晴走雨読

晴耕雨読ではないが、晴れたらランニング、雨が降れば読書、きままな毎日

『甘粕正彦 乱心の曠野』

2008-10-30 20:12:32 | Weblog
 『甘粕正彦 乱心の曠野』(佐野眞一著 新潮社 2008年刊)

 甘粕正彦の人生を資料と聞き取りで再現、甘粕は大杉栄一家殺しの実行者ではないとの新説を証明したフィクションの労作(470ページ)。

 しかし、客観性にこだわるゆえに読み物としては今ひとつ面白くない。間接的な心理描写、年代記的に人生が見えてこない。エンターテイメント性に欠ける。

 たとえば、NHK大河ドラマ「篤姫」の宮尾登美子は、史実をかなり歪めているが、ドラマのストーリーとしては、とても楽しい。

 あの「東電OL殺人事件」の佐野眞一としては、凡作といえよう。


 甘粕といえば、唐十郎作「少女仮面」、宝塚の舞台が突然「満州」に変わり、男装の麗人、東洋のマタハリ川島芳子、謎の憲兵甘粕正彦、演じている者たちすら解らない難解なストーリー、しかしながらエネルギーだけがほとばしる。血沸き肉踊る異次元空間を創出。


 佐野さん、こういうテンポを期待していたのに残念。

 冒頭で、甘粕が理事長をした満州映画社が、戦後の東映に繋がり、東映映画に流れる虚無感が満映からきているのではないか、と提起しながら最後までその謎解き、分析をしなかったのも詐欺的。


 

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『世界金融危機』 その2

2008-10-26 17:08:03 | Weblog
 天気予報では、午前中に前線が通過するため一時雨とのことだったので、午後から会社のランニング仲間が入院している病院へお見舞いに。しかし、途中で雨が、さらに雨が小粒になると急激に気温が低下。かなり体が冷えてしまいました。そう、距離も丁度良いくらいだったので、ランニングを兼ねてのお見舞い。



 痛めた靭帯の術後は順調に回復しているとはいえ、筋肉が落ちて足がかなり細くなっていて痛々しかった。元のように復活するには結構努力が必要な気がした。

そろそろ、

 『世界金融危機』(金子勝 アンドリュー・デウィット著 岩波ブックレットNO.740 2008年刊)その2

 金子氏らは、現在の情況を「グローバル同時不況」と呼ぶ。この金融危機の根源は、①証券化という手法と「影の銀行システム」の崩壊にある。②次に、信用収縮と景気減速の悪循環のプロセスが金融危機を進行させる。③さらに、地球温暖化に伴うエネルギー転換の波が重なっていることにある。

①「影の銀行システム」とは、証券という本来信用創造のないものを、長短の金利差を利用してぐるぐると膨らませていくことが可能な仕組みを作った。

②信用収縮と景気減速の悪循環の結果、住宅価格の下落、消費水準の低下、企業倒産、雇用の減少、原油、食料価格が上昇しインフレが進んでいる、世界同時不況がやってくる。

③私たちはいま、2つの大きな長期波動に直面している。一つは、地球温暖化をもたらす化石燃料からの脱却、もう一つは、米国中心の「金融資本主義」の破綻という長期波動である。

 2つの大きな長期波動の重なりは、資産価格の急落(資産デフレ)と資源価格の高騰(資源インフレ)が同時進行する現象を生み出している。歴史上経験したことの無い特殊なスタグフレーションが起きている。

 これが、グローバル・クライシスをもたらす経路は、(1)サブプライム絡みの住宅関連証券が世界中にばらまかれ、金融危機が波及する経路。(2)米国のドル安、消費の落ち込みが世界中に景気後退を伝播させる経路。(3)資源と食料のインフレという経路。が考えられる。

 米国の双子の赤字(貿易赤字と財政赤字)は、海外からの資金の還流でファイナンスしている。その前提が、ドル(米国債権)の信頼である。したがって、ドル安=ドル暴落が最も怖いシナリオだ。


