風音土香

21世紀初頭、地球の片隅の
ありをりはべり いまそかり

拝啓 坂本龍一さま

2023-01-07 | 音楽




初めてあなたと出会ったのは
高校2年の時か3年の時か、音楽雑誌の記事でした。
あなたのデビューソロアルバムの広告で
都会的でお洒落な服を着たあなたは
泡だらけのバスタブの縁に腰掛けていました。
東京芸大の大学院卒業という経歴に
「それでポップス枠なの?」と驚いた覚えがあります。
それでもはっぴいえんどやティンパンアレー、
シュガーベイブやムーンライダースなどが好きだった当時の私は
その分野に新しい才能が加わったと注目したものでした。

私が大学入学後
ティンパンアレーの細野さんや
サディスティックミカバンドの高橋幸宏さんとともに
YMOを結成して、ピコピコサウンドを世に出した時には
とても驚きました。
「イエローマジック」という言葉は
ティンパンアレーのアルバム「キャラメルママ」の中の
細野さんが作った曲で見ていましたが
そのワールドミュージック的サウンドとはまるで違う。
個人的にはピコピコサウンドは趣味には合わなかったのですが
(どっちかいうとスネークマンショーの方が面白かった😅)
その実験的な取り組みは興味深く見ていました。

YMO後は「ラストエンペラー」や「戦場のメリークリスマス」など
映画音楽の世界で元々のあなたの音楽が表現され、
(それらの作品ではなんと役者まで)
なんとなくしっくり腑に落ちた想いを抱いたものでした。
相変わらずはっぴいえんどファミリーともいうべき
昔の言い方をするとニューミュージックの世界を聴いていましたが
ことあるごとに視線に入ってくるあなたの活躍は
その世界(に留まらないが)には欠かせない重要ピースでした。

病に侵されていると知ったのは5〜6年前。
そして一昨年ごろからかなり悪いとの情報を見ていました。
そんなあなたがNHKで演奏する番組があるという。
もしかしたら最後になるかもと
一昨日は録画もしてテレビにかじりつきました。
少し痩せてやつれた感じながら、
変わらず風貌とお洒落で都会的なスタイル。
1音1音、噛み締めるような演奏は
音の合間の空気感や、実際には聞こえない呼吸まで
心に沁み渡ってきました。
演奏を聴きながら、鼻の奥がツンとしてきました。

もちろん奇跡の恢復を心から願うところではあるのですが
それでもあなたらしいあんな終え方があるのだなと
その淡々としたスタイルに、改めて憧れを抱きました。
じぶんにもそう遠くなくやってくる老いと最期。
できるかどうかわかりませんが
それを目指したいなと思いました。

番組の最後、
演奏を終えてフッと息を吐き出した姿で「カット」がかかり終了。
見たことのない番組の終わり方で余韻を残してくれた
NHKの演出にも拍手でした。
すてきな演奏と番組をありがとうございました。

敬具
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