ROCA吉川ロカストリートライブ/いしいひさいち著(自費出版)
ネットで話題になっていて、興味が湧いて著者の事務所に申し込み購入。基本四コマ漫画だが、ストーリー性のあるものである。女子高生がポルトガル民謡で歌手を目指して奮闘する物語で、同時に後押ししてくれる友人との友情を描いている。基本はとぼけたギャグの連続なのだけれど、これが最後には不思議な余韻を残すものとなっている。なるほど、それで話題になっているのだな、と読み終わってはじめて理解できるというようなしろものである。
しかしまあ、評判になるほど感動するのかというと、それほどなんだろうか。考えてみると最初から伏線は張ってあったとは思われはするが、やっぱり世の中というのはそうなのだろうか。そうかもしれないが、自分がそうではない人にとって、なんだかやはりそんなに簡単には割り切れない思いがあるのも確かである。それなりに苦労して歌手になっていくという段階があって、実際は下積みが長いということは言えるにせよ、その素地があるからこそ、だんだんと登っていけるということもある。比較が適当ではないかもしれないが、ビートルズだってそれなりに長い下積みがあるにもかかわらず、開花した後はあっという間のような印象を人々には残していると思う。むしろ何もない人は、そのまま続きもしないだろう。
事情は知らないのだが、いしいひさいちというネームバリューのありそうな漫画家が、これを自費出版したということにも意味があるのかもしれない。大手の流通にはのらないという判断をされた、ということなのだろうか。読んだ印象としては、「何故?」がともる訳で、それこそがこの作品の話題になる「ズレ」のような感覚なのではないか。もっとこんな作品をこそ読者は読みたい。そういう願いとともにブームが起こっているものと考えたい。