 以上が、このブックレットでの金子氏の現状分析と将来予想の抄訳だ。丁寧に現象を追っているのは間違いないが、「大きな物語」がないので、小さなスパンの将来予想はあるが、体制としてどうあるべきかを語っていない。

 私的には、資本主義的経済体制の矛盾、歴史性の観点が無ければピンと来ない体質となっているので、金子氏の著作の読後にいつも物足りなさが残ってしまう。



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『世界金融危機』 その1

2008-10-25 20:10:12 | Weblog
 『世界金融危機』(金子勝 アンドリュー・デウィット著 岩波ブックレットNO.740 2008年刊)

 世界同時株安、株価の暴落が止まらない。この国の株価もバブル経済崩壊後の底値に近づいた。基軸通貨ドルの暴落も止まらない。1ドル=90円も目前。

 今、私たちの眼前で起きている事象の本質はどこにあるのか。1929年の世界恐慌の再来なのか。米国版バブル経済崩壊なのか。信用収縮はどこまでいくのか。この国の経済はこれからどうなるのか。私たちの生活にどのような影響が生じるのか・・・

 今日、あるところで経筒なるものを見てきた。この国では、平安時代に末法思想が流行したという。本来の意味では、末法とは仏教の終わりのことであってこの世の終わりという意味ではないが、当時は、治安が乱れ、政治が腐敗し、民衆の不安が増大し、終末論が流行したという。人々は、お経を筒などに入れ寺の境内に埋め安寧を祈ったと言う。

 『世界金融危機』が売れている。70ページの薄いブックレットだが、書店で平積み台にうず高く積まれていた。著者の金子勝氏は、ここ何年もずっと深刻な顔をして危機を売っている。しかし、いわゆる反体制的な危ない人ではない。その証拠に、マスコミの寵児である。

 彼は、マルキストでも、ケインジアンでもない。彼の言葉では、「制度」を研究しているという。制度の矛盾を突き、改革をする。体制の矛盾を突き、革命を展望する人ではないのである。

 しかし、ソ連崩壊後、マルクス経済学者のほとんどが実質的な転向、沈黙、逃亡、細部の研究への逃げ込みをし、情況への発言をしなくなった後は、彼程度でも現状批判に聞こえてくる。

 このような、先入観を持ちながら、「世界金融危機」を読むこととする。
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首相動静(あっそーの巻)

2008-10-22 20:37:14 | Weblog
 今日は、引用だけで構成します。

産経新聞(ネット)から引用
【麻生首相ぶらさがり詳報】「ホテルのバーは安全で安い」(22日昼)

 麻生太郎首相は22日昼、首相官邸で記者団に対し、執務終了後に高級ホテルなどで会合を繰り返し、批判が出ていることに関し、「ホテルは安いとこだと思っている。たくさんの人と会うときにホテルのバーは安全で安いところだ」と 述べた。ぶら下がり取材の詳報は以下の通り。

【夜会合】
 --夜の会合に連日行っていて、一晩で何万もするような高級店に行っているが、それは庶民の感覚とはかけ離れていると思う。首相はどのように考えるか

 「庶民っていう定義を使うのが北海道新聞よく使われるのですか。僕は少なくともこれまでホテルというものが一番多いと思いますけども。あなたは今、高級料亭、毎晩みたいな話で作り替えてますけど、それは違うだろうが」

 --あの高級…

 「そういう言い方を引っかけるような言い方やめろって。もうちょっと事実だけ言え。事実だけ。ずーっと、日程だけでも言えるから」

 --あの

 「だろ」

 --ホテルが…

 「馬尻がいつから高級料亭になったんだ。言ってみろ。そういう卑劣な言い方だめ。きちんと整理して、ね、言わなきゃ。いかにも作り替えれるような話はやめたらいい」

--はい。高級店というか、一晩に一般の国民からすると高いお金を払って食事をする場所という意味で申し上げた

 「うん。きちんとそういう定義言ってね。これからもするときは。あなたの質問ときどき、代表して聞いているけど、いつもなんとなーく、こう妙にひねて聞いているように聞こえるんだね」

