馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

仔馬の胸膜肺炎

2009-11-02 | 馬内科学

Pa300003

離乳した仔馬の具合が悪いということで診察。

発熱。元気なし。

PCV47%、乳酸値5.1mmol/l。

口粘膜は紅潮。

チアノーゼあり。

当初、胃潰瘍穿孔かと思ったが、腹水はなPa300004い。

左上の超音波画像は左腹壁から。

脾臓と、液状内容を入れた小腸。

左の超音波画像も蠕動が落ちていると思われる小腸。

疝痛はほとんどない。

What's your diagnosis, and next plan?

      -

Pa300005_3 胸腔を超音波で観ると・・・

胸水がある。

その中に浮いている三角の臓器は肺だ。

普通は含気していて表面しか見えないが、完全に無気肺になるとまるで肝臓のように描かれる。

胸膜肺炎を起こしているようだ。

おそらく原因菌は

Streptococcus zooepidemicus

Pa300007咽頭や膣前庭や体表の常在菌なのだが、ときとして肺炎や子宮内膜炎や膿瘍を起こす。

胸水の中にはフィブリンも揺れている。

胸水を抜いて抗生物質を入れる。

抗生物質は全身投与もする。

輸液や消炎鎮痛剤も必要かもしれない。

- -

珍しいのだが、仔馬や育成馬が胸膜肺炎を起こすことがある。

輸送熱と呼ばれる、輸送後の競走馬の胸膜炎と同じ病態だと思われる。

しかし、今までの経験では競走馬の胸膜炎より経過も結果も良いように感じている・・・

                                                                  ---

Dsc_0007Dsc_0014

Csc_0016 Dsc_0006


4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
よく見えるエコーですね。 (zebra)
2009-11-03 07:35:49
よく見えるエコーですね。
エコーは静止画にすると結構わかりずらくなると思うのは私だけでしょうか。

胸膜炎は肺炎の延長としてストレス因子が大きくなった際に展開しやすい病態なのでしょうか。
この症例は肝変化していると思うのですが、範囲としてはそれほど大きくはなかったのでしょうか。
無気化してしまった肺は肝臓と違って再生しないわけですが、あまり問題視する必要もないのでしょうか。

雪は降りませんでしたか。
疑問形ばかりですみません。
返信する
>zebraさん (hig)
2009-11-03 08:20:39
>zebraさん
 動画はそうですよね。静止画にすると見えなかったりします。これからデジタル技術で向上していくのかもしれません。超音波装置はもう古いものです。

 strept.zooepidemicusの肺炎がどういうわけだか胸膜炎へ移行しやすいのだと考えています。
 このときは無気肺の範囲は大きくないと判断したのですが・・・・悪化したのか、数日後に剖検したときには生きていたのが不思議なほどでした。

 今朝は氷が張っています。驚きましたが、もう11月ですからね。
返信する
トレセンでおこなわれているようなBALを用いた (tomo)
2009-11-03 16:44:02
トレセンでおこなわれているようなBALを用いた
肺胞洗浄はこのような症例でもトライできるのでしょうか?

それともここまで全身状態が悪い時にはリスクが高すぎますか?

返信する
>tomoさん (hig)
2009-11-03 17:37:27
>tomoさん
 BALはやってみることはできると思います。ただ、輸送性肺炎とは少し様子が違うかもしれません。右後葉前部(下垂部)に病巣は限局していないように思います。また、すでにメインの病巣は胸膜腔に移ってしまっているように思います。効果は期待できないように思います。
返信する

コメントを投稿