晴走雨読

晴耕雨読ではないが、晴れたらランニング、雨が降れば読書、きままな毎日

加賀乙彦 『雲の都』

2007-02-11 14:23:38 | Weblog
 とても穏やかな日曜日、読みかけていた本を最後まで読みきることができました。

 『雲の都 第1部広場』(加賀乙彦著 新潮社2002年刊)

 数年間の空白を経て、加賀の自伝的長編小説が再開していた。以前読んだ、『永遠の都』(新潮文庫全7巻)では、戦前の東京で外科医を開業していた加賀の祖父をモデルに一族の運命を描いた。

 この小説から、時代は戦争向かっていたが、中流層の生活はそれほど変わらずにそれなりに豊かな生活が続いていたことがわかる。戦争に動員されて国外で戦っている者だけが、命がけの運命にあった。

 平和が脅かされ、人々の命が脅威にさらされるのは、戦争の末期、空襲や物資の不足が目立ち始めた頃からであった。

 今日、この国が「戦争のできる国づくり」に向かって一直線に進んでいるが、私達の当面の生活に影響が無いのと同じ様に。

 

 さて、『雲の都 第1部広場』に舞台は、1952年、主人公悠太(加賀自身)は医学生で、セツルメント活動に関わって血のメーデー事件に巻き込まれる。

 集団行動に違和を感じながらも、激動の歴史に流される悠太。『第2部 時計台』は、既に刊行されているが、悠太が死刑囚と対話する姿が描かれる。『第3部 城砦』は、連載中。



 加賀の小説からも時代の空気が伝わるが、戦後は、つねに学生や人々の政治運動があり、それぞれの人生に大きな影響をもたらせていた。人々の虚無的で不気味な沈黙が始まったのは、いつからだろうか。
コメント (2)
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