 --そうか

 「うん。そういう新聞なのかなあと思って聞いてたんだけど」

 --首相は批判があることについてはどう考えるか

 「僕はこれまでもずーっと、あの少なくともホテルというところは安いとこだと思ってますね。正直言って、たくさんの人と会うときにホテルのバーっていうのは、安全で安いとこだという意識がぼくにはあります。正直なところです。事実その、どれが安いかどれが高いかと言われると別ですよ。だけどちょっと聞きますけど。例えば安いとこ行ったとしますよ。周りに30人の新聞記者いるのよ。あなた含めて。警察官もいるのよ。営業妨害って言われたら、なんと答える?あなたのおかげで営業妨害ですって言われたら、新聞社として私たちの権利ですっていって、それずーっと立って店の妨害をして平気ですか?今、聞いてんだよ。答えろ。フ、フ、フ、フ、フ」

 --私が伺いたいのは…

 「いや、俺の質問に答えてくれ。俺、それ答えてんだから。今、今度俺が質問してる。平気ですか?」

 --われわれは営業妨害はしないように取材している

 「してるって。現実にはしてるって言われているから、俺。だからうちはこねーでくれって。ホテルが一番言われないんですよ」

 --なるほど

 「分かります?だから、あなたは人の自分の都合だけで聞いてるように聞こえんだね。俺には。ホテルが一番人から文句言われないと僕はそう思ってます。だからこれまでのスタイルでしたし、これからも変えるつもりは今のところありません。」

 --お金に色は付いていないが、政治献金や政党助成金という形で金を出すのは高級な食事をするだけのためではないと思うが…

 「自分でお金出します。政党助成金、もしくは私はその種の金、幸いにして自分のお金もありますから、自分で払ってます」

 --そしたらそれで返上するという…

「返上?(遮って終わる)」

 以上の、北海道新聞記者とのやりとり、育ちが良い割には、べらんめえ調の乱暴な言葉使いですが、どちらが正常なことを言っているのか、最近の「首相動静」から判断できます。

【首相動静】
10月15日(水)午後6時58分から同8時11分まで、東京・元赤坂の明治記念館内の日本料理店「花がすみ」で秘書官と食事。同14分
午後8時26分、東京・広尾の日本料理店「京寿々」で個人事務所のスタッフらと食事。午後9時56分、同所発。同10時9分、私邸着。

10月16日(木)午後7時43分、東京・赤坂のANAインターコンチネンタルホテル東京着。同ホテル内の中国料理店「花梨」で中川昭一財務・金融担当相、甘利明行政改革担当相、菅義偉自民党選対副委員長と会食。
午後9時43分、東京・虎ノ門のホテルオークラ着。同ホテル内のバー「バロンオークラ」で秘 書官と食事。午後10時24分、同ホテル発。午後10時44分、私邸着。

10月17日(金)午後8時22分、東京・有楽町のフランス料理店「アピシウス」着。千賀子夫人と食事。午後11時13分、同所発。同38分、私邸着。

10月18日(土)午後9時48分、東京・六本木の飲食店「馬尻」着。秘書官と食事。午後11時14分、同所発。同37分、私邸着。

10月19日(日)午後6時6分、同所発。同14分、東京・内幸町の帝国ホテル着。秘書官と食事。
午後8時50分、同ホテル内のバー「インペリアルラウンジ アクア」へ。秘書官と打ち合わせ。午後10時29分、帝国ホテル発。同46分、私邸着。

10月20日(月)午後8時6分、東京・虎ノ門のホテルオークラ別館内の宴会場「メイプルルーム」で鳩山邦夫総務相ら「太郎会」メンバーと会食。
午後9時18分、同ホテル内のバー「ハイランダー」で秘書官と打ち合わせ。同41分、鳩山総務相、鴻池祥肇官房副長官らが加わった。同10時23分、森英介法相が加わった。午後10時43分、同所発。午後11時3分、私邸着。

