まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

第27番「圓教寺」~西国三十三ヶ所巡り・38(ラストサムライと修行の舞台)

2015年11月23日 | 西国三十三所
圓教寺の摩尼殿の奥に「三つの堂」がある。大講堂、常行堂、食堂の三つで、いずれも国の重要文化財である。「この後の『しょくどう』が有名なんやてー」と話している人がいたが、読み方は「じきどう」である。修行僧が寝食をするための建物であるが、「食」を「じき」と読むのは仏教ならではだろう。他に思いつく言葉といえば「断食」「乞食」くらいのものだが。

そしてやってきた三つの堂。右手に大講堂、中央に食堂、そして左手に常行堂がある。大講堂は西国三十三所を広めた花山法皇が性空上人に寄進したとされているが、現在の建物は室町時代のものである。釈迦三尊を本尊としており、圓教寺としては本堂に当たるところ。

大講堂と対峙するのは常行堂で、阿弥陀如来像が安置されていて、ひたすら阿弥陀仏の名を唱えながら本尊を回る修行をするための建物である。中央には大講堂の釈迦如来に舞楽を奉納するために舞台が設けられている。

この堂々とした造りにはうなるばかり。

ハリウッド映画「ラストサムライ」のロケ地として有名・・・ということで、帰宅後、これまで観たことがなかったのでDVDを借りて観てみた。映画の感想はさておき、建物をそっくりそのまま舞台として使われていたのに何だか感動した。

ここ圓教寺は、一時秀吉が陣を構えたことがある。中国の毛利攻めの中、後方の三木城で別所氏が織田方から寝返り、挟まれる形になった秀吉。その際、敵軍の動きがよく見えるということで官兵衛が秀吉に進言して、圓教寺に陣を構えるよう進言したとされる。昨年の大河ドラマ「軍師官兵衛」では、その場面のロケ地としてそのまま圓教寺が使われた。他にも映画、ドラマのロケ地になっているようで、最近では中国の時代劇映画の撮影も行われたそうだ。

三つの堂のうち、食堂には上がることができる。二階には圓教寺の歴史が紹介され、性空上人の像や弁慶が修行時に使っていたとされる机などの宝物が展示されている。また、先に秀吉が圓教寺に陣を構えたと書いたが、史実では秀吉軍はその際結構狼藉を働いたようで、柱に落書きをしたり、仏像を持ち去ったりということがあった。その仏像が今でも長浜の寺の本尊に納まっているそうで、圓教寺にとっては秀吉というのはあまりありがたくない存在であろう。ただその場面のロケ地として場所を提供するのは、時の流れか、懐の深さか。

圓教寺はさまざまな修行体験ができ、月1回の1泊2日の健康道場、一日修行体験、座禅体験などがある。そういうのに参加してみるのも面白いかなと思う。ただ事前の申し込みが必要だし、日も限られている。そんな中で手軽にできるのが、写経体験。この食堂の1階で、三つの堂の伽藍を観ながら写経することができる。本式なら般若心経278文字を書くところだが、それは時間がかかるし、もっと気軽にというので「花びら写経」というのがある。観音経の一節から20文字を、花びらの形をした散華に書くものである。下書きがしてあるから、なぞるというのが正しいかな。

5種類の花びらの中から1種類を選び、食堂の床に正座して筆ペンを取る。観光客が多くてざわついているが、その中で一瞬の集中である。字が上手いか下手かはご判断いただくとして・・・。

花びら写経を体験する人も多く、子どもが筆ペンを取る姿も。それを見ると、下書きを左上から右に、横書きでなぞっている(お経はもちろん右上から下に縦書きなのだが)。写経本来の書き方と違うので思わず注意しようかと思ったが、一方で「無理もないか」と思い、そのまま見送る。

三つの堂で終わりかと思いきや、さらに奥の院がある。性空上人を本尊とする開山堂。ここでは毎朝のお勤めが行われている。内陣を覗くと経典が置かれた机がずらりと並べられている。

この軒下の四隅には左甚五郎が彫ったとされる力士像がある。ここから見ることができるのは二体だけだが、いずれも苦しそうな表情である。裏手の一体は屋根の重みに耐えかねて逃げて行ったという言い伝えもある。

さまざまな建物を見て回ったが、いずれも現在も修行の場として受け継がれていて、単なる観光寺院とは異なる趣きを感じる。一方で修行体験やら映画のロケ地提供といった外向きの活動も盛んで、姫路城に次ぐ姫路の人気スポットである。こういうところが西国めぐりの最後のほうにやってきたのは私としても面白かった。

さて摩尼殿まで戻ると、来た時以上に大勢の観光客、参詣客で賑わっていた。紅葉ということで摩尼殿にも多くのカメラレンズが向けられている。また参道もハイキング姿の人を含めてぞろぞろとやってくる。ロープウェーは通常15分間隔なのだが、客が多いために10分間隔に縮めての運行である。

ロープウェーから下りると、ちょうど姫路駅行きのバスが出たばかりだった。次のバスはと見ると・・・25分後。うーん、ここで25分待つのもどうかということで、県道の方に向けて歩き出す。5分ほど歩いたところに横関の交差点があるのだが、ここは別系統のバスが経由している。タイミングが合えばそれに乗ってもいいかなと思ったのだ。

それにしても渋滞がすごい。圓教寺でのもみじ祭り目当てということだが、駐車場から横関の交差点までクルマが続いて、動く様子がない。そして横関の交差点には警察官、警備会社、神姫バスの関係者が立っていて「ロープウェー下の駐車場には現在入れません。2時間待ちです」とやっている。横関の交差点からロープウェー乗り場に入る道にクルマが入れない。朝9時前ではここまでの渋滞はなかったので、やはり旅先では早い時間からの行動というのが大きいなと思う。

では先ほど出たばかりのバスはどうやって来たのかと、書写郵便局前のバス停で渋滞の様子を見ながら待っていると、次のロープウェー行きのバスがやって来た。神姫バスの関係者がバスに近づき、渋滞の最後尾でバスを停めてドアを開ける。ロープウェーに乗る人はここで降りるようにと促しているようだ。で、その後でタイミングを見計らって反対車線を走り出す。なかなか大変だ。

そういう光景を見るうちに、別系統の姫路駅行きバスがやって来た。こちらは兵庫県立大学の学生が主に利用する系統で、日曜日ということでガラガラ。ちょうど昼時に姫路城まで戻ってきた。駅まで戻らず好古圓前の停留所で降りる。

圓教寺に来たついでというわけではないが、せっかくなので姫路城に行こうと思う。修復が完了してから中に入ったことがない。これでもかというくらい観光客があふれ返っているのだが・・・。
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