優しく
どこか切なく、
静かではあるが暖かく、
そして読み終えた後、
誰かに逢いたくなる気持ちにさせる短編集。
大崎善生さんの作品を読むと
いつもそんな感じを受ける。
しかし長編をひとつひとつ凝縮したような
密度の濃い短編の方が
更に彼の小説に描かれる世界は質量を増す気がする。
とにかく表現が繊細。
自分が普段見ている世界は魚眼レンズみたいで
彼の目を通した世界は
部分部分を接写した広角レンズで見てるみたい。
周りの景色も、人物の心の襞も
静かにゆっくりなぞっているようだ。
綾子はいつもさりげない言葉や仕草で、
そんな風に僕のどこかから優しい気持ちを
引っ張り出してくれるようなところがあった。
そんなときに、僕は二人で張っている帆に、
柔らかな微風が吹きつけるのを感じるのだった。
巻末の解説で小手鞠るいさんが
本書のことをうまい例えで表現している。
確かに。
セピア色のジャケットに入っている、
一枚のレコードのようた作品集だ。
つるつるでピカピカのCDではない。
細かい溝があって、
ひとつとして同じ形はしていない線が浮き上がっていて、
そこに付いている傷痕さえ愛おしい。
そっと針を落とす時には、
大切な恋に巡り会ったあの日、あの夜のように、
胸が高鳴る・・・そんなレコード。
個人的には「空っぽのバケツ」が沁みた。
「別れの後の静かな午後」大崎善生:著 中公文庫
どこか切なく、
静かではあるが暖かく、
そして読み終えた後、
誰かに逢いたくなる気持ちにさせる短編集。
大崎善生さんの作品を読むと
いつもそんな感じを受ける。
しかし長編をひとつひとつ凝縮したような
密度の濃い短編の方が
更に彼の小説に描かれる世界は質量を増す気がする。
とにかく表現が繊細。
自分が普段見ている世界は魚眼レンズみたいで
彼の目を通した世界は
部分部分を接写した広角レンズで見てるみたい。
周りの景色も、人物の心の襞も
静かにゆっくりなぞっているようだ。
綾子はいつもさりげない言葉や仕草で、
そんな風に僕のどこかから優しい気持ちを
引っ張り出してくれるようなところがあった。
そんなときに、僕は二人で張っている帆に、
柔らかな微風が吹きつけるのを感じるのだった。
巻末の解説で小手鞠るいさんが
本書のことをうまい例えで表現している。
確かに。
セピア色のジャケットに入っている、
一枚のレコードのようた作品集だ。
つるつるでピカピカのCDではない。
細かい溝があって、
ひとつとして同じ形はしていない線が浮き上がっていて、
そこに付いている傷痕さえ愛おしい。
そっと針を落とす時には、
大切な恋に巡り会ったあの日、あの夜のように、
胸が高鳴る・・・そんなレコード。
個人的には「空っぽのバケツ」が沁みた。
「別れの後の静かな午後」大崎善生:著 中公文庫