晴走雨読

晴耕雨読ではないが、晴れたらランニング、雨が降れば読書、きままな毎日

保坂正康 『あの戦争は何だったのか』

2015-02-28 21:30:21 | Weblog

 2月22日の朝刊に、「防衛省が、内局の背広組(文官)が制服組自衛官より優位を保つと解釈される同省設置法一二条を改正する方針を固めたことが分かった。自衛隊の部隊運用(作戦)を制服組主体に改める「運用一体化」も改正法案に盛り込む。背広組優位からの転換となり、背広組が制服組をコントロールする「文官統制」の規定が全廃される。制服組や制服OBの国会議員からの強い要求を受け入れた形」という報道があった。マスコミは、川崎市の少年事件を細部にわたってトップニュースで扱っているが、僕はこれは相当重大なニュースだと考える。

 気が付けば、ひとつひとつ「戦後改革」の成果が崩されている。自衛隊創設、集団的自衛権、赤字国債発行、国債の日銀による引き受け、独禁法緩和、人材派遣、持ち株会社解禁、

 

 『あの戦争は何だったのか 大人のための歴史教科書』(保坂正康著 新潮新書 2005年刊)                

 知人からいただいた一冊。保坂氏は北海道出身、氏は数多くの著作をあらわしているが今まで読んだことがなかった。僕の先入観としては、保坂氏、それに半藤一利氏、両氏とも読んだことが無いが、共通して彼らには何か胡散臭さを感じている。

 本書で、著者は「あの戦争は何だったのか」と問い、戦争に舵を切ったのはいつからなのか、戦前の意思決定過程のあいまいさ、陸軍と海軍という組織間の不協和音、見通しなき戦術、根拠なき精神主義・・を縷々語るが、これらはこれまで数多くの識者によって指摘や分析されてきたことを繰り返しているだけである。そして著者は、これらは今もこの国を覆っているのではないかと警鐘を鳴らす。

 最近の僕は一冊の本を読むとき、そこから何かひとつでも掴むことができれば、考えるきっかけになれば、それでいいと思っている。

 本書は、大変読みやすく、一気に読み進めることができたのであるが、結局、著者は自身の思想を何も語っていないと感じる。著者の過去や現在の歴史や事象に対して向き合うスタンスが見えないのである、肯定の質も否定の質もどこか緩いのである。実話読み物なのである。それなりに面白かったなあで終わってしまうのである。

 あの戦争を分析している著作では、『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』(戸部良一他著 ダイヤモンド社 1984年刊)が僕にとってはベストでありこれを超える著作を読んだことが無い。

 

 

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戦後70年の首相談話

2015-02-15 16:36:23 | Weblog

 今日の昼食は、新発売された、マルちゃん「焼きそば弁当」濃厚甘口。相変わらず美味い。カップヌードルとインスタントラーメンは、年に何回か食べます。その度に、浪人時代に出現したお湯の出るカップヌードル自販機、アルミの鍋焼きうどん鍋で即席ラーメンを作って卵を入れるのが贅沢だったことを思い出します。僕には、忘れてはいけない食べ物です。

 昨日(土)は、営業で走れなかったので、本日午後から飛び出しましたが、あまりの猛吹雪に途中で断念しました。冷たい強風に向かって長時間走ると体温が奪われて凍死しかねないことが創造できました。

 

 戦後70年の首相談話

 夏に発表する戦後70年の首相談話をどのような表現にするかで、政府と野党、与党内、マスコミも含めてしのぎあいの議論にエネルギーが費やされている。僕は、アへ首相には彼の好きなように、地金の部分、持っている歴史認識を包み隠さず言わせた方がいいと考える。そして、国際的な評価や後世の人たちからの歴史的な評価を受けるべきと考える。

 もう一つは、野党のとるべき戦略である。野党やマスコミは、政府案を部分的に批判するのではなく、堂々と独自のラジカルな戦後70年談話を発表すべきと考える。各野党、また進歩的と言われてきた新聞や雑誌、革命党派は、その世界観や歴史観をこの際きちんと披瀝し、アへ談話が良いのか、どれが良いのか、国民と国際社会の評価を受けるべきと考える。

