真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「生撮り解禁ツアー むしられたビキニ」(昭和60/製作:AMI企画/配給:株式会社にっかつ/監督:和泉聖治/脚本:橋本以蔵/制作プロデューサー:木俣堯喬/企画:奥村幸士/撮影:佐々木原保志/照明:隅田宗孝/録音:杉崎喬/美術:衣恭介/音楽:新映像音楽/助監督:西澤弘己/編集:菊池純一/効果:小針誠一/制作担当:江島進/撮影助手:図書紀芳・中松俊裕/照明助手:佐藤才輔・山中幸治/監督助手:鎌田敏明・大内裕/スチール:山副準美/メイク:小神野由紀/衣裳:富士衣裳/小道具:高津商会/サイパン車輌:ロバート・デービス/主題歌:『サザンクロスで流されて』作詞:三浦晃嗣 作曲:樫原伸彦 編曲:樫原伸彦 挿入歌『大胆 FLIDAY NIGHT』作詞:三浦晃嗣 作曲:樫原伸彦 編曲:樫原伸彦 歌:聖女隊/衣裳提供:INDUMENT・ていんかーべる・株式会社オカダヤ・5のレモン/録音所:ニューメグロスタジオ/現像:東映化学/出演:<聖女隊>恵理・真衣・亜美 青木竜矢、織本かおる、大滝かつ美、大原薫、ビル・ドロシィー、ブォノ・シャフナー、岡柳太郎、飯島大介、牧村耕治、ビビアン・ドルフ、エミリー・チェン、リンダ・スチュアート、ボブ・ミッチェル、ジェームズ・ワッツ、飯島雅彦、黒明和夫)。出演者中、ビビアン・ドルフ以降は本篇クレジットのみ。美術の衣恭介は木俣堯喬の変名で、製作のAMI企画はプロ鷹の別名義。
 雨のビル群ロングに嬌声が被さり、ピントを滲ませ絡みに跨ぐ。カメラマンの砂岡?裕司(青木)が、合鍵を持たされた女のヤサをノンアポで訪ねたところ、ゆかり(大原)は先輩カメラマンの牧村耕治に抱かれてゐた。自ら挑発しての刃傷沙汰、得意の空手で牧村パイセンを叩きのめした裕司にゆかりは開き直つて激おこ、裕司も鍵を投げ辞す。電話ボックスで仕事を受け、出て来た裕司と菅原恵理(ハーセルフ)が交錯。サイパン島を空から捉へた画にタイトル・イン、壮絶なタイトルの挿入歌はこゝで使用される、ディンドンダン。
 恵理と、矢張り彼女自身の君塚真衣と山際亜美が空港の表に現れる。一行は東京の女子大生で、バイトで金を貯めサイパン旅行に繰り出したものだつた。レンタ単車で三人が適当に流してゐると女の悲鳴が、しかも日本人の。大滝かつ美がトム(ビル)とマリオ(ブォノ)に二人がかりで犯され、ハネムーンの新郎(岡)はフン縛られ転がされてゐる。挙句レイプされる新妻を、恵理的にはホテルのプールで軽く再会済み―残りの二人も食ひつく―の、裕司が木の上から写真に撮つてゐた。と、ころで。a.k.a.岡竜太郎の岡柳太郎が、当サイトの中で混濁してゐた問題が漸く解決。新田栄昭和60年第十作「緊縛 縄の陶酔」(脚本:中良江)に於いて、刑事もう一人を岡柳太郎とする嘘―正しくは山倉峻―を記載した、闇雲か藪蛇に詳細なウィキペディアに引き摺られてゐたものであつた、もう迷はない。
 配役その他、ビビアン・ドルフ以降の外人部はダンサー含め、裕司がトムに報酬を手渡すナイトクラブ要員。飯島雅彦と黒明和夫は、プールサイドにて聖女隊をナンパする日本からの旅行者、「俺達音楽関係者」なる愉快か間抜けな第一声には悶絶必至。そし、て。亜美が部屋に入れたマリオに犯される、地味でなく派手な件をブッた切つて飛び込んで来る織本かおるが、出会ひ以降を一切スッ飛ばし、出し抜けに裕司と寝てゐたりする休暇中のスチュワーデス。寧ろ今より丸々肥えてゐる飯島大介は、パッとしない裕司に、その場仮題で“ルンルンギャル達にとつて常夏天国が地獄に変つた瞬間”とか称して、サイパンでの―仕込んだ―レイプ現場写真の撮影だなどと、破天荒な企画を振る編集長。実は、義母・珠瑠美の翌昭和61年第二作「倒錯縄責め」(脚本・プロデューサー:木俣堯喬/主演:観世彩)に先んじる、限りなく全く同じ造形。その他のその他、主に空港周りの旅行客と、そこかしこに何となく居合はせる現地人。結構膨大な頭数に、肖像権なんぞ一瞥だにせず無造作なカメラが向けられる、商用・オブ・商用の商業映画なのに。
