帯には「今、ふたたびの鷺沢萠」のコピー。
そう、自分にとってもひさしぶりだ。
忘れていたわけじゃない。
初めてデビュー作「川べりの道」を読んだ時の驚き。
その後続けて作家読みしたのは
ワタシが女流作家を読みはじめたきっかけとなった。
若いのに老練な文章と深い心象風景は
本作も期待を裏切らない。
「だから、つまり、実験だったワケだよねぇ」
「実験?」
「うん。
ただ単に日本をヘコませて戦争を終わらせたいっていうだけなら
同じものを使ったっていいワケじゃない?
リトル・ボーイがどれだけの威力持ってるかは
三日前にもう判ってるんだし。
もっと言えば、二発目は使わなくて良かったかも知れない。
降参しなきゃ二発目落とすぞ、って、
言って脅すだけで済んだかも知れない」
「ああ、そういう意味で実験・・・」
「うん。それに、やっぱり人間だからさぁ。
せっかく二種類のモノができたんだから、
両方使ってみたい、っていうような気持ち、
どっかに必ずあったはずだと思うよ」
静かな語り口と深い洞察、地に足がついた安定感。
そして底辺を流れる悲しみと哀愁。
そこには半島にある自らの出自と
それを受け入れる絆や人間愛があると思うんだ。
デビュー時の彼女に貼られた
「美人女子大生作家」というレッテルは
少なくても彼女にはお門違いの下世話なイメージを植え付け
売らんかなという出版社の思惑を外れて
逆にマイナスに作用したのではないかと思う。
「さいはての二人」鷺沢萠:著 角川文庫
そう、自分にとってもひさしぶりだ。
忘れていたわけじゃない。
初めてデビュー作「川べりの道」を読んだ時の驚き。
その後続けて作家読みしたのは
ワタシが女流作家を読みはじめたきっかけとなった。
若いのに老練な文章と深い心象風景は
本作も期待を裏切らない。
「だから、つまり、実験だったワケだよねぇ」
「実験?」
「うん。
ただ単に日本をヘコませて戦争を終わらせたいっていうだけなら
同じものを使ったっていいワケじゃない?
リトル・ボーイがどれだけの威力持ってるかは
三日前にもう判ってるんだし。
もっと言えば、二発目は使わなくて良かったかも知れない。
降参しなきゃ二発目落とすぞ、って、
言って脅すだけで済んだかも知れない」
「ああ、そういう意味で実験・・・」
「うん。それに、やっぱり人間だからさぁ。
せっかく二種類のモノができたんだから、
両方使ってみたい、っていうような気持ち、
どっかに必ずあったはずだと思うよ」
静かな語り口と深い洞察、地に足がついた安定感。
そして底辺を流れる悲しみと哀愁。
そこには半島にある自らの出自と
それを受け入れる絆や人間愛があると思うんだ。
デビュー時の彼女に貼られた
「美人女子大生作家」というレッテルは
少なくても彼女にはお門違いの下世話なイメージを植え付け
売らんかなという出版社の思惑を外れて
逆にマイナスに作用したのではないかと思う。
「さいはての二人」鷺沢萠:著 角川文庫