2019もこのブログ、極私的備忘録ですが、読んでいただきましてありがとうございます。「ウソから始まった五輪」の年、2020がグダグダになるであろうことを祈念して本年を閉めたいと思います。
「寄り添いながら」、「丁寧に説明する」・・内実の無い空虚な言葉が多用されています。少なくてもこれらを口にする人は疑ってかかった方がいいと思います。
『沈黙する知性』(内田樹、平川克美著 夜間飛行 2019年刊)
今や売れっ子の2人に僕が最初に出会ったのは2004年、往復書簡(メール)集『東京ファイティングキッズ』(柏書房)だった。血湧き肉躍るキレッキレの言葉たち、オリジナリティあふれる思想、世の中にこんな軽妙なやりとりができる関係があるのだろうかと衝撃を受けたことを覚えている。
ただ、あれから15年、ファイティングキッズも少々スタミナ切れ、かつてのような弾みが感じられない。それを一方的に作者のせいにするわけにもいかないのは、読者である僕の方にも感受性の劣化があるからだ。
本書は熟練者による対談だ。お互いの考え方の違いをわかりあっている関係だから、べったりではなく絶妙な距離感を保ちながら、作品としての対談を作っている。プロの技は今もなお健在だ。
さて、他者の対談は横に置き、僕自身が日常において友人たちとどういう話題について、どういう質をもって話しているのかと振り返るといささか自信がない。僕の欠点はおそらく、自分が見つけたユニークな視点とやらを自慢気に語り相手の反応をみたいという一方通行なところだと思う。「どうだ、俺って凄いだろう」という顔をして。僕は鼻持ちならぬ嫌な野郎だ。
ただ、僕が最近大いに感動した言葉は、友人が吐いた「僕はスポーツ選手のさわやかな笑顔が嫌いだ」というものだ。このフレーズは99%の人を向こう側に追いやるような言葉ではないか。人前ではあまり口にできない言葉、タブーに属すると思われる話題、そういうことを言わせることができるのが僕の持つ小さな取り柄じゃないかなと思う。