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龍馬は故郷の土佐に戻り、家族と再会する。坂本家の家族は、「これから大殿様にお目にかかる」という龍馬のことばに仰天。姪の春猪は「龍馬おじちゃん、大出世だ」と叫び、兄の権平は「大出世?」と目をむく。下士である脱藩浪士が土佐の参政後藤象二郎と「同士である」こと、山内容堂に会うなど、家族にとっては青天の霹靂であろう。それほどわずか数年のあいだに龍馬は大きな変化を遂げたのだ。本人はもちろん、彼が交わったのはこれからの日本の行く末に大きな役割を果たそうする人物であり、その人々を巻き込んで国の仕組みを根本から変えようとしているのである。
今回はもちろん、これまでの土佐の坂本家のシーンを思い返すと、龍馬はほんとうによい家族をもったと温かな気持ちになる。帰郷を聞きつけたのだろう、岩崎家の人々もやってきて宴になり、弥太郎の父母が息子に対してそれぞれの思いを龍馬に告げるところもほろりとさせる。おお、その弥太郎といえば、土佐商会を離れて独自の商売を始めようとしており、その彼に「いっしょに仕事をさせてほしい」と願い出る上士がいて、失礼ながら弥太郎の人柄や仕事のしかたに共鳴する人がいたとは、しかもそれが上士であるとは、何と奇特な方々であろう。これまでにそういったことを匂わせる場面は記憶になかっただけに驚いたし、嬉しかった。弥太郎、あなたは共に仕事をしたいという仲間を得たのだよ。余計なお世話だが、もっと態度や振る舞いを改めたほうが。
龍馬に対してもっとも変わったのは後藤象二郎であろう。彼が登場すると、武市半平太や岡田以蔵を思い出して、つい「この拷問野郎め」と憎しみが湧いてくるのだが、今回後藤は山内容堂に対して、「坂本が妬ましかった」と血を吐くように告白する。男が、しかも名門の出で土佐の参政にある人物が、下士の脱藩浪士に対して嫉妬を感じていたことじたい、大変な悔しさであり、本人がいちばんそのことを認めたくなかったはず。その気持ちを乗り越えるのは今、この瞬間だ。悪役的な後藤が嫉妬心という、他人にはもっとも知られたくない気持ちを打ちひしがれながら吐露する場面に、この人もまた国の仕組みを変えるために、まず自分を縛っているものを断ち切ろうと力を振り絞ったことを知る。加えて山内容堂を演じる近藤正臣の空恐ろしいまでの凄みは福山の龍馬が霞むほど。得体が知れないとはこういう人物のことを指すのだろう。暴君と名君の両方の顔をもち、たやすく本心をみせない。
龍馬が姉の乙女と話す桂浜の場面は、父が生きていたときに家族皆で龍馬が夢を語った日のことを思い出させる(第7回)。大変ベタな描写であるが、素直に「いい場面だなぁ」と思いたい。龍馬がこの世での人生を終えるまで、あと40日足らず。
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