10月21日(火)午後9時29分、東京・赤坂のANAインターコンチネンタルホテル東京内のフレンチ&イタリアン料理店「イタロプロバンスダイニング」で秘書官と懇談。午後10時27分、同ホテル発。同47分、私邸着。

 以上から、様々な感想を持つことでしょうが、私の印象としては、

1.毎晩、ホテルなどで食事と2次会、育ちの良さゆえ、ゆっくりと食事をするのでしょうか、帰宅時間は結構遅いです。超多忙な首相としては、驚異的な体力の持ち主です。

2.ずっとこのような生活をしてきたのだと思います。急に生活を変えることはできません。

3.だた、肝心な財界人・業界人との懇談がほとんどありません。学者などとの勉強会もありません。人脈が極めて狭いためと思われます。救いは、人脈にきな臭さが感じられないことです。

4.安倍首相の動静(本ブログ2007.3.17を参照して下さい。)と比較すると、交友関係から、ある意味、安倍ちゃんは相当期待されていたのだなあということがわかります。
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第29回 北海道ロードレース

2008-10-19 16:05:14 | Weblog
 昨年の大会は、雨天で寒かった印象があるが、今年はうって変わって、気温19℃、天候晴れ、しかし、南からの風が強く、気象庁のデータでは、風速10m/秒と発表されているが、もっと強く感じた。

 さて、レースは往路が強い追い風に背中を押され、予想より早いペースで走れた。予想と言っても、最近は、出たどこ勝負で走っているので、事前にペースの予想はできていないのであるが。ペース配分もなく、行けるだけ行って見ようであった。

 しかし、折り返してからはひどい向かい風。前のランナーを風除けにしたりするが、みるみるスタミナを使ってしまった。残り、5km位からは、大げさに言えば「地獄」、走りこみ不足プラス強風で、前に進めない状態、テレビの台風中継のようであった。

 そして、最後ゴール目前で歩いてしまったのは、鬼畜米英、精神一到何事かならざらん、精神力の無さが露呈してしまった。

 この後、さよならさっぽろマラソンが11月中旬にあるが、参加するかどうしようか決めていません。今年を振り返るのはちょっと早いが、非常に低調な1年、参加した大会も少なく、日常の練習量、モチベーション・・どれをとっても過去最低。

 今年の残りと、冬をきちんと過ごして、来年に繫げていければと思っています。



 「森達也 フォーラムin時計台」の講演要旨が、本日の北海道新聞朝刊に掲載されました。前回の斉藤貴男氏に続き取り上げてくれたことは良いことなのだけれど、道新もメディアのひとつとして、他者の主催した講演会の内容を伝えるだけでなく、自らの企画として、「メディアの現在」を検証すべきと考える。

 
 
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森達也 フォーラムin時計台 その3

2008-10-18 20:01:42 | Weblog
 ハーフマラソン前日、午後から軽めのジョグ、明日の天気は、goodで20℃の予報、寒さ対策は不要、逆に暑いかもしれない。シューズはどれにしようか、朝食は餅にしよう。スタート前に、バナナを食べて、ヘルシア緑茶を飲んで、ゼリーはどうしようなどといつもどおりの準備。



 『森達也 フォーラムin時計台』 その3

 後半は、中島岳志が加わり、森達也、山口二郎の3名による近年まれな盛り上がった座談となった。その中の話題から。

 マスコミ報道が偏り、一方的な情報しか伝わらない例として、蓮池透(家族会元事務局長)のインタビューが紹介された。内容は、このブログ、2008.6.18「再び拉致異論」で紹介したが、「世界」「週間金曜日」「ナックルス」などの少数読者の雑誌でしか伝わらない現実がある。

 先日の光市母子殺人事件で死刑判決が出た時、法廷を取り巻く群衆から拍手が湧いたそうだ。被告人とはいえ、人が一人死ぬことに対して拍手とは、そのことを異常とみるか、どうか。

