列車の扉は閉まったまま。雨は依然として降ったままなので外を歩き回ることもできない。少し離れた、元の駅舎があったあたりに建つスーパーマーケットに行けば、カツオの加工品が置いているかもしれないが、そこまでも行く気になれず、駅舎でぼんやりと過ごす。枕崎は枕崎で改めて来ることにしよう。

駅舎の一角にはQRコードがあり、スマホをかざすと乗車駅証明書がダウンロードできる。ワンマン列車の整理券を取らずともこれを見えれば運賃精算ができる。先ほど着いた時に取得しておいた。これで、枕崎駅まで来た記念としよう。

15時45分頃、ようやく扉が開く。運転士に申し出ると運転席で一緒に預かってくれていた。お手間をかけたお詫びとお礼を申し上げる。これで安心して、ボックス席に腰を下ろす。

15時54分、枕崎を出発。逆からの乗車となったがこのまま行けば指宿枕崎線も乗り通したことになる。先ほどタクシーで並走する国道を通ったが、今度は安心して車窓を見ることになる。途中駅にも停まるがほとんど乗降はない。薩摩富士・開聞岳も畑の向こうに裾野がわずかに見えるばかりで、あの姿は望むべくもない。

まあ、この日は雨天でなければそもそも指宿枕崎線に乗っていなかったわけで・・。

西大山に戻って来た。往路ほどではないがホームには見物客の姿も見える。今度は、ワンマン運転のため扉が開かない後部車両に座っていたし、そもそも記念撮影のための停車時間もない。一応、窓を開けて車内から写真を撮る。往路でもそうしておけばよかったのだ。

17時15分、指宿に到着。約10分停車する。錦江湾沿いに戻ったが、依然として雨が強い。

そんな中、18時08分発の瀬々串では時刻を過ぎても発車せず停車したまま。瀬々串で行き違う予定の列車が大雨による速度制限のため10数分遅れているとの案内が入る。また私が乗っている鹿児島中央行きも、対向列車の到着後、瀬々串~五位野間は速度を落として走行するため、その分さらに遅れが生じるという。こればかりは天候なので仕方ないが、私にとっては先ほどの西大山での乗り遅れよりもヤバい状況になりそうだ。

枕崎から鹿児島中央行きに乗った時点では、鹿児島中央に18時42分に着き、18時59分発の「つばめ334号」博多行きに乗り継ぎ、博多から20時52分発「ひかり592号」で広島に戻る予定にしていた。しかし途中で遅れが出たことで「つばめ334号」には間に合わないことが決定的となった。その後、鹿児島中央からは広島に向かう列車は19時51分発「みずほ614号」、20時14分発「さくら406号」が残っているのだが、今回復路で予約したのが日本旅行の「バリ得」プラン。価格は安いものの予約列車に乗り遅れた場合、乗車券・特急券は無効になってしまう。

もっともこの時点では、後続の列車にも乗れるのかどうかも不安になった。日曜の夜、それにも間に合わないとなればしゃれにならない。

行き違いの列車が到着し、結局15分ほど遅れて瀬々串を発車。右に錦江湾、左に斜面が迫る区間で時速25キロの制限運転だが、幸い途中で立ち往生することなく、規制区間の五位野に到着。ここまで来れば住宅も広がるエリアで、通常速度での運転となった。やれやれ。

それでも単線のため行き違いもあり、鹿児島中央には30分ほどの遅れで到着した。もちろん「つばめ334号」はとっくの前に発車していた。

結局、「みどりの券売機」で改めて19時51分発「みずほ614号」の特急券、そして乗車券を買い直した。「バリ得」だと鹿児島中央~広島が13300円だったのが、それが無効になった挙句、みずほの指定席買い直しで18530円を追加で支払うことに。先ほどの西大山~枕崎のタクシー代が10300円と合わせて、金銭的ダメージは大きかった。

食事は新幹線の中ということで、コンビニで何がしか購入してホームに向かう。「みずほ614号」は広島から先、新大阪までの最終列車との案内が流れる。

シートに力なく腰を下ろし、前日からここに至るまでのいくつもの「たられば」を思い起こしてみる。事の発端は、この日鹿児島・平和リース球場で行われる予定だったホークス対バファローズの試合である(このチラシは、枕崎駅に置いてあった)。雨の1日をどのように過ごすかということでも揺れ動いた。伊集院の剣山寺を訪ね、伊集院に戻ったところですぐ発車の鹿児島中央行きに間に合ったのも分岐点。その列車に間に合ったことで鹿児島中央から枕崎行きの列車に乗ろうと思い立ち・・。西大山で乗り遅れることなくそのまま枕崎まで行った場合、折り返しのバスで鹿児島中央に早い時間に戻る選択肢もあり、大雨での列車遅れに遭うこともなかっただろう(いや、枕崎から同じ列車に乗っていたかもしれない)。

「みずほ614号」はさすがに速達列車で、鹿児島中央を出ると途中の停車駅は熊本、博多、小倉のみ。寝過ごさないよう、いろんなことを考えるうち22時11分、無事に広島で下車した。当初の「バリ得」プランだと広島着が21時58分だったから、時間的なロスは最小限で済んだのだが・・。

さて今回の鹿児島シリーズの結果、薩摩半島のうち、鹿児島市内と枕崎の札所が斜めに残る形となった。次回も新幹線で鹿児島までアクセスし、現地でレンタカーを利用する見込みだが、今回の一軒で「バリ得」のリスクも考えなければと思う。これから夏に差し掛かり、九州南部だと台風や大雨でダイヤが乱れることも想定しなければ・・・。

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