馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

子宮穿孔と腹膜炎で補助療法が必要なこともある

2021-04-19 | 急性腹症

前日、7時間がかりの橈骨尺骨骨折の手術をしたのだそうだ。

それで、予定の手術が翌日に延ばされていた。

そんな朝、分娩後3日目の繁殖雌馬が不調で腹水が採れた、との依頼。

もう70の獣医さんなのだが、たいしたものだ。

ちゃんと初診でほぼ確定診断をつけてくる。

(若い獣医さんたち、しっかりしろよ;笑)

すぐ来てもらって、予定の関節鏡手術が終わってからやることにする。

馬運車から降りて歩いてくるのを観ていると、子馬は飛び跳ねながら、母馬は頭が下がりトボトボと。

PCV57%、WBC9800/μl。

牧場で採った腹水を持たせてくれたので検査すると、白血球数74880/μl。

フリーの細菌はほとんどないが、貪食像があり、好中球多数。

腹膜炎が極度に重度とは思えないが、脱水がひどい。

子宮内の触診で左子宮角の穿孔が確認された。

腹腔ドレナージをして、開腹手術まで持続点滴を始めた。

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関節鏡手術が終わった馬があっちで寝ている。

手術室では子宮穿孔修復と腹腔洗浄の開腹手術を始めた。

開腹手術が始まったら、倒馬室では子馬の肢軸異常の手術を始める。

             ー

私は開腹手術担当。

子宮角先端の閉鎖は楽勝。

どういう訳か痩せた馬だし、腹圧も高くないので腹腔洗浄も楽だった。

母馬は1時間あまり寝ていて、落ち着いてゆっくり立ち上がった。

入院厩舎へ入れたら水を飲んで、食欲もある。

乳は出ていない。子馬が何度も吸いに行く。

子馬は哺乳ビンでミルクをガブガブ飲む。よほど腹が減っていたのだ。

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腹水からはE.coli が分離された。

なるほど、それでエンドトキシン血症の症状が強いわけだ。

翌朝は体温39.1℃。

腹水はかなりの量が溜まっていた。

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その午後から体温は平熱になった。血液検査所見も改善された。

翌朝、抗生物質感受性検査の結果が出た。

カナマイシンはダメ。セフチオフル(エクセネル)は大丈夫。

全身投与はエンロフロキサシンに替えた。

腹腔ドレインは、腹腔洗浄して、セフチオフルを入れて抜去した。

退院だ。

                  /////////////////

きみたちは元気でいいね

 

 

 

 

 

 


3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Unknown)
2021-04-19 07:23:14
 連携、大成功例ですか。
 全身状態と子馬の観察、抗生物質の感受性検査の実施と薬剤選定
 Nippon AMR One Health Reportが1月にでていました。今朝はそれを復習。どこかにだれかがグラフにしていました。NIIDのサイトにあったかなぁ

オラ君へのキャプション2連発から浮かびかけけは消える歌「だれかが風の中で」確定(?)まで3日もかかるなんて
 フルコーラスご存じの方は高齢の部類と自任してよいと思います。
 
 先生方もたまには健康な馬に会うのがいいと思います。
 老若男女、今日も良い日になりますように。
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Unknown (はとぽっけ)
2021-04-19 07:40:40
↑「名前」消えてました
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>はとぽっけさん (hig)
2021-04-19 20:43:29
牧場できちんとやるべきことをやってくれているとたいへん助かります。準備をする上でも、治療をする上でも。

事故馬ばかりみていると健康っていいな、と思います。
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