馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

十二指腸狭窄・閉塞

2006-05-24 | 新生児学・小児科

Photo_86 左の写真、左下の丸いのが胃。そこから右上に内容は流れていくはずなのだが、一旦丸くなったあとくびれるように細くなってしまっている。

これではいつも胃が膨満し、胸焼け状態。馬は嘔吐できない動物なのでいつか胃潰瘍が穿孔して死んでしまう。

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十二指腸の細くなった部分の内面がこれ。

十二指腸炎が治癒する過程で瘢痕収縮し細くなってしまったと考えている。

こうなっては内科治療を続けても効果はない。

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Photo_88  手術して治すのも非常に難しい。十二指腸はアプローチしにくい場所にあり、胆管、膵管など扱うのに特別な注意が必要な構造がそばにある。

胃からの流出や、胆汁、膵液の分泌、消化管ホルモンの分泌や作用など、いまだにわかっていない部分も多い。

十二指腸そのものはいじらずにその後ろの空腸を胃につなげてしまおうという方法もある。

しかし、閉塞部位が胆管膵管開口部より胃に近い部分だと、胆汁や膵液がまた胃に戻ってしまう。

それで、胆汁や膵液を胃に戻さず流すための空腸空腸吻合も同時に行う。

その模式図が上。

海外の教科書にはすぐれた挿絵が使われている。画家はスケッチができても、珍しい手技はその場で写生できるわけではない。

獣医師は手技を行うことができ、解剖図もわかっていても絵が描けない。だから、すぐれた挿絵を描いてもらうのはたいへんだろうと思う。

写真を撮っておけばよいようなものだが、実際には写真ではわかりにくいことも多い。腹腔内、膣内、口腔内など写真には取りにくい場所も多い。

で、上の絵は私描いてみました。手技をわかっていただけるでしょうか?ご感想をお寄せください。

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 話がそれた。したいのは挿絵の話ではなく、十二指腸閉塞の治療としての胃空腸吻合。

生存率は25~50%。生存しても成長が遅れることが多いので、「血統の良い牝馬しかやらない」とケンタッキーの有名外科医が言っていた。

私は1例、2歳馬で行った。結果は・・・・・北海道獣医師会雑誌をお読みください。

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 Photo_83

 遠くに残雪の日高山脈。


2 コメント

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会誌読みました。 (豆作)
2006-05-24 21:53:46
会誌読みました。
外部に出せない胃に、空腸を吻合させるなんて、どうやってやるんだ、すごいテクニックだなぁと、同僚の間で話題になりました。
機会があったら見学してみたいです。
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 意外に楽でした。ま、胃がパンパンに張っていた... (hig)
2006-05-25 21:25:22
 意外に楽でした。ま、胃がパンパンに張っていたりすると、汚さずやるのは難しくなるかもしれませんが。
 自動吻合器は日本では高くて、私たちには使えそうにありません。
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