終戦直後から1980年代まで
各界の重鎮、著名人達が
自分の思い出の中にある心の風景を
「東京」という地図に埋め込んでいく。
浅草、新橋、渋谷、新宿、池袋、銀座など
大都会を代表する繁華街はもちろん
大塚、椎名町、調布、東駒形、駒沢など
現代でもそんなに人が集まるわけではない場所、
原宿や中野など、
今はたくさんの人が歩く場所でも
当時は閑散としていたり、住宅街だったりと
変遷に読者が思いを馳せる街もある。
みんな若かった。
焼け野原を歩いていたころも、
学生仲間で隊列を作りデモしていたころも、
4帖の下宿で夢を抱いていたころも、
ゴーゴークラブでボーイをしていたころも、
赤貧の中で目だけギラギラさせていたころも、
みんな東京にいた。
そこは「何かになれる街」だった。
何ものかになろうとしていた若者は
みな東京に集まった。
そんな汗とエネルギーと思い出が詰まった街、東京。
1945年から1980年代と、
5年ごとの章立てしてあるこの本だが、
ワタシが最初にめくったのはやはり70年代~80年代。
自分が学生生活を送った時代の東京が見たかった。
たぶん読者はみんなそうなんだろうな。
東京を題材とした本ながら、
実はそれはただのステージ、風景。
描かれているのは青春譜だ。
「新・東京物語」石村博子:著 講談社文庫