晴走雨読

晴耕雨読ではないが、晴れたらランニング、雨が降れば読書、きままな毎日

『「脱」世界同時不況』

2009-08-02 09:34:44 | Weblog
 『「脱」世界同時不況 オバマは金融危機を克服できるか』(金子勝 アンドリュー・デウィット著 岩波ブックレットNO.758 2009年刊)

 私は、当ブログ2008.10.25,26で、同じ著者達の『世界金融危機』を論じた。本書は、その岩波ブックレットとしての続編である。まず疑問が浮かぶ。なぜ1年前に「世界金融危機」だったものが、「世界同時不況」にレベルダウンしたのか。

 北海道新聞の論壇時評が、6月末から金子勝氏に変わった。ブックレットの要約が時評にまとまっている。氏の論旨を紹介する。

 景気が底入れしたという観測があるが、金融危機の収束は未だ先である。米国の情況は1990年代にこの国に似てきた。厳格な不良債権査定も無く公的資金が銀行に投入されている。

 不況と政府の景気対策で米国の財政赤字が膨らんでいる。その結果、長期金利が上昇を始めている。そこからは、ドル安(円高)、石油高が日本を襲い景気が腰折れする可能性がある。

 最後に氏が語る展望は、この世界的な金融危機は、地球温暖化とエネルギー危機でもある。「100年に一度の危機を乗り切るにはエネルギー革命が必要だ。いまや各国政府は規制による投資誘導策をとり、エネルギー転換に伴う爆発的な更新需要を引き起こそうとしている。だが、規制が市場の活力を削ぐといって、日本では自然再生エネルギーに関して投資誘導策がとられていない。このままでは世界から取り残される。

 
 この情況認識は全て誤っていると考える。まず、地球温暖化という現状認識である。温暖化には科学的根拠が本当にあるのか。更新需要への期待は、「資本」と同じだろう。ITバブルの次は環境バブル化。問題は、新たな投資先が見出せない資本の過剰流動性だ。

 氏は、竹中平蔵に代表される新自由主義者(規制緩和論者)を批判してきたが、適切な「規制」がなされれば、適切な経済運営ができると考えているのだろうか。ある日共のローカル議員は自分のHPで「目指すべき社会はヨーロッパのようなルールある資本主義社会」と語っているのと同様ではないか。(余計はことだが、この議員の主張は日共方針とは違うような気はするが。)

 結局、昨年と同じ結論になってしまうのだが、金子氏の分析は、丁寧に現象を追っているのは間違いないが、資本主義社会の歴史性(限りがあるという意味で)、腐朽性(矛盾に満ちている)の観点がないため、「大きな物語」としての体制論がないのである。だからこそ、体制批判をしているような顔をしながら、マスコミで使われているのだ。
 
 


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする