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柳原滋雄 『実録 白鳥事件―「五一綱領」に殉じた男たち』 白鳥一雄 村上国治 日本共産党 男沢哲男

2024-04-03 12:46:16 | Weblog

このブログを始めたのが2006年4月。19年目に入った。51歳から69歳になった。当時はブログが盛んだったと思う。今は短くつぶやきささやくのが流行りらしい。読み返してみると体内の毒が減っていることに気付く。備忘録として始めたが、今は脳トレになっている。読んでいただいている方に感謝したい。

 

『実録 白鳥事件―「五一綱領」に殉じた男たち』(柳原滋雄著 論創社 2023年刊) 白鳥一雄 村上国治 日本共産党 男沢哲男  

白鳥事件は、戦後の混乱期を象徴する興味深い出来事なので、これまでこのブログに、2013.5.6にHBC開局60周年記念番組『インターが聴こえない~白鳥事件60年目の真実』(2011.3.27放送)、2013.5.19に『白鳥事件 偽りの冤罪』(渡部冨哉著 同時代社 2013年刊)、2014.12.25に『私記 白鳥事件』(大石進著 日本評論社 2014年刊)と書いてきた。 

また、先日2024.3.30に放映された、「NHKスペシャル未解決事件File.10『下村事件』」も同時期に起きた謎の多い事件だ。

本書で著者は迷いなく冒頭のプロローグからこの事件を「冤罪を装った殺人事件」(P3)と断定して記述をスタートする。すなわち白鳥警部を殺したのは日共の組織的犯行であり、村上国治被告が主張する冤罪説は虚偽だとみなしている。事件後70年以上経過しているため関係者が亡くなっていて聞き取りなどは制約があると思われるが、本書において事件に関する新たな事実などは書かれていない。また、著者独自の推論もない。ほとんどが類書からの引用で構成されている。従って、僕は本書を周りの人に薦める気持ちはない。

強いて言えば、白鳥の生い立ちを描いているところが特徴だ。その中で、帯広中学(旧制)で白鳥と「同じ剣道部に所属した男沢哲男の証言」(P52)という記述が出てくる。ここは、僕の個人的なことだが、この男沢先生から僕は釧路の高校で古典の授業を受けた。懐かしい記憶だ。

本書には表現に粗な箇所が散見される。例えば、

・「現在の比布駅は車掌も常駐しない小さな駅だ」(P6)。無人駅と言いたいのだろうが、駅に常駐するのは車掌ではなく駅員だ。

・「年末には農村工作隊を編成」(P38)は、山村工作隊の誤りだろう。日共関係の書籍を刊行するにしては基礎的な知識が不足しているのではないか。

・「1939(昭和14)年発行の・・・によると、・・新潟または敦賀から北朝鮮の羅津港までの・・・北朝鮮経由ルート。・・下関から釜山までの・・韓国ルート」(P65)。当時は、北朝鮮も韓国も建国されていない。朝鮮半島北部、南部と表現すべきだろう。

・「関東軍(旧日本陸軍)」(P66)に“かんとん”とふりがなされている。かんとん軍というのは聞いたことがない。かんとう軍の誤りだろう。

そして、最後のくだりにある「イデオロギーの対立を除いて虚心坦懐に向かい合い、腹を割って話し合ったら、二人は理解し合える関係になったと私はこれまでの取材で痛感してきた」(P280)。僕には著者が何を言いたいのか全く理解できない表現だ。そもそも白鳥と村上が、警察と党という関係抜きに会うという場面が想像できない。

本書には描かれていないが、僕が白鳥事件を考える上でのポイントは、①実行犯は誰なのか。日共関係者なのか、権力の謀略なのか。証拠とされる銃弾、関係者の証言などが分析尽されているのか。

②日共の歴史的正統性の問題。「五一綱領」およびその方針のもと運動したことが現在の日共の歴史から抹消されていること。出獄直後の村上を日共は支援していたが、その後距離をとったこと。村上はアルコールに溺れ、最後は火災で亡くなっているが、その心の中はどうだったのか。事故死なのか、自死なのか。

かつて(2014.12.25大石進著『私記 白鳥事件』)このブログに書いた「この事件が代表するように日共は、これまで、革命という大義のもと不幸を強いられた党員、シンパに対し真摯な総括をしていない。党が分裂していた時代の一部の分派がやったことと党史にも記載されず、歴史の証人になりえる関係者は中国に追っ払って口を封じ、彼らの帰国後も知らん顔を決め込んでいる。党員の人権すら大事にできない党が、国民の人権についてどのような顔をして議論できるのであろうか。戦後の日共史上の白鳥事件、また伊藤律事件などの総括無しに、日共は政権も獲れないし、政権に近づくことも許されないと思う。」という考え方は変わっていない。

 


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