3歳休養馬が疝痛を示し、その後も3日ほど調子が悪いとのことで来院。
投与されていた流動パラフィンは通過している。
血液所見は悪くない。
超音波で、結腸左背側変位は否定。大結腸は膨満気味。
直腸検査でも異常所見なし。
胃内視したら、かなりひどい胃潰瘍が見つかった。
この馬、育成馬時代から疝痛を何度かしていて、トレセンでも疝痛を繰り返していた、とのこと。
胃潰瘍ができやすい気質なのかな?
それに加えて右背側結腸の便秘かな?ということで、絶食と、必要なら再度の下剤投与してください、と帰厩してもらった。
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2日後、まだ疝痛を示す、便が出ない、ということで再来院。
直腸検査で固いものに触る。
超音波では内容があり動いている小腸?が見える。
試験開腹してみましょう、ということになった。
Equine abdominal surgery is always exploratory surgery.
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開腹したら、小結腸が閉塞し、固く内容が詰まっている部分がある。
絞めているのは・・・・太い索状物で血管がある。
考えた挙句に、鉗子で挟んで、しっかり結紮止血して、切断した。
閉塞は解除されて、浣腸してもらって水が入ってくるのも確認し、揉み解しておいた。
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しかし、小腸の位置がおかしく素直に出てこない。
盲腸と大結腸の位置もおかしい。
直せない。
右背側結腸が便秘気味で膨満した大結腸を引き出して、骨盤曲切開。
内容を捨てるが、左背側結腸は細い。
水道ホースが入っていると内容が通過しない。
右腹側結腸は、普通は背側結腸と並行に走っているが、この馬の右腹側結腸はそこで蛇行している。
盲腸を引っ張り出すと、妙に長い。
そして回盲部が術創から完全に出てくるほど外に出せた。それもおかしい。
回盲部はくびれず、回腸と盲腸がなめらかにつながっている。
空腸下部にはメッケル憩室腸間膜が付いていて、それも切除した。
回腸盲腸ヒダは異常に大きい。
盲腸結腸ヒダは、ふつうは盲腸外側紐から右腹側結腸紐につながっているが、この馬は盲腸結腸ヒダがはっきりせず、背側結腸へもつながったようになっている。
どのように腹腔内へ戻せば良いのかわかりにくかったが、最終的にはこの馬の腸管構造が把握できて、納めるべき状態で納められた、と思う。
途中で固まり状の大網に触れ、それも切除した。
この馬は、腸管の奇形があり、それに伴って大網にも異常があり、今回はそれが小結腸をゆるやかに閉塞させていたのだろう。
それが徐々に締まって、最初は通過していたが、ついに便が出なくなった。
以前から疝痛を示すことがあったのも、腸管の奇形のために内容の通過が悪いことがあったせいだろう。
そのために胃潰瘍もできやすかったのだろう。
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まだ、疝痛のしやすさは続くかもしれない。
開腹手術した後遺症も起こるかもしれない。
しかし、大網を切除したことと、原因がわかって対応しやすくなったことで、以前からの頻回の疝痛は改善されるかもしれない。
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ニセアカシアは、とても成長力旺盛だ。
地下茎でも増えるらしい。
生態系被害防止外来種リストに載ってもいる。
別名ハリエンジュとされているごとく枝に鋭い棘がある。
花以外には葉も樹皮も毒がある。馬の中毒事例あり。
しかし、花の蜜は蜂蜜の元として重要らしい。
これはニセアカシア・カスクルージュ。
花は食べられるらしいよ。
まだレースに出るのでしょか?
血液検査の結果では見えてこないものなのですね。
今回試験的開腹を決めた一番の理由はなんでしょ?原因がはっきりしない。というだけではなかなかそうはならないと思うのですが。
食べたことはないのですが、てんぷらが美味しいそうですね。赤花なら彩もよさそう。
街路樹のように大木が連なるところもありますが、ハリエンジュの花の香り、好きです。
私は香りはわからないんですよね。しかし、天ぷらの彩りや甘さはよさそうです。