 特に、民主党はもう一度政権を執るためには、党内をまとめた談話を発表し、国民になるほどと思ってもらう大きなチャンスと捉えるべきである。

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清水正之 『日本思想全史』

2015-02-11 20:01:05 | Weblog

 アスペンホテルの日替わりランチ(コーヒー、デザートが付いて1,200円)は、いつも賑わっています。

 今日、2月11日は神武天皇が即位した日として戦前は「紀元節」、現在は「建国記念の日」として祝日である。報道によると各地の集会では、毎年同じように一方は憲法の改定を叫び、もう一方は、平和を守れと主張している。しかし、僕はそのいずれもが歴史の虚構を前提とした議論ではないかと考える。その根拠の一つは、以下の著作からも明らかである。

 『日本思想全史』(清水正之著 ちくま新書 2014年刊)

 本書は、神話時代から現代までの2000年にわたるこの国の人々の思想を網羅している。神代から読み進めていくとあたかも壮大な歴史ドラマを見ているような気分になる。新書ながら400ページを超える著者清水氏による渾身の力作である。

 最近の僕は、一冊の書物を読んで何かひとつでも心に残ることがあり、考えるきっかけがあればそれで良いとしている。

 日本思想史上の初源と先端(吉本隆明の言葉から)を考えると、歴史における初源、最初の成り立ちのところが解明できるということは、先端すなわち現在から未来を見通すことに繋がるということになるのだが、この国において決定的なことは以下の本書からの引用に書かれている。

 (P23引用)「五世紀まで文字をもたなかったこの列島のあり方は、まずは他者すなわち中国の書物に記載されるというかたちで、初めて文字化された歴史に登場する。歴史上のある時期まで、他者のまなざしを通してしか、その起源をうかがうことができなかったということは、今に至るまでの日本の思想文化の深部に関わる問題であろう。」

 僕は、数学のベクトル ↗ を連想する。起点と終点が直線で結ばれ、その方向を先端の矢印が示す。この国の歴史は、この起点を自ら定めることができない、かろうじて他者が遠くから見てこのあたりなのではないかと、それもわずかな記述でほとんど関心など無いような不確かな記述しか無い。そんな霞の中にあるような歴史の初源なのである。

 この出自は、先端としての現在の思想を不透明にする。本書の記述も戦後になった頃から、明らかに論点が不明瞭になる。これは、著者のせいではない。現在の思想界で何が論じられているのか、何が思想のテーマなのか、否、哲学、社会学、言語学、倫理学・・と細分化された学問にそもそもそれを貫くような思想などというものがあるのだろうか、そこに原因がある。そして、当然、先端の示し方向、この国の未来など見通すことはできない。

 本書は思想史の通史として本当に素晴らしいと思う。著者は自分の視点を貫きながら、よくぞここまでまとめあげたものだと思う。断片的な関心と知識しか無い僕にとって、頭の中に思想の見取り図ができるようなスッキリ感をもたらす良書である。そして、多くの方に推薦したい!

 

 

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退職の挨拶

2015-02-08 14:42:44 | Weblog

 土日、週末ランができました。今日は朝から2℃と温かく、でも昼くらいから雨になるという予報だったので、9時前にライイニングを開始、しかし45分くらいでみぞれ、その後雨になり、びっしょり濡れました。13kmほど走りましたが、意外とこういう時は風邪をひくことはありません。

六花亭、今月のケーキです。500円は500円相当の値だと思います。

 

 退職の挨拶

 僕は、あと2か月を切り、3月末で今の会社を定年退職します。先日は、以前に職場を同じくした同僚から退職を祝う会を催していただきました。その際行った挨拶(要旨)を掲載します。

 皆さん、今日は大変お忙しい中、このような会を催していただきましてありがとうございます。皆さんとは、会社の創立○○周年を記念した頃に、同じセクションで一緒に働いてからですからかれこれ○○年くらいお付き合いいただいたことになりますが、それ以来、何かとお世話になってばかりで、いつも頼り切っていたように思います。本当に感謝申し上げます。

 僕は、本当は少しゆっくりして、今の自分は何がしたいのか、そして何ができるのかを考えてみたいと思っていましたが、自分で言うのははばかれますが、今の僕を求めてくれる、必要としてくれるというお話がありましたので、その様なことを選択したところです。

 まあ内実としては、61歳まで半年以上無年金状態で、少し年金が出たとしても65歳までは生活の経済的な目処がしっかりしていないということもありますが・・

 今日は、ありがとうございました。今後とも、皆さまのご指導ご鞭撻、そして今後ともご贔屓のほどよろしくお願いいたします。

 

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野党は外交で活路を開け

2015-02-05 20:28:17 | Weblog

 野党は外交で活路を開け

 アへ首相の暴走が止まらない。日本人がイスラム国に囚われているのに不用意なイスラエル訪問時の発言。大失政のはずなのに、野党は詰め切れない。反対にアへはこれを憲法9条改正、自衛隊派兵の契機に利用している。もう誰にも止められない。政治に関心を失って久しい僕も、ニュースを見るのも嫌になっていて、アへを見ると吐き気を催す。

 米国には同盟国としての日本が軍事化することを期待している考え方と、反対に日本の動きに対して警戒感を持つ考え方があると思う。今回のイスラエル訪問は、米国の一部の強い意向という見方もある。中国、韓国、台湾、北朝鮮、ロシアなど周辺国は、近年の日本の動きに対して神経を尖らせている。随分と外国に出掛けることの多いアへ首相だが、アジア周辺国との関係構築については、全く無策である。いや、アジアを蔑視しているようにも伺える。また、今回のイスラム国との交渉もしっかりと窓口や人脈が無いため、どの程度正確にやり取りがされていたかも極めてあやしい。

 一方、この動きに対抗すべき野党も全く持って無策である。アへの動きを黙って見ているしか無く、打つ手も無かったくせに、今頃アリバイ的に追及して見せてはいるが、対抗する理論も方法も見出せないでいる。

 アへ政権の弱点は外交にある。対外的に信頼感を構築できない。パイプが限られている。僕は、野党の活路は外交にあると考える。どんどん野党外交で人脈を作ればいい。近々にうちにアへはアジアとは手詰まりを起こし、米国からは暴走にストップのサインが出されると思う。その時に必ず出番が来る。民主党代表になった岡田は確か外務大臣をやった人だ。外務省の中に今の動きに危惧を覚える官僚がいれば、水面下で協力を得ながら対外的な関係構築に動けばいい。

 財界だって、巨大市場である中国との関係は重要視しているはずである。政治的には対立しているように見えるが、人の動きや貿易は既に中国抜きには成立しない。財界の意向もしっかりと受けて、外交から政治的な活路を見出すことができると考える。

 国民国家が黄昏を迎えている情況の中で、国家の枠組みを超える構想をどの野党が提示できるだろうか。ドメスティックな票の奪い合いだけで一喜一憂していても展望は見えない。民主、維新、共産・・まさかSGI(創価学会インターナショナル)の公明? エッマジに4トロ?

 

 

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奥泉光 『東京自叙伝』

2015-02-01 15:13:08 | Weblog

 朝から、拘束されていた日本人が殺害されたとして国を挙げて非難している情景がある。政党レベルでは、全党が翼賛しているようでこの国の潜在的に持っている危うさを感じる。イスラム国とは何なのか、国民国家を超えた別の何かなのか、知りたいと思う。

 

 『東京自叙伝』(奥泉光著 集英社 2014年刊)

 新聞各紙、年末の書評欄で大絶賛、紀伊國屋書店でも品切れが続いていたが月末になってようやく入手。でも奥付には「二〇一四年五月一〇日 第一刷発行」とあり、とくに増刷をしていたわけではないということがわかった。

 舞台は明治維新から2011.3.11までの東京、主人公は東京の地下に棲む地霊。その地霊が、現在まで生きる実在する6人の人物に乗り移り、維新、関東大震災、第2次世界大戦、バブル崩壊、地下鉄サリン事件、福島第1原発事故とすべての出来事に関係する。関係するというより、それらを引き起こしたのは私であるという。

 かつてない発想を持った小説だとは思う。400ページを超える大作であるが、中途は少々間延びする。主人公間の因果があまりにも不自然に結びつき、読者の鼻についてくる。私から見た東京で、一人称で書かれた表現は一本調子。未読だが、三島由紀夫の遺作「豊饒の海」4部作も主人公の魂が次から次へと乗り移る、奥泉氏の発想はそこからいただいたのかな。

 テーマが欠落していることがこの小説の一番の弱点である。東京をどのようにとらえようとしているのか。ただ歴史的な事件をなぞっているだけではだめだと思う。東京はどのようなのか、どのようでなければならないのか。はっきりと衰退に向かっているとか、飽和状態だとか、都市の葛藤だとか、中心テーマを掲げるべきであった。

 

 

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