馬が舌を切ってしまうことがある。
子馬や繁殖雌馬ではほとんどなくて、育成馬ばかりだし、競馬場でもけっこうあるようなので、やはりハミで切ることが多いのだろう。
まれに、馬房の中で金属製の鎖や金具をいたずらしていて切ることもあるようだ。
いつも動いており、唾液でぬれたり食物に触れ、組織としても弾力がないせいか普通に縫合したのでは癒合が良くないようだ。
しかし、新しい外科の教科書には縫合の方法が載っている(右)。
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傷をきれいに洗う。
壊死組織を切除する。
深くしっかり組織に糸をかけて、垂直マットレス縫合するのがコツのようだ。
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唾液や食物が縫合面にしみこんでいかないようにきつめに縫合したいが、糸で舌が切れてしまいがちだ。
それで、ステントを使うこともやってみた。
非吸収糸での縫合が教科書では推奨されているが、他の傷と同様、癒合するかどうかは1週間で決まるだろう。
それで吸収性モノフィラメント縫合糸モノクリルも使ってみた。
結果は上々だった。
かなり切れていても、縫合しないでもそれなりに治って、ヘンな形の舌になってもハミ受けが悪くなったりはしないようだという話をきいたこともある。
しかし、左のように切れてしまうと、放っておけば舌が途中から無くなってしまうだろう。
あまり短くなると、ハミを受けられなくなるのではないだろうか?
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余談だが、舌をひどく切っても出血量はそれほど多くないようだ。
時代劇などで、舌を噛んで自害するシーンがあったりするが、あれは嘘のようだ。
人も舌を噛み切っても死ねないらしい。
うまくしゃべれなくなるかもしれないけど。
上の写真くらいの舌の傷を獣医さんが見事に縫合してるのを見たことがあったのですが何日か後には糸が1本も残ってませんでした。舌はまるで豆腐みたいだと誤解してました。(恥)
私も人がやった結果を見て、舌は縫っても癒合しにくいと思っていました。死腔を残さないように丁寧に縫うというより、大きく糸をかけて、大胆にとめることが必要なようです。
それと、教科書にもモノフィラメントの糸を使うように書いてあります。私のところは、プロリーン(非吸収性)かモノクリル(吸収性)を使いました。
写真の酷い外傷の馬はその後はどうなりましたか?
もし、舌の先端部が切れてなくなったら競走馬としてはいかがでしょうか?
本日診ました馬は、舌の先端から約10cmの部分でギザギザに切れてました。傷の深さは不明です。現在傷跡はあるものの癒着してます。暴れた際に、ハート型のハミで切ったようです。
何故か、舌の全周に渡って傷跡がありました。
問題は、舌の先端約10cmの部分が変色して異臭を放ってる事と、先端部は薄くなってる事です。私見ですが変色部は腐敗壊死して脱落するものと思います。
いかように対処しましたらベストでしょうか?
申し訳ないですが、御教授ください よろしくお願いいたします
この記事の写真の馬は2例とも癒合しました。傷が新しいうちにきちんと縫合すれば、千切れそうな舌の外傷も癒合するのだとわかりました。
先生が診られた馬は厳しそうです。傷を新鮮にして縫合してみる方法もありますが、変色、異臭、萎縮となると壊死しはじめているのでしょう。自然に落ちると思いますが、早く治癒させるためにはしかるべきところで切り取ってもいいのかもしれません。傷がギザギザだそうですからどこから切り取るかが難しいかもしれませんね。舌が短くなってもハミ受けや採食に問題は起こらないようです。駄目になったという話を知りません。
写真の馬の傷が癒合したのですか!! 素晴しい!!
オーナー・牧場へのコメントの際参考にさせていただきます。
切除手術は勧めてみますけどオーナー・牧場に抵抗があるようで・・・
ありがとうございました
あれから3日後に、脱落したようでした
私が22日に診たときには「ウイロ」みたいな舌になっていました
馬は平気な顔に見えました(笑)
ありがとうございました
ういろう(外郎)ですね。「白、黒、抹茶、桜、コーヒー、ゆず、etc.」と種類があったと思いましたが(笑)。
時代劇で舌を噛み切って自殺するというのは、誰があんな嘘っぱちを使い始めたのでしょうね。