午後、腹腔ドレナージ。 (右)
月曜日、妊娠馬の結腸の便秘と変位の開腹手術。
この馬は火曜日に退院した。
昨夜、結腸便秘の育成馬が入院。
今日、水曜日、黒毛和種子牛の陰睾の開腹手術による摘出。(左)
黒毛和種子牛の陰睾は、1-2年に1頭あるかどうかだ。
他の地域でどうしているのか知らないが、うちは牛でも日本で指折り衛生的に開腹手術できる施設かもしれない。
午後、疝痛4日目の繁殖雌馬の腸閉塞。
結腸左背側変位かも、ということだったが、直腸検査してみるとどうも違う。
しかし、血液検査所見はPCV50%、乳酸地2.8mmol/l。
CRTも1.5秒と延長。
超音波では小腸に膨満部あり。
先立つ虫卵検査では駆虫していないらしく円虫卵多数だったそうだ。
・・・・・・・寄生虫性栓塞による血塞疝か・・・・
内科治療してみて駄目なら開腹手術しましょうか、と提案したが、
「もう開腹手術して欲しい」とのこと。
開腹手術すると盲腸、回腸、空腸の一部が色調悪く、内容を推送しても動きも色調も回復しない。
やはり、腸管膜根部の動脈が閉塞していることによる腸管壊死の始まりのようだ。
もう少し状態が良ければ、ヘパリン治療などしてみる方法もあるかもしれないが、壊死がはじまっているようだと内科的にも外科的にも助ける術はない。
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解剖してみると、腸管へ血液を送るはずの動脈は完全に閉塞している。
その血栓の中には円虫の子虫が入っている。
この子虫が動脈の壁に食いつくことで、血栓ができて動脈を閉塞させる。
まったく駆虫しないと、最も大きな被害になるのは、この円虫による寄生虫性動脈栓塞によるものだろうと考えている。
かつては、馬を解剖すると、多かれ少なかれこの動脈瘤があった。
しかし、イベルメクチン製剤が販売されてから、動脈瘤がある馬の方が珍しくなった。
昔の駆虫薬は、消化管の中に居る円虫しか殺せなかった。
しかし、イベルメクチンは血管内にいる円虫の子虫も殺せるようで、そこが画期的だったのだ。
良い駆虫薬があっても、使わなければ意味はない。
繁殖牝馬に駆虫って大丈夫でしょうか?
大丈夫です。
定期的な歯の検査と駆虫は、欠かしたことありません。
それに比べると駆虫薬の発明される以前の馬や、野生の馬は、寿命が短いのでしょうね。 10才位?
野生の鹿は、内も外も虫だらけと聞いたことがあります。
馬の寿命は品種によっても差があるようです。あまり改良を加えられていない品種が強いのかもしれませんね。
それと、自然に近い環境で生きることなのでしょう。人が密飼いすることが寄生虫の濃厚感染につながります。
野生動物と寄生虫がどうバランスをとっているのか、たとえばアメリカの野良馬ムスタングあたりで調査されていないのか興味が湧きます。
かなり遅いコメントになってしまいすみません。
子牛の陰睾の手術って教科書にもあまり載って
なくてどうしていいかわかりません。
解剖図説や犬猫の方法を頼りに陰のうやそけい部を切って探しますが
尿管や陰茎を間違えて結紮してしまったり・・・
一般的なアプローチとしてはやはり陰茎の脇を
切開する方法なのでしょうか?
陰睾の手術は簡単に終わることもありますが、探し当てられないとたいへんですよね。文献では、腎臓脇の脂肪に埋まっていたのもあるそうです。それは解剖で確認されたものですから、手術で探し出して取り出すのは無理かもしれません。
「家畜診療」に手術方法や睾丸の存在位置の文章が載ったことがあると思います。
鼠径付近をよく探して精巣がなければ、
陰茎の脇から切開して、内鼠径輪から膀胱脇~尿管に沿って探します。
麻酔を見てくれる人と、助手を付けて、手術台に乗せてやりたい手術ですね。
陰睾でも、タマはやっぱりタマで、間違えてなければはっきりタマそのものだとわかるはずです。
なるほど。腎臓の付近ですか。
場所を特定するのも大変だから、あまりやらないんでしょうね。
陰睾のタマは通常より小さくなっているとも聞きますし。
家畜診療、漁ってみます!!