NHK-BSPで放送されたドラマが心に残ったので、
原作となった小説を探していた。
結構前に発行されたものだったようだが、
ドラマ人気を受けてこのたび重版となったものらしい。
思いの外厚い本で中身が濃い。
ドラマは主人公と亡くなった彼の妻にフォーカスし
2人をつなぐホンダS800を大きく扱っていた。
主人公が会った人たちの存在感もそれなりにはあったが
ストーリーの軸が太い感じ。
しかし原作の方は、ドラマの主軸が縦糸で
関わる人々が横糸になってストーリーが織り上がっている。
登場人物ひとりひとりの人生もまた濃い。
元々テレビの人気番組のプロデューサーであり、
なおかつ脚本家であり、映画監督であるこの小説の著者自身が
ドラマの方も脚本&演出を行っているのだから
テーマやストーリーのキモももちろんブレはないし
なんなら小説がドラマを補完しているようにも感じるので
(本当なら逆なんだろうけど、原作がエピソード的にも読める)
これはある意味メディアミックス作品なのではなかろうか。
秀作ではある。
ドラマで広末涼子さんが演じた役と主人公とのシーンが
静かに演出されたドラマより小説の方が濃密だと感じたのは
彼女の人生も丹念に描写しているせいだろうな。
彼女も含め、登場人物たちはみんな
それぞれの心の傷や辛さなども抱えながら良い人生を生きている。
自分ももう少ししっかり地に足をつけた人生を歩まなきゃなと
本書まで読み終えてふと思った。
ドラマで宇崎竜童さんが演じた老エンジニアは
ちょっとかっこよすぎだけどね😅
本書には、各各章ごとに
本田宗一郎さんにまつわる「言葉」が取り上げられている。
心に留まった言葉をいくつか自分のためにメモ。
「大体、大人というのは過去を背負っている
過去を頼って、良い悪いを判断する
私はこれが一番危険であるとみた」
「『チャレンジ』して失敗を恐れるよりも
『何もしない』ことを恐れろ
どだい失敗を恐れて何もしない人間は最低なのである」
「人間にとって『出会い』は大事な条件だ
しかし出会っても、こっちが好きにならなければ相手はついてこない」
「グレースの履歴」源孝志:著 河出文庫
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