真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「密室凌辱18人」(昭和60/製作:日本シネマ/配給:新東宝映画/監督:新田栄/脚本:中良江/企画:伊能竜/撮影:国立二郎/照明:ライトハウス/編集:酒井正次/助監督:岩永俊明/音楽:レインボー・サウンド/効果:中村企画/録音:銀座サウンド/現像:ハイラボセンター/スチール:津田一郎/出演:早乙女宏美・姫川京子・相原ユミ・高橋樹里・久須美欽一・山倉峻・水戸康之・岡柳太郎・滝川昌良)。
 懐中電灯で足元を照らしながらの、白いハイヒールの夜道。家が見え、安堵した姫川京子が灯りを落とすや、何者かの足音が。家が見えたにしては暫しの追跡劇の末、姫川京子が襲撃されたタイミングでタイトル・イン、タイトルバックは在りものの緊縛写真。姫川京子が連れ込まれたのは何処ぞの物置、新田栄の的確なカット割り込みで滝川昌良が手際よく縛り上げると、姫川京子は失禁。したといふのは、全部で十八人をレイプしたと豪語する強姦魔・清原純一(滝川)の、刑事A(久須美)に対する七人目の供述内容。パクられてんのかよといふのは、確かな手応へのズッコケ処。順々に十八人分の武勇伝を嬉々と話す清原に対し、警察が受理した被害届は二件だけ。清原が提供する、結構詳細な個人情報に基き刑事B(山倉)が接触を試みた―清原いはく犯した―女達は何れも口を噤み、お縄を頂戴したのも棚に上げ妙に得意満面な清原とは対照的に、久須りんと山倉刑事は手詰まつた捜査と、清原の相手に往生する。
 配役残り高橋樹里は、八人目の人妻・弥生、水戸康之が昼間から夫婦生活の最中の旦那。清原が忍び込んだ上薬で二人とも眠らせ凶行に及ぶ現場が、今もナベシネマを中心に御馴染の南酒々井のハウススタジオ、一体何時からある物件なんだ。結構可愛くてオッパイも大きい相原ユミは、十四人目の城南大学付属高女子高生・小倉マユコ、岡柳太郎がカーセックス中に襲はれるマユコの彼氏・シンゴ。そして早乙女宏美が、予想通りの性癖を持つ人妻・池田麻美。
 異常に詳細なウィキ―但し記述はあちこち正確とは限らない―が軽く狂気じみて映らなくもない、新田栄昭和60年第十作。「密室凌辱18人」といふのは2007年に発売されたDVD題で、元題は「緊縛 縄の陶酔」とのこと。更に今度はjmdbに行つてみると、新田栄の昭和60年が全十八作といふ闇雲さに圧倒に近い感興を覚える。量産型娯楽映画が、実際に量産された麗しき時代よとロマンを酌めば済む話でもなく、シンプルに体力的にも大概しんどかつたのではなからうか。ところで映画の中身に話を戻すと、あくまで十八といふ人数は裏が取れない以上、刑事ABも半信半疑の清原が拡げた風呂敷に過ぎず、現に野球チーム二つ分の大軍勢が投入される訳ではないのはある意味仕方もない。それにしても何でまたわざわざ今世紀に及んでDVD化されたのだか、一体新東宝が今作のリリースで何をフィーチャーしようとしたのか清々しく解せない平板な出来栄えの一作。始終は概ねも何も終始、濡れ場と取調べ室とを単調に往復。津田篤の劣化レプリカ程度の滝川昌良を逆の意味での筆頭に、俳優部もそれなりに脆弱、三十年の歳月に耐え得る強度には乏しい。初恋相手に裏切られて以来清原が拗らせた憎悪が、早乙女宏美登場の時点で見え見えのオチに呑み込まれ―かけ―る展開は一瞬物語的な深化を覗かせたものの、結局綺麗に等閑視し通り過ぎたところで万事休す。刑事ドラマ風に表面上の体裁だけあつらへた心ないラストが、隙間風のやうに吹き抜ける。


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