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因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

徒然亭若狭『ちりとてちん』

2007-12-14 | インポート
 喜代美(貫地谷しほり)の高座名が「徒然亭若狭」に決まったときのこと(第9週でしたか)。初高座が決まり、「高座名は何になるか?」と兄弟子たちや居酒屋寝床の常連メンバーで盛り上がった場面である。「新しい名前がもらえる」と喜代美の心は浮き立つ。小浜時代は何をやっても優等生のA子の引き立て役のB子でしかなかった自分が新しくなれるのだ!ところが兄弟子たちの案は「草じき」だの「草りがま」だの、おいおい兄さんたち大丈夫かと呆気にとられてしまった。

 いよいよ師匠の草若から高座名が告げられる。草若は「迷わず出て来た」と言う。その名が「若狭」と聞いて、喜代美は少なからず落ち込む。故郷にいたときの自分が嫌で、自分を変えたくて大阪に来たのに、故郷そのまんまの名前が嫌だと泣き通す。実は「若狭」と聞いて、自分もちょっと拍子抜けしたのである。女の子なのだし、もっと可愛らしく小粋な名前を期待していたのだ。しかしこれまでの『ちりとてちん』のさまざまな場面を振り返って思い直した。師匠は、喜代美が自分を嫌いなこと、過去の自分を否定して新しくなりたいともがいていることをよくわかっていたのだ。だがそう簡単に変れるわけではなく、変りたいと思えば思うほど、ありのままの自分と向き合わざるを得ないのである。もっと自分を好きになってごらん、故郷で過ごしたことも決して無駄ではないよ…「若狭」という名前には、喜代美に対する師匠の願いが込められているのではないか。自分の勝手な思い込みかもしれないが、そう考え直すと兄弟子たちの思いついたむちゃくちゃな名前に比べて、師匠の命名が一見単純でそのまんまのように見えて、いかに奥深く思いやりに満ちているかがわかる。

 いまドラマの中でヒロインは「喜代美」「B子」「若狭」といろいろな名前で呼ばれている。どれもあなたである。あなたはこの世でひとりだけだ。A子との比較ではない、あなたらしさをみつけてほしいと願っています。

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