カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

事実は小説より……   愛すべき夫婦の秘密

2022-06-29 | 映画

愛すべき夫婦の秘密/アーロン・ソーキン監督

 1950年代にアメリカで一世を風靡したテレビ・コメディ番組があったらしい。そこで大人気だった夫婦タレントの当時の出来事を、あたかも一週間で起きたようにアレンジし直してドラマ化した映画。
 タレントとして人気を博し、夫は音楽家でもありプロデューサーとしての能力も高い。女優の妻は、美人女優としても、そうしてコメディエンヌとしての才能も非常に高い。ただし、過去にある問題を抱えていて、スキャンダル化すると業界から追放されるかもしれない危機を迎えていたのだった。
 戦後のアメリカ社会には、反共産主義に偏りすぎ、あたかも魔女狩りのように、思想統制が当たり前になった社会であった。そこにはたとえ過去のことであろうとも、いわゆる過ちを許さない偏狭な世界になり果てていた。そういう中、着実にキャリアを積みながら、さらに大きなチャンスをつかもうとしている人気タレント夫婦が、その私生活も含めて、どのようにしてこの危機を乗り越えようとしたのか、事実をもとに見事に演出がなされている。もちろん映画なので、完全なドキュメンタリーとしての史実に忠実かどうかは分からない。しかしながら、基本的にはこのようなドラマを持った人間が、アメリカで人気者だったということが分かり、実に感慨深いものがある。アメリカの時代とそこで活躍した人の悲劇と必然のようなものがあって、娯楽だけでない意味深さがあるのではあるまいか。
 会話劇において、何かちょっとしつこい感じもあったのだが、これもちゃんと伏線になっていた。驚くべき隠し技のような演出をもって、まさにエンタティメント的にものがたりの終焉を迎えるが、なんと二段底がある。女の人って凄いなあ、という感じである。いやいや、それだけ洞察力があるということも言えて、見事なのである。お楽しみください。
コメント
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