風音土香

21世紀初頭、地球の片隅の
ありをりはべり いまそかり

大沢温泉・自炊部

2013-08-12 | 
花巻市の西、
7つの温泉が豊沢川沿いに連なる花巻南温泉郷の中に
かつて秘湯ブームで人気のあった大沢温泉がある。
高級旅館部「山水閣」や茅葺の別館「菊水館」もあるけれど
ここの魅力はやはり昔ながらの自炊部。
今でも農閑期には、忙しかった農作業の骨休めに
数週間から1ヶ月単位で、蒲団や食材を持ち込んで滞在する
「さなぶり」と呼ばれる慣習が残っているので
特に冬場のシーズン、ここは大忙しとなる。

梁や柱は300年前の建築当時のままという歴史ある建物。
ギシギシと鳴る狭い廊下を歩き、
階段を降りた先にある障子の部屋に初めて泊まった。



押し入れの戸も、黒光りする床の間の柱も、低い天井も、
旅館というより「旅籠」という感じ。
外に見える簾で囲われたところは女子専用の露天風呂だ。
夜になると簾越しに赤白く白熱球の灯りがもれる。
その向うは豊沢川。
鮎やヤマメ、そしてこの辺りではイワナやカジカもいる。
川向こうには水車小屋と茅葺きの菊水館。







目を転じて中庭を見ると、
茅を組んだ棚にアサガオの蔓が絡まり、花を咲かせている。



朝から30度とか、日中40度近いとか
TVのニュースでは大騒ぎしていたらしいが
ここの朝晩はひんやりしていて、蒲団の温もりが心地いい。
静かな中に川音と、
日中はアブラゼミやミンミンゼミ、夕方にはヒグラシ。
それらの音に包まれて、TVをつける気にも鳴らなかった。
お湯もトロリとした源泉掛け流し。
8月10日の土曜日は花巻空襲から68年目の日だったが、
申し訳ないような命の洗濯。
コメント
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