馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

繁殖牝馬の膀胱破裂

2006-05-26 | その他外科

 ゆうべは結腸捻転の手術で、寝たのは2時。

 その前夜は、やはり開腹手術で寝たのは朝4時。

 そろそろ最盛期かもしれない。以前から年間の忙しさのピークは6月5日だと思っている。誕生日に家にいるのは2回に1回くらいだから。

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 急患・重患ラッシュの始まりは、分娩後の繁殖牝馬の膀胱破裂。

これは、尿道括約筋を切開して膀胱を膣内へ反転させて縫合した4症例を Vererinary Surgery http://www.blackwellpublishing.com/journal.asp?ref=0161-3499&site=1 に以前に報告した。

 USAケンタッキーの有名診療所 Hagyard Davidson Mcgee http://www.hagyard.com/ のグループは膣底を切開し、膀胱を膣内へ脱出させ、膀胱破裂を縫合した2症例を報告している。

その方法だと、破裂孔が膀胱尖部であれば縫合しやすく、しかも尿道切開しないことは尿膣になりにくいという繁殖牝馬にとっては大きなメリットがある。

しかし、破裂部位が膀胱頚部腹側だと縫合できるかどうかわからなかった。

Photo_90 今回の症例の破裂孔は、はまさしく膀胱頚部腹側だった(左)。

しかし、膣底を切開し、膀胱を膣内へ脱出させる方法を試みた。

縫合はかなり難しかった。

だが、尿道切開して縫合するのと同様の困難さではないかというのが感想だ。

Photo_93 左が縫合後、再内視した画像。

膀胱はより膨らむようになっており、膀胱内で破裂孔より上に尿が貯留し始めているのがわかる。

今後は、破裂部位がどこであろうと膣底を切開し膀胱を膣内で漿膜側から縫合する方法でやろうと思う。

膀胱破裂を診断し、縫合できれば、あとはPCV75%という脱水、カリウム7mEq/lという電解質異状、BUN160mg/dlという尿毒症をなんとかするだけだ。

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 胃潰瘍について書いたと思ったら、胃潰瘍穿孔の子馬が来た。すでに末期症状で、処置なし。

そろそろ季節だから、注意しましょう。という気持ちがあって書いたんだけど・・・・・

                          


2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
すごいテクニックですね。いくら反転or脱出させて... (kiri)
2006-05-26 23:39:05
すごいテクニックですね。いくら反転or脱出させても、そこは膣内。
内視鏡で見ながら縫合するんでしょうか?そもそも両腕が入るんでしょうか?
ほんとにすごいとしかいいようがないです。
子馬の胃潰瘍がそんなに多いとは知りませんでした。しかもロタが関わってるなんて・・・
子牛でもありそうな話ですね。意識してみようと思います。
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>kiri先生 (hig)
2006-05-27 06:19:09
>kiri先生
 膣内へ両手を入れて、指で針を持って縫合しました。特別に長い把針器もあるんですが、私は道具を使わないのが良いようです。
 
 そういうと子牛もロタで第4胃潰瘍になっているかもしれませんね。人の子供はロタで結構吐きます。馬の場合はやはり吐けないのが命取りになるのかなと考えています。
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