 エンター・イントゥ・病膏肓、和泉聖治映画祭の別に飾りもしない掉尾は、「猥褻・・な、女 黒い肌に泣く」との間に、シブがき隊のバロギャン―も橋本以蔵脚本―挿む昭和60年第三作。一応、今作を最後に和泉聖治は裸映画から足を洗ふ。“一応”と奥歯に物を挟んでみたのは、四年後またしても珠瑠美の1989年第二作「監禁 なぶる」(脚本:木俣堯喬/主演:浅間優子)に、演出協力の形―ポスターには監修―で参加してゐる模様。尤もどれだけ携はつてゐるのか云々いふ前に、そもそも未見、当該作のクレジットを自分の節穴で確認してはゐない。とかくjmdbはおろか国立機関であるnfajさへ、出鱈目だらけの世界につき。
 ネットの中に情報がないといふのが、本当に見当たらない謎ユニットの聖女隊。デビューは当年とのこと、何時まで持ち堪へたのかは知らん。45回転の12インチ四曲入りシングル―公式の扱ひとしてはLP―を少なくとも一枚出してをり、一部では音楽的に高く評価されてゐる風も窺へつつ、劇中使用される二曲―何れも件の12インチには未収録―を聴く限り、クラッシュギャルズに陰毛を生やした程度の印象に止(とど)まる。
 兎も角そんな聖女隊が、大本が何処なのか判らないがそれなりに肝煎りの企画らしく、尺こそピンクと変らないものの、サイパン撮影を観光、もとい敢行した買取系大作。さうは、いへ。予算規模と映画の出来が常に正比例の状態にあるならば、それほど簡単な話もなく。現地調達した黒人に同胞の旅行者を強姦させ、その模様を撮影、男性誌の誌面に載せる。発案した飯島編集長いはく“愛の鉄槌”と豪語してのける、抜けた底がCUBEの殺人トラップよろしく、頸動脈目がけて回転鋸の如く飛んで来さうなプロットが、幾ら昭和の所業ながら大概に過ぎる上に、あるいは下に。三人揃つてビキニを毟られた聖女隊が、何となく立ち直ると割と本格的にこんがり日に焼き、文字通り“一皮剝けた女”を気取つてみせる。屁のやうな物語には欠伸も出ない、以前の惨状なんだな、これが。先に触れた織本かおるの切れ味を頂点もしくは奈落に、繋ぎは全般的にズッタズタ。火に油を注いで、漫然としかしてゐないサイパン風景がふんだんに放り込まれ、元々霞より稀薄な展開を更に稀釈。面白くない詰まらないどころか、爆散したのちに漂ふ粉塵の有様。せめて、一人飛び抜けた絶対美人ぶりを誇る、恵理の濡れ場を映画全体のバランスと引き換へにしてでも、撃ち抜き倒して呉れればまだしも立つ瀬のあつたらうに。といふか、端からバランスもへつたくれもねえ。ある程度以上に精悍で体の動く、青木竜矢の空手アクションも普通に見せればいゝものを、牧歌的なスローモーションで披露するのは御愛嬌の範疇にせよ、恵理が裕司に対してケジメをつける、鼻つぱしらに叩き込むエリキックの、無理矢理にもほどがあるへべれけなカット割りで完全にチェックメイト、終に映画が詰んだ感は否み難い。“サーザーンクロスに愛が絡まつて”、主題歌の頓珍漢な歌詞が象徴的な、いよいよ本格的に一般映画のフィールドに討つて出んとする和泉聖治も、そこそこ大々的に売り出さうとはした聖女隊にとつても、多分プラスにはなつてゐなささうな一作。挿入歌の清々しくダサい歌ひ出しが、乾き果てた心を吹き抜ける、ディンドンダン、トカトントンかよ。


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