競走馬にするのをあきらめたが、繁殖にするにもこのままでは球節が前へ抜けてしまう。
筋肉を弛緩させる薬を長期間内服させたり、ロッカーシューを着けたりしたがあまり効果はなかったようだ。
-
浅屈腱はエビ(浅屈腱炎)になる腱なので、切ってしまうと競走馬にはなれない。
浅屈腱は浅屈筋の力を繋にある第2指骨の掌側へ伝えている。
途中には、支持靭帯があり、腕節の近位で橈骨にくっついている。
この支持靭帯を切ると、浅屈腱が緩むとされているが、深屈腱を緩めるための深屈腱支持靭帯の切断に比べると、浅屈腱の支持靭帯切断の効果は弱いようだ。
それで、競走馬をあきらめるなら、浅屈腱そのものを切ることにした。
-
鎮静して、high 4 points で神経ブロックして、切開部位は浸潤麻酔もして、鼻捻子もして、立位で手術することにした。
蹄葉炎馬の深屈腱切断の時は、蹄にヒールブロックを着けると深屈腱を緩めることができ深屈腱を切断しやすいようだ。
浅屈腱のときは、緩めるためには誰かに肢を持ち上げてもらうしかないかもしれない。
骨折手術用の骨起子をプロテクターとして利用して、浅屈腱以外を傷つけないようにして・・・・後は切るだけ。
ジョリジョリ。
と、切ると断端同士が広がる。
ブツン。
と、完全に切れるとさらに断端は大きく広がる。
-
しかし、浅屈腱を切ってみると球節の沈下を支え、繋の角度を決めているのは浅屈腱だけではないのがわかる。
そして、馬の球節を沈下させるのは馬の体重と荷重。
痛くて負重しないと球節は沈まない。
痛みをとりながら、運動させた方が良いようだ。
-
-
-
カワカミプリンセス!
惜しかった。
残念。
しかし、種子骨骨折からは完全復帰・後遺症無し。だね。
浅屈腱の拘縮では、深屈腱の場合とは異なり理論的には単純な厚尾蹄鉄では弛緩は得難いですよね。
個人的には厚尾+蹄尖部を少し伸ばす装蹄で、まず球節の関節面を正常な位置に戻すことが大事だと考えています。
しかし「浅」や「深」の一方だけが拘縮するというより、どんな場合も多少なりとも両方が拘縮していると考えた方が良いのでしょうか。
施術後の写真ではヒザが大分反ったように見えますね。
突球は当歳のときから、両側に起こることが多いですよね。後肢も繋が立っている馬が多いです。この馬も、1歳のときにはこのような状態だったようです。
クラブフットに比べると、装蹄でも、手術でも治しにくいでしょう。
「浅」と「深」のどちらかの拘縮もありますが、両方の馬もいます。そして、繋靭帯や、その他の関節を取り巻く組織も関与しているように思います。
クラブフットの処置も腕節が反らないようにするのはひとつの課題ですね。競走馬になれる馬の場合ですが。