CUBE/清水康彦監督
副題なのか「一度入ったら、最後」とある。この設定の映画は観たことあるな、と思ってたらリメイクだという(ただし結末は違う)。目覚めたら、金属的な四角い部屋の中にあって、その理由は分からない。部屋の6方向にゲートがあり移動できるが、部屋によっては何故かトラップがあって、その仕掛けにより残酷に殺されることが示唆されている(最初にそれで死ぬ人があり、観客は簡略的にそれは理解できる仕組みだ)。ともかく死なないように移動して、このへんな世界から抜け出そうとする6人の物語である(一人は最初に死んでいるので、登場人物としては7人だが)。
不条理なのだが、シチエ―ションだけで押し切っている作品である。徐々に明かされるそれぞれの秘密めいたものはあるが、誰が何の目的でこのようなゲーム的なことをしているのかは、よく分からない。ただ生存をかけて、中の人間は格闘しなくてはならないサバイバルゲームである。
食事やトイレはどうするのか? という問題はあるが(女性も一人いるし)、いったんそういうものは無視されている。時間制限も分からない。安全かもしれない法則も割合早くに分かるが、それでも犠牲者が出て人は減っていく。登場人物の顔ぶれで、だいたい誰が生き残るのかは予測できるものの(とはいえ、そこに意外性もあるが)、一定の緊張感のある舞台劇めいた、しかしやはり映画的な作品かもしれない。
すでに書いたような問題点を受け入れられるならば、小品としての面白さはあると思う。ホラーと書いてあるが、そういうものなのかもわからない。思考実験であり、不条理なので、これをどうこう言っても始まらないとも思う。何しろ適当な理由すらない。極限の環境にあって、問題を抱えているらしい人間のギクシャクした関係性を、嫌な気分になりながら楽しむよりないだろう。
元の映画は97年に作られたカナダ映画らしく、続編も二本ある。僕もいつ見たのか定かでは無いが、二十年以上前であろう。記憶では元映画の方が人間関係が激しく、サスペンス要素が強かった感がある。今作は、日本的にそのあたりはソフトなのかもしれない。実際の話最初の死者などは、あのように死んだら、もっと激しい血が流れるはずだろうし、物理的にもあり得ないのではあるまいか。
ということで、惜しいところもあるが、それなりに興味が持続して見られるのも確かだ。ずっと続いて欲しい設定では無いが、やり方によっては、まだまだ仕掛けはできそうな気もする。何しろ思考実験なので、そういう設定を見た人は、応用して楽しんでもいいのではないだろうか。