因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

龍馬伝第16回『勝麟太郎』

2010-04-18 | テレビドラマ

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 龍馬が江戸の千葉道場にやってきた。彼を思い続けていた佐那(貫地谷しほり)と兄の重太郎(渡辺いっけい)は喜ぶが、龍馬は勝麟太郎(武田鉄矢)に会いたい一心で、ほかのことが頭に入らない。会えるわけがないとあきれる重太郎に、龍馬は重太郎が越前藩の剣術指南をしていることから、元越前藩主松平春嶽(夏八木勲)に会い、勝への紹介状をもらうことに成功し、赤坂の勝の屋敷を訪れる。

・・・とプロセスを書いてみて、改めて思う。武市半平太(大森南朋)は土佐藩の中心的人物で、飛ぶ鳥を落とす勢い、かたや龍馬は橋の下で野宿する脱藩浪人である。そんな龍馬が松平春嶽や勝麟太郎などの錚々たる人物にどうやって会うことができ、その後もさまざまな人々と交わりをもち、幕末の激流を泳ぎ抜いていったのか。自分が今回の『龍馬伝』にのめり込むのは、そんな単純な疑問の答をみつけたいからだ。

 龍馬と武市と岩崎弥太郎(香川照之)。3人の向上心の持ち方、方向性がそれぞれ違うことがわかる。武市は人一倍自尊心やプライドが高く、それを傷つける者に対して激しい敵意を持つ。弥太郎も「我こそは」という気持ちが強いが、何より金持ちになりたい!と実に強烈で素朴な欲望を持っている。さて龍馬はというと、他者からの評価をほしがっているようには見えないし、物欲も感じさせない。人を利用してのし上がろうともせず、ただただ会いたい人に会って話を聞きたい、日本を守りたいというまっすぐな意志が伝わってくる。

 にしても松平春嶽が「おもしろい男だ」と感心したり、勝麟太郎が龍馬に2度めにあったときのやりとりで、「気に入ったぜ」と合格を言い渡す場面は出来過ぎたエピソードのように感じられ、自分の疑問に納得できるものではなかったし、勝に咸臨丸へ案内されて、「黒船じゃ、日本人じゃ」と狂喜する龍馬のテンションに自分はついていけないのだった。迷路のようだった龍馬の人生に光が差し込んできたのはとても喜ばしいのだけれども。

『龍馬伝』は劇中の音楽も楽しみのひとつになった。第2部になって新しいメロディがいくつか流れていて、前回の終盤、武市たちが江戸にのぼる場面、今回龍馬が佐那に仕立ててもらった紋付袴に着替え、堂々と現れる場面で使われていた弦楽器の曲(テーマ曲の変奏だと思う)は、聴いていると背筋が伸びてくるようでとても好きである。

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