まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

第15番「今熊野観音寺」~西国三十三ヶ所巡り・37(髭観音?と皇室ゆかりの庭園)

2015年11月17日 | 西国三十三所
話を先週の西国めぐりに戻す。

雨の中、清水寺、六波羅蜜寺、そして今熊野観音寺と回ったが、昼食の前にもう一回りする。向かったのは今熊野観音寺からさらに坂道を上った泉涌寺。

今熊野観音寺自体が他のいくつかの寺院とともに泉涌寺全体を構成している。初めてであるし、ここは本家にも挨拶しておこう。

山門をくぐる。雨で煙っているためか幽玄な感じがする。清水寺のような賑やかさとは対照的だ。京都といえば有名寺院が多いし、このすぐ近くには紅葉の名所である東福寺がある。その中にあって泉涌寺という名前はどのくらい広まっているか。あ、寺の読み方は「せんにゅうじ」。

元は弘法大師がこの地に一時草庵を結んだのが起こりというが、泉涌寺が正式に開かれたのは鎌倉前期のこと。月輪大師(がちりんだいし)と呼ばれた俊じょう(くさかんむりに仍)の手による。当時の南宋に渡り、戒律をベースに天台、真言、禅、浄土の各宗派の要素を合わせた教えで、天皇家から支持を受けた。江戸時代には天皇皇后の葬儀を執り行い、近いところでは明治天皇の前の孝明天皇の陵墓も泉涌寺にある。このため、「御寺(みてら)」という言葉が頭につく。

凛とした雰囲気というのはこうした歴史があってのことか。清水寺と対照的なのも納得いく。商売・・・と言うと失礼だが、歴史的に相手にする客層が違っていたわけだ。どちらが優れているとか劣っているとかいうことではなく。

そんな泉涌寺の山門をくぐり、すぐ左手に行くと楊貴妃観音堂というのがある。唐の玄宗皇帝が寵愛した楊貴妃が亡くなった後に、在りし日の姿を観音に彫らせたもので、ここに安置されているのは南宋から贈られたものだという。楊貴妃といえば世界三大美女の一人に挙げられるということで、美容に関するご利益を授かろうと、女性には人気のスポットである。お守りもあるし、美容に効く?お茶も売られていたりする。

で、この楊貴妃観音だが、実物は堂の奥だし小柄なのでよく見えないが、鼻と口の間に髭のようなものが描かれているのだ(詳しくはネットで画像検索を)。楊貴妃に男性の髭って、どこぞのオネエキャラかと思うが、髭に見えるのは、観音がありがたい言葉を発しようとする口元の動きを表したものだという。口を開けて大声で叫ぶのではなく、ボソボソした動きなのかな。まるで腹話術師。

楊貴妃観音堂の横の宝物館に入る。ここで泉涌寺の紹介映像が流れているのだが、これが毎日放送で日曜日の朝流れている「美の京都遺産」の映像。津嘉山正種さんの渋い声のナレーションで京都のあれやこれやを紹介する番組で、早朝から出かける日以外は毎週観ているのだが、まさかそのまんま流すとは。まあそれだけ番組の完成度が泉涌寺としても満足するものなのだろう。

宝物館を出て寺の中心部へ。堂々とした造りの堂が並ぶ。なるほど、先程の津嘉山ナレーションが似合いそうな風情だ。ここを知っていたら結構「通」だぜ・・ってな感じで。

奥にあるのは本坊だろうか。ご朱印はここで受け付けるとあって、朱印帳を手にした人がそこそこいる。私は西国三十三所の朱印帳しかないので、今のタイミングで朱印は別にいい。ただ仏教界もあの手この手で参詣者を増やそうというわけではないが、ここで結構アピールされているのが「洛陽三十三所」。西国三十三所を京都市内にギュッと押し込めた札所めぐりだ。何だか宿題がもう一つ増えた感じである・・・。

本坊と書いたが、ここは御座所の建物。先に、江戸時代は歴代天皇の葬儀を泉涌寺で執り行ったと書いたが、そのこともあり現在も皇室の方々が来られることがある。その際の建物がちょうど開放されている。一つ一つに質素ながら凛とした部屋が並ぶ。

建物を抜けると庭園に出る。その庭を中央から見る位置に御座所がある。手の届くところだが、進入禁止、撮影禁止。今の天皇陛下も節目ごとには訪れているし、皇太子も来られている。庭の中央から正面の位置に孝明天皇陵がある。これを仰ぐように設けられたのだとか。

この庭園、小ぶりながらうなるものがあった。建物内は撮影禁止だが庭園はOKということで、他の人もいろいろ撮っている。ただ泉涌寺の歴史的重みがそうさせるのか、雨天のためたまたま参詣者が少ないからなのか、騒ぐ人はいない。

このあたりで泉涌寺を後にして東福寺駅に戻る。相変わらず、雨の中東福寺に向かう人たちでごった返している。ここでの昼食はあきらめ、空腹ではあるが京阪で大阪に戻る。

その前に、JRの改札口に向かう。JRのスタンプラリーのスタンプをいただくのだが、東福寺は今熊野観音寺、清水寺、六波羅蜜寺の3つを一緒に扱っている。その3つのスタンプを求めると「朱印帳のご提示をお願いします」と言われる。確かにこれが正式ルールなのだが、これまでは駅の窓口に提示する分は求められることはほとんどなかった。これまであったのは京都駅だけ。さすがは多くの札所のスタンプを扱っているところだ。

このスタンプシート、谷汲山華厳寺はサービスで免除扱いになっていて、次にいく圓教寺の最寄りである姫路が最後となる。これまで集めた散華を貼る台紙の入手までもう少しである・・・。
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