 裁判は、被害者の復讐のためにあるのではなく、社会秩序を乱したことに対する国家による罰則であるということが、近年は、変質している。

 作られた世論によって判決が左右される傾向がある。光市の例では、被害者の夫、彼の特異なキャラクターをマスコミが取り上げ、世論を形成したと言える。

 このような情況の時、「裁判員制度」がスタートする。裁判員に選ばれた国民が冷静な判断をできるのか。例えば、光市の場合、無期懲役などの判断をしたとしたら、どこからか名前が流出、インターネット上などでバッシングに見舞われる怖れがある。

 最後に、森氏が言っていたのは、「相転移」、氷―水―水蒸気は同一物質だが、零度℃以下でも水の状態を過冷却状態といい、何か物理的な刺激を加えると一瞬で氷になる。これを相転移といい、現在の社会は過冷却状態なのではないか。








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森達也 フォーラムin時計台 その2

2008-10-17 20:19:48 | Weblog
 フォーラムまで時間があったので、書店により本を買い込み、マックで読書。少々休憩を挟み、札幌地下街オーロラタウンで続きを読んで、地上に出たら外はたそがれ時。この街っていいなあと思えた瞬間。



 『森達也 フォーラムin時計台』 その2

 前回では、1995年オウム以降、明らかに社会が変わった。人々は言い知れぬ不安と恐怖を覚えながら日々を暮らしている。社会の集団化、武装化が進行している。と書いた。

 いつの時代も戦争と言う大量殺人は、愛する人を守りたい、許すことのできない悪に対する正義の戦いなどを大義として行なわれる。反対に真の悪意や憎しみからは、それほど多くの人は殺せない。せいぜい、その人の周辺にいる身近範囲である。

 再び、「正しい」ことの怖さを感じる。


 
 もうひとつのキーワードは、「忖度」(そんたく)である。忖度という共同幻想である。

 鈴木宗男、佐藤優らの主張するいわゆる「国策捜査」、NHKの番組に対する安倍晋三、中川昭一の介入などは、そこにどこからか明確な指示や圧力があったかどうかというよりも、検察やNHKの幹部がある種忖度の結果なのであろう。

 森氏に「放送禁止歌」という著作があるが、放送禁止ということも、特に明確なルールが存在するわけでなく、業界における共同幻想=暗黙裡の自主規制の結果なのである。1995以降は、マスコミ報道において、この自らの規制が増えているという。

 また、近年のマスコミ報道の特徴を言えば、わかりやすさを求められるため、論理の単純化が極端に行なわれている。また、断定口調も最近の特徴である。現実は、複雑で混沌としていて、それをありのまま伝えることには大変な困難が伴うということだ。

 最後に、悪い情況に置かれているマスコミ業界の中でも、良質な作品を作ろう、真実を伝えようとがんばっている人がいる。もし、いい作品と感じたら、是非「良かった」と誉めてほしい。苦情ばかりが寄せられる中、評価するという声は、現場を励まし、情況を変える力になる。



 さて、講演の後半に、中島岳志・北海道大准教授が加わった。中島氏の話を初めて聞いたが、1975年生まれの若い方だが、興味の置き所、論理の展開など感性が合うというか、大変面白い方で、ちょっと、追っかけたくなりました。



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森達也 フォーラムin時計台 その1

2008-10-16 21:22:57 | Weblog
 喫茶店に彼女と二人で入り、コーヒーを注文すること。あーそれが青春♪(青春の詩)

 喫茶店におばあちゃんと二人で入り、渋茶を注文すること。あーそれが老人♪(老人の詩)

 琴似のある喫茶店、今どき珍しい昔風の店で、夕方でしたが結構込んでいました。ドトールやテリーズは、喫茶店の雰囲気が感じられません。



 『森達也 フォーラムin時計台』  2008.10.15 

 感性の合う人の話はストンと落ちるものがある。書物でしか知らない森達也氏、その本物を見たかった。実物の森氏は、私より2歳若い50歳代、しかしロン毛(自分で長髪と言わずロン毛と言っていた。)、70年代のままといった感じ。

 森氏は、20歳代を各種アルバイト(今で言うフリーター)、30歳代で、テレビの下請け会社のAD、久米宏のニュースステーションの制作などにも関わっていた。現在は、作家、フリーのディレクター。

 久米さんの時代は、放送後番組の反省会が1時間も2時間もやっていた。古館は5分位だそうである。いかに、報道現場の制約が多くなっているかである。

 森氏の話のキーワードは、「1995年」、オウム真理教事件の前と後では、世の中が大きく変化したという。事件当時の番組は、オウムを凶暴、凶悪、信者は麻原に洗脳されたロボットなど、一方的なイメージで作ることを強要されたという。

 だが、森氏が実際に取材した信者は、普通で、やさしく、純真な、どこにでもいる人々であった。しかし、これは視聴者やテレビ局の望む姿ではなかった。
視聴者にとっては、オウムは、自分たちとは違う人たちでないと困るのである。動機がわからないと、不安、恐怖に陥るのである。自分たちと同じでは、いつ何時自分が何をしてしまうか恐怖なのである。

 1995以降、ブラウン管を挟んで、善と悪の純度が上がった。自分は「善」で、テレビの向こう側に「極悪人」がいて、安心が得られる。

 人々の不安、恐怖は、ひとりでいることに恐怖を覚え、それは、社会の武装化、集団化をもたらす。国旗、国家、住基ネット、盗聴法・・・が成立。

 また、自分を「善」と思いたい人が増え、「悪」を許せない気持ちが強くなる。1995以降、死刑判決が増加している。



 私も、自分(たち)が「正しい」と思っている人(たち)が増えていると感じるし、彼らの独善的な感性が時々怖いと思う時がある。付け加えれば、旧来の政治的スタンスでいえば、彼らは、「革新」ないし「左翼」といわれた人(たち)である。もちろん、私自身もそのジャンルの人間と自覚しているが。





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『情報戦と現代史』

2008-10-13 09:32:24 | Weblog
 ハーフマラソンを来週に控えて、昨日は久しぶりに豊平川河川敷コースをランニング、気温が低く、不思議なことにここではよくある事だが行きも帰りも向かい風、うーんハーフには3~4km分くらいスタミナが不足している感じ。本番は、気合で行くしかない。



 『情報戦と現代史 日本国憲法へのもうひとつの道』(加藤哲郎著 花伝社 2007年刊)

 読後、直ぐに感想を書ける時と、文章にするまで時間を要する時がある。この本は、後者である。なぜか。

 先ず、書名にある「情報戦」の意味がわからない。著者は、インターネット上で「ネチズン・カレッジ」なるサイトを開き、現代史について閲覧者からの情報を募っている。このサイトは、私も時々覘いているが、著者の発掘した新たな資料を公開し、それに対して様々な情報が寄せられているようである。しかし、それを情報戦と呼ぶのか。著者が闘っている相手は誰なのか。

 また、著者の現代史研究の意図がわからない。著者は、ソ連崩壊後、歴史的文書が公開されてきているが、その資料を丹念に読み込むことで今までわからなかった新たな事実を発掘している。その中で、これまで一番衝撃的だったのが、戦後日共のシンボル(愛される共産党)であった幹部会議議長野坂参三が、かつて同志山本懸蔵を密告したという事実をつかみ、その結果、野坂は何と100歳を超えてから除名処分になった。(その山本も仲間を売っていたが。)

 著者の意図が、日共に対する打撃を狙っているのか、歴史の真実を追究しているのかわからない。

 この本でも、日共の党創立記念日、当時の党代表者名に対する疑問、野坂が戦中にあって、同志達が命を賭けて天皇制と闘っているのに、天皇制廃止を前提としない戦後構想を毛沢東、蒋介石から承認をもらっていたという事実、米国は、戦争の初期の段階から天皇制を廃止せず利用する考えを持っていたなどの事実を書いている。

 この本を読むと、安易に人が人を信じてはいけない、裏切りの歴史を積重ねてきた革命党派などに近づいてはいけない、などという重い気持ちにさせられるが、果たしてそうなのか。
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『21世紀の歴史』 その3

2008-10-10 20:30:51 | Weblog
 『21世紀の歴史』その3

 私は、現在に対して、こんなイメージを持つ。

 資本主義社会は、癌に侵されていた。そこで、社会主義という抗がん剤の投与を行い、健康を取り戻したかのように思えたが、副作用が酷く、抗がん剤の使用を中止した。すると、再び癌の勢いが増し、転移が進んでいるのが「今」だ。

 「公平や平等」の実現という理想を掲げて出発した社会主義社会が崩壊した後、世界は長く冷たく暗く出口の見えない「新しい中世」のトンネルの中にいる。(注:キューバ、中国など自称社会主義社会として存在している。)

 私たちは、現在から過去を見ることができるが、未来から現在を見ることができない。ただし、見ることができることと、捉えることができることは一致しない。

 私たちは、明日に対しても、来年に対しても、未来に対しても、希望と不安を合わせ持ち、その比重が時々によって変わる。
 
 唯物史観という歴史認識を持っていたとしても、事態が好転するとは限らない。悲観的な事象も多発するであろう。ただ、人間に信を置き、根底的には歴史を楽観視できるであろう。

 そういう意味で、ジャック・アタリは、究極的には楽観論者である。
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『21世紀の歴史』 その2

2008-10-07 19:16:56 | Weblog
 ワンちゃんの給水直後は、さすがに抵抗があります。



 小沢一郎が風邪をこじらせて入院しました。政治家の健康問題はマスコミタブーのひとつなのでしょう、なかなか本当の事が報道されません。安倍の潰瘍性大腸炎もそうでした。

 小沢に、かねてから心臓に持病があることは周知の事実です。衆議院の解散が先送りされ、選挙モードが長く続くことは、小沢の健康を蝕みます。おそらくそう長くは無いことを本人はわかっているのでしょう。私も本当に最期の闘いになると思っていました。

 しかし、「あっそー」は、焦らし作戦で小沢の消耗を狙っています。もし、今、小沢が動けなくなれば、民主党は選挙前に大混乱に陥ることでしょう。ポスト小沢の想定ができているようには思えません。



 『21世紀の歴史』(ジャック・アタリ著 作品社 2008年刊) その2
 
 さて、ニッポンの未来は・・この国に関する記述から、引用する。(一部要約)

 1980年代、東京は、世界の「中心都市」になるチャンスを逃した。

 『当時の日本には金融力があり、経済はよく統制されていた。また、日本には貧困に対する不安感があり、テクノロジーと工業力があった。しかし実際には、日本には銀行・金融システムの構造問題を解決する能力がなく、また膨張した金融バブルを制御する能力にも欠けていることが、まもなく明らかになった。また、自国通貨である円の大幅な切り上げを回避することも、労働市場の流動化を図ることもできず、サービス部門や「ホワイトカラー」の労働生産性を向上させることもできなかった。特に、日本は世界中からエリートを引き寄せることができなかった。そして、「中心都市」に求められる個人主義を推進することもなく、覇権国であるアメリカの呪縛から逃れることもできなかった。』

 その後、上記のこの国が抱えていた構造的な問題は、米国から強制的に「改革」された。また、下記のとおり、アジアの中でも、この国より他国の方が社会変革を達成しているというイメージを持たれている。
 
 『韓国の映画・連続ドラマ・歌手は「韓流」を形成し、西洋の近代性と東洋の伝統的な価値を融合させることに成功した社会像を、アジアの若年層にアピールした。東洋の伝統的価値とは、いまだに帝国主義の残影を引きずっている日本よりも、韓国にそのモデルを見出すことができる。』

 そして、各国の未来は、以下のように描かれる。

 『中国のGDPは2015年に日本を抜かし、2040年にアメリカと並ぶ。』しかし、『2025年には、いずれにせよ中国共産党の76年間にわたる権力に終止符が打たれるであろう。中国は内乱状態に陥る。』

 『2025年にインドの人口は世界最大の14億人に達し、中国とアメリカに次いで世界第3位の経済大国になる。』

 『アジア最大の勢力となるのは韓国であろう。』

 では、この国の未来は。

 『日本は世界でも有数の経済力を維持し続けるが、人口の高齢化に歯止めがかからず、国の相対的価値は低下し続ける。1,000万人以上の移民を受け入れるか、出生率を再び上昇させなければ、すでに減少しつつある人口は、さらに減少し続ける。』

 『日本を取り巻く状況は、ますます複雑化する。例えば、北朝鮮の軍事問題、韓国製品の台頭、中国の直接投資の拡大などである。このような状況に対し、日本はさらに自衛的・保護主義的路線をとり、核兵器を含めた軍備を増強させながら、必ず軍事的な解決手段に頼るようになる。こうした戦略は、多大なコストがかかる。2025年、日本の経済力は、世界第5位ですらないかもしれない。』

 最後に、ジャック・アタリの「日本語版序文にかえて」では、

 この国が、世界市場の中で「中心都市」になれない理由として、

①既存の産業・不動産から生じる超過利得、官僚周辺の利益を過剰に保護してきた。
②アジアにおいて、平和的で信頼感にあふれた、一体感のある友好的な地域を作り出すことができなかった。港湾や金融市場の開発を怠ってきた。
③ナビゲーター、技術者、研究者、企業家、商人、産業人の育成や招聘を怠ってきた。

 21世紀日本の10課題
①東アジア地域に、調和を重視した環境を作る。
②国内に共同体意識を起こす。
③自由な独創性を育成
④港湾や金融市場を整備
⑤企業の収益性を改善
⑥労働市場の柔軟性をうながす
⑦高齢化を補うため移民を受け入れる
⑧市民に新しい知識を公平に授ける
⑨未来のテクノロジーを習得
⑩地政学的思考を構築し、同盟関係を構築
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斎藤貴男 フォーラムin時計台

2008-10-05 21:08:45 | Weblog
 このところ、早朝や休日の営業が続き、頭も体も動きが鈍っています。本日は、札幌マラソンですが、あまりの参加人数の多さから(12.000人とか)、ここ数年、参加していません。そこで、週末ランを実行、しかし、体が錆びた感じで16km位でギブアップ、19日のハーフに不安が過ぎります。



 『斎藤貴男 フォーラムin時計台』 2008.10.2

 フリージャーナリストの斎藤氏を招き、「メディアのいま現在」と題して講演。

 講演の要旨は、北海道新聞2008.10.5朝刊にコンパクトにまとまられているのでそちらを参照して下さい。

 ここで、報告しようと思っていたことのうちの一つは、道新に掲載されていたので引用する。

 斎藤氏は、秋葉原の無差別殺傷事件についてある地方紙(道新ではないらしい)からコメントを求められ、『「今の構造改革を続けている限り、私たちは何度も再発におびえなければならない」としたが、「容疑者の犯行を正当化してしまう」と掲載されなかった。容疑者は悪いが、社会が追いつめた。関係ないということはないんです。メディアはもっと踏み込んでほしいと思います。』と語った。

 このことを、講演要旨で伝えた道新は、ある地方紙とは異なりまずはさすがと誉めておこう。

 斎藤氏は、道新に直接関わるもう一つの事実も言っていたが、これは、講演要旨では触れていない。

 それは、北海道警察の裏金報道のその後である。現在の道新は、道警に完全に屈服しており、報道に関わった記者らは左遷、また警察情報は、道新以外のメディアに順番にリークされ、他紙はそれをスクープとして報道している。しかし、道新は、嫌がらせを受けている、というものである。

 警察による陰湿なメディア攻撃の事実を、今の道新は伝えることができない。

 

 
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