秋元札幌市長、言葉だけで「クリーンな五輪を!」と言っても、既に誰も信用しない。東京オリ・パラは、アへの「アンダー・コントロール」という噓から始まり、今は利権まみれだったことがはっきりした。次に、何が出てくるのか、関係者で肝を冷やしている輩もいることだろう。それなのに秋元与党の札幌市議会立憲民主党は何故反対しないのか?
『土地は誰のものかー人口減少社会の所有と利用』(五十嵐敬喜著 岩波新書 2022年刊) その2 明治維新 財産権 治安維持法
前回、この国の資本主義社会に10%の亀裂が入っていると書いた。ではなぜ、空き家、不明土地、マンションの廃墟化が生起しているのか。本書は、その理由について明治なって個人の絶対的土地所有権(財産権)が確立したことにあるという。
○明治維新
「廃藩置県」によって、封建的土地所有を解体し、幕府や藩(農民、都市住民の土地も)の所領をいったん天皇に帰属させた(土地の国有化)。
次に「地券制度」において、地券(所有を証明する登記簿のようなもの)を発行し新たな土地所有者を確定した。さらにこの土地には、相続、売買、流質による所有権の移転も認めた。ここに近代的所有権が認められ「財産」を持つ国民が誕生した。これは、これまでのこの国の歴史では無かったことだった。
法律上の位置づけでは、明治憲法(1889(明治22)年)において、第27条第1項「日本臣民ハ其ノ所有権ヲ侵サルルコトナシ」で、絶対的所有権を保障した。ただし、第2項「公益ノ為必要ナル処分ハ法律ノ定ムル所ニ依ル」で、災害、公共事業、軍事など公の活動に資す場合を例外とした。
さらに、明治民法(1898(明治31)年)でも同様の規定とした。第2次大戦後の昭和民法と比べると、その特徴は、長男がすべての財産を相続する「家督相続」を原則とすることにあった。
明治は、絶対的土地所有権が確立したターニングポイントであったが、相続の観点から見ると、長男がすべての財産を相続するという極めて単純な制度であった。ところが、戦後の民法改正によって、「平等相続」と変わり配偶者や兄弟姉妹で財産が分割されることになり相続関係が複雑化した。これが、現在の空き家、不明土地の発生、マンションの廃墟化の原因なのである。
僕は、この私有財産制度に亀裂が入っている事態から、治安維持法(大正14年)を想起した。第1条は「國体ヲ變革シ又ハ私有財産制度ヲ否認スルコトヲ目的トシテ結社ヲ組織シ又ハ情ヲ知リテ之ニ加入シタル者ハ十年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ處ス」「前項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス」とある。
戦前において思想弾圧に使われたこの法律は、その取り締まりの対象を「私有財産制度の否認」としている。何ということなのだろうか。この国の現状は、誰かが主張を掲げて運動をした結果ではなく、国民一人ひとりの小さな判断の結果なのだ。まさに私有財產が放棄されている。
さらに、もう一つの取り締まりの対象では「國体の變革」、国体すなわち天皇制の否定だ。こちらも反天皇制などを主張した運動の結果ではない。ただ、天皇家に世継ぎが少なくなっている状態、僕が思うには生物学的な節理から避けられない危機を迎えているのだ。
今僕らは、何か非常に危ういところに立っているような気分だ。