『甘粕正彦 乱心の曠野』(佐野眞一著 新潮社 2008年刊)
甘粕正彦の人生を資料と聞き取りで再現、甘粕は大杉栄一家殺しの実行者ではないとの新説を証明したフィクションの労作(470ページ)。
しかし、客観性にこだわるゆえに読み物としては今ひとつ面白くない。間接的な心理描写、年代記的に人生が見えてこない。エンターテイメント性に欠ける。
たとえば、NHK大河ドラマ「篤姫」の宮尾登美子は、史実をかなり歪めているが、ドラマのストーリーとしては、とても楽しい。
あの「東電OL殺人事件」の佐野眞一としては、凡作といえよう。
甘粕といえば、唐十郎作「少女仮面」、宝塚の舞台が突然「満州」に変わり、男装の麗人、東洋のマタハリ川島芳子、謎の憲兵甘粕正彦、演じている者たちすら解らない難解なストーリー、しかしながらエネルギーだけがほとばしる。血沸き肉踊る異次元空間を創出。
佐野さん、こういうテンポを期待していたのに残念。
冒頭で、甘粕が理事長をした満州映画社が、戦後の東映に繋がり、東映映画に流れる虚無感が満映からきているのではないか、と提起しながら最後までその謎解き、分析をしなかったのも詐欺的。
甘粕正彦の人生を資料と聞き取りで再現、甘粕は大杉栄一家殺しの実行者ではないとの新説を証明したフィクションの労作(470ページ)。
しかし、客観性にこだわるゆえに読み物としては今ひとつ面白くない。間接的な心理描写、年代記的に人生が見えてこない。エンターテイメント性に欠ける。
たとえば、NHK大河ドラマ「篤姫」の宮尾登美子は、史実をかなり歪めているが、ドラマのストーリーとしては、とても楽しい。
あの「東電OL殺人事件」の佐野眞一としては、凡作といえよう。
甘粕といえば、唐十郎作「少女仮面」、宝塚の舞台が突然「満州」に変わり、男装の麗人、東洋のマタハリ川島芳子、謎の憲兵甘粕正彦、演じている者たちすら解らない難解なストーリー、しかしながらエネルギーだけがほとばしる。血沸き肉踊る異次元空間を創出。
佐野さん、こういうテンポを期待していたのに残念。
冒頭で、甘粕が理事長をした満州映画社が、戦後の東映に繋がり、東映映画に流れる虚無感が満映からきているのではないか、と提起しながら最後までその謎解き、分析をしなかったのも詐欺的。