5月19日、岡山を発車した「ラ・マルしまなみ」は山陽線を西に向かう。
この車両「ラ・マル・ド・ボァ」とはフランス語で「木製の旅行カバン」という意味だとか。どれが「木製」でどれが「旅行」でどれが「カバン」かはさておき、やはりスマートな印象である。この日は運転席後ろのスペースに自転車が置かれている。
カウンター席の上は網棚ではなく、ちょっとしたアートや瀬戸内関連の書籍が並ぶ。瀬戸内のさまざまな姿を収めた写真集もあり、岩合光昭氏のネコの写真集もある。瀬戸内はネコにとっては楽園のようで、写真集の中でもさまざまなスポットが紹介されている。
笠岡を過ぎ、広島県に入る。岡山県と広島県の県境を通るルートは鉄道、道路といろいろあるが、いずれもはっきり「国境を越えた」という実感がしない。現在の備後エリアは元々備前、備中とともに「吉備の国」と呼ばれていたし、むしろ三原辺りを過ぎてからのほうが山あいも厳しい。明治政府の施策によって備後が無理に安芸とくっつけられたのが現在の広島県である。
福山に到着。ここから乗車する客もあり、個人客中心の前寄り車両もそれなりに席が埋まる。
この後松永を通過する。今回のお出かけの後、松永駅近くにある「はきもの資料館」の一角に、「宮澤喜一記念館」がオープンしたとのニュースに接した。自身は東京生まれだが、父の出身である福山の選挙区から当選を重ね、財政にも明るく大蔵大臣を務めた後、内閣総理大臣となった。今回の記念館はその功績を讃えるものである。その宮澤喜一、同じ広島県出身の荒廃である現在の岸田首相のバタバタした姿を目にしたらどのように感じるだろうか。
尾道水道に入り、「ラ・マルしまなみ」は徐行に入る。尾道水道を挟んだ町並み、造船所の景色が広がる。
尾道に到着。列車はこの先三原に向かい、ちょうど尾道~糸崎間がもっともよく瀬戸内海、しまなみ海道が見えるところで、列車名の「ラ・マルしまなみ」にふさわしいのだが、その手前の尾道で団体客を含めほとんどが下車する。次に乗る「etSEtOra」が尾道始発ということもあるが、いったん「ラ・マルしまなみ」で三原まで行って他の列車で尾道まで折り返すこともないかと思う。
時刻はちょうど昼時。尾道といえばラーメンということで駅近くにも専門店がいくつかあるが、その中で向かったのが駅のすぐ横にある「大衆食堂せと」。大衆食堂のメニューとしてラーメンがあるが、ポイントは、ラーメン店の暖簾のしたにある「昼飲み」の看板である。
ランチの時間帯だが、アルコールメニュー、つまみの一品もさまざまある。時間はあるので昼の尾道での一献として、最後にラーメンをいただくとしよう。
この店じたいは以前大阪時代、尾道に泊まった時に来たことがあるが、その時は別の店名ではなかったかと思う。まずはビールで乾杯として、料理長こだわりという海鮮出汁のおでんをいただく。昼のためまだ仕込まれていない具材もあり、結局、厚揚げ、大根、こんにゃくに落ち着く。
エコレモンサワーをいただく。エコレモンという名前を目にして、てっきり、名産地である瀬戸田のレモンの中でも、キズものや規格に合わないレモンを利用することで資源ロスを防ぎ、エコにもつながるレモンなのかなと思った。しかし、スマホでエコレモンを検索すると、農薬類は最小限しか使わず、防腐剤やワックスは不使用ということで、環境ホルモンの影響のない、皮のままでも食べられるという、そちらの意味でのエコだという。そのレモンがふんだんに入っているので、サワーの「中」のお代わり大歓迎の一品。
エコレモンサワーに相対するのはねぶとのから揚げ。一般にはテンジクダイと呼ばれるねぶとだが、瀬戸内海の中でも備後エリアでよく獲れる魚である。酒のつまみや子どものおやつとして親しまれている。
そして、最後はラーメンである。昆布、いりこという瀬戸内の定番に山陰のあごを加えたというスープ。美味しくいただく。昼飲みの客とラーメン、定食の客が半々といったところで、駅横で手軽に食事を楽しめるスポットしておすすめである・・。
食後はどこに出かけるということもなく、駅前の桟橋でゆったりする。ちょうど自転車が集まっており、この先、しまなみ海道を渡るのだろうか。
尾道水道の渡し舟など見ながらぼんやり過ごす。・・というのも視力のせい。前の記事で、この5月に両目の白内障手術を受けたことについて触れたが、今回のお出かけは右目の手術後のこと。ちょうど手術前の左目との視力がアンバランスで、中途半端にしんどかった頃だった。まあ、そんな時期に出かけるのはいかがなものかと言われそうだが・・。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます