藻谷浩介氏が今日の道新朝刊(2.26)で、鉄道はJRが維持管理費を負担しているのに、道路には公費が投入されていてイコールコンディションではない、しかるに鉄道にも公費を導入すべきと主張している。僕も結論は同じだが、藻谷氏が触れていないことがある。それは、道路特定財源のフレームである。かつて『我田引水』ならぬ『我田引鉄』という言葉があった。政治家にとって、駅の建設、鉄路の延長は票の成る木であった。さて巧成り名遂げるのは誰だ!
戦後左翼史その44 1959(昭和34)年 安保改定阻止国民会議 『現代の理論』 砂川事件(伊達判決)
(★印は日共関係)
1月 『共産主義者』(~59.11)、思想の科学研究会編『共同研究 転向』(講談社、全3巻、~60.1)
1.1 キューバ革命軍、バチスタ政権を打倒(キューバ革命)
★1.3 全日自労主唱「戦争と失業に反対する国民大行進」出発(大牟田)、3.4東京着
1.27 ソ連共産党第21回大会、競争的共存下における「共産主義の全面的建設期」を規定
*(れんだいこHPに学ぶ)経済発展7カ年計画(1959~65)で「1970年までに、工業生産の絶対量でも人口一人あたりの生産高でも米国を追い越し、世界最高の生活水準を達成する」を目標。1.23~3.9日共代表団(団長宮本書記長.団員春日正一、西沢富夫)は、党大会出席のため訪ソ、2.9スースロフ、クーシキンと会談、将来の民主政府のもとでの南千島返還で合意、帰途チェコスロバキア、朝鮮、中国を訪問。
2月 共産主義者同盟「全世界の獲得のために」『共産主義』第1号
*(れんだいこHP)佐伯(東大卒、山口一理論文執筆他)、青木昌彦(東大卒、現経済学者、姫岡論文執筆)、生田浩二、大瀬振、陶山健一らが論客。
2月 吉本隆明『芸術的抵抗と挫折』未来社
2.9 強制連行された中国人劉蓮仁、戦争末期以来逃亡中のところ「発見」
3月 黒田寛一『現代における平和と革命』現代思潮社
3.9 社会党代表訪中、浅沼書記長「アメリカ帝国主義は日中共同の敵」声明
*(れんだいこHP)3.4第二次訪中使節団(団長浅沼書記長)勝間田清一、岡田宗司、曽弥益、中崎敏、佐多忠隆、田中稔男。
*(*は僕の考え)僕は、現在の野党が活路を開くには外交でオルタナティブを提起するしかないと主張してきた。現在に比較すると、当時の日共、社会党の外国訪問を評価したい。政府が出す情報を鵜呑みにせず、別の外交ルート、人脈の構築の努力をしていた。南千島に係る当時のソ連と日共の合意は、現在の日ロ交渉では日共は完全に蚊帳の外にされているが、こういう合意は日共が外交において独自の見解を発する根拠になりえるはずである。
3.15 『朝日ジャーナル』創刊(84.4.13より『Asahi Journal』、~92.6.30)
3.28 総評・社会党ほか、安保改定阻止国民会議結成
*(れんだいこHP)総評、社会党、中立労連、全日農、原水協、平和委、基地連、日中国交回復、日中友好、青年学生共闘会議など13団体が中央幹事団体。全労、新産別は不参加、日共はオブザーバー参加。日共は、安保改定を「日本を米国の犠牲にする売国条約」であり対米従属が一層深まるとし、日本独占資本の帝国主義的復活に基づく自発的行動の側面を無視した。(安保問題特集号5.16)
3.30 東京地裁砂川刑事特別法裁判、日米安保条約違憲判決(伊達秋雄裁判長)
*(れんだいこHP)「政府が米軍の駐留を許容したのは、指揮権の有無、出動義務の有無に関わらず、日本国憲法第9条2項前段によって禁止される戦力の保持にあたり違憲である。したがって、刑事特別法の罰則は日本国憲法第31条に違反する不合理なものである」とした。「米軍駐留は違憲」、刑事特別法は無効と全員の無罪判決(東京地判昭和34.3.30 下級裁判所刑事裁判例集)。検察は最高裁判所へ跳躍上告。
4.13 ジュネーブで日朝赤十字会談開始、8.13カルカッタで在日朝鮮人帰還協定調印、12.14第1回北朝鮮帰還船出発
★5月 『現代の理論』(第1次)創刊(~10)(*大月書店)
*(れんだいこHP)第1号(59.1)佐藤昇「社会主義権力の矛盾」、日高六郎「マルクス主義者への二、三の提案」、不破哲三「日本の憲法と革命」、田口富久治「ネオ・ファシズム」、今井則義「国家独占資本主義論における二つの潮流」。第2号表題「現代帝国主義」、杉田正夫、上田耕一郎、富塚文太郎、遠藤湘吉、井汲卓一、古在由重、増島宏。6.26アカハタ「マルクス・レーニン主義党の破り難い原則-雑誌『現代の理論』をめぐって」で「雑誌の刊行は既に中止されているにも関わらず、党内の一部には、中委の決定に反対しているものがある」、「前衛党の中委とは別個に、特定の党員(個人や集団)が、マルクス主義理論誌を刊行し、理論の発展をはかるというのは、根本において誤りである」とした。8.17アカハタ「主張-雑誌現代の理論について」で「このような性質の刊行物を党員が出し、又党員がこれに参加すること」を「即座に中止すべきである」と指示。9月第5号で廃刊。
7.7 上原専禄・清水幾太郎ら安保問題研究会結成、10.17藤山外相公開質問状、11.7回答
7.21 自民党、安保反対を表明した日本原水協を批判、府県助成金打ち切りを指示
8.7 中印国境衝突
9月 吉本隆明「転向ファシストの詭弁」『近代文学』、『中央公論』緊急増刊「松川事件特集号」
9.10 総評、炭鉱失業者救援の黒い羽根運動開始
9.30 フルシチョフ訪中、対立激化
10月 対馬忠行『ソ連「社会主義」の批判』論争社
11.9 中島健蔵・松岡洋子・亀井勝一郎ら安保批判の会結成
11.27 安保改定阻止第8次統一行動、デモ隊2万人国会構内へ
*(れんだいこHP)全国700の共闘組織、350万が参加。清水丈夫書記長(現、中核派指導幹部)、葉山岳夫(現、弁護士)、糠谷・加藤副委員長らに逮捕状。11.28 党声明「第8次統一行動に対する自民党岸内閣の弾圧と謀略を粉砕せよ」で「反共と極左冒険的行動を主張していたトロツキストたちは、右翼の暴行や警官の弾圧などによって緊張した状況を逆用して挑発的行動及び統一行動を乱す行為にでた」と批判。中国人民世界平和保衛委員会は、「日本の安保阻止行動は、日本人民の闘争のたかまりを示しており、日本軍国主義の復活に反対し、米日軍事同盟に反対する意思を力強く表明している」(12.1北京放送)と評価した。
12月 白戸三平『忍者武芸帳』第1巻、三洋社
12.11 三井鉱山、組合に指名解雇通告(*1,200名)、三池争議始まる
12.16 最高裁、砂川一審判決を破棄
*(れんだいこHP)「安保条約は高度の政治判断の結果。極めて明白に違憲と認められない限り、違法審査権の範囲外であり司法判決にはなじまない」とした。
*戦後左翼史の1940年代前半から1959年までは「その29~その44」で終える。使用した年表は、『戦後日本スタディーズ 全3巻のうちの第1巻「40・50」年代』(岩崎稔・上野千鶴子・北田暁大・成田龍一編著 紀伊國屋書店2009年刊)に掲載されている道場親信氏の作成である。「その45」は、「その28」に続くかたちで、1966年からを対象に再開したい。