真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
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超アブノーマルSEX 変態まみれ/DMM戦
あ行
/
2015年09月12日
「
超アブノーマルSEX 変態まみれ
」(1993/製作:Heaven/配給:新東宝映画/監督:安藤尋/脚本:加藤正人/企画:田中岩夫/製作:廣木隆一/撮影:佐藤和人/照明:金子高志・今泉尚/編集:菊池純一/音楽:John Zorn/助監督:梶野考/キャスティング:石岡正人/演出助手:吉武秀敏・進藤良彦/撮影助手:柳田裕男・寺田緑郎/編集助手:片貝智恵/スチール:石原宏一/衣装:相崎晶玉/現像:東映化学/協力[五十音順]:池訓和・小田口浩史・貝原正行・高橋由香利・高原秀和・坪井美雪・富岡忠文・花山信大・福岡芳穂・福田正夫・横井健司 ナガオカ世田谷スタジオ 03~3336~5193/出演:石原ゆり・八萩純・森山美麗・千田浩・水上岳志・佐野和宏[特別出演]・伊藤裕作・征木愛造・仲野茂)。
画面一面を覆ふ赤いカーテンにクレジット開巻、カメラが緩やかにパンした先は口は赤い布でふさがれ、全身はユルユルに緊縛された―自縛と思はれる―石原ゆり。見開く石原ゆりの目元と、セルフのビデオカメラを抜くと粗い石原ゆりのビデオ画面が砂嵐に変りタイトル・イン。第1大久保架道橋ガード下、カメラマンの坂口(仲野)が、佐野和宏から「私の志集」と称した小冊子を数万円叩いて買ふ。坂口が中身は白紙の志集から何かを破り取り、残りは便所に捨てるカットにモザイクがかゝるのを一体これは何だと訝しんでゐると、後々判明するのがその時坂口が佐野和宏から買つた肝心のブツが実はヤク。私の志集とは奮つてゐるといふのと、さういふ配慮のモザイク処理もあるんだなと感心した、別に推奨はしないけど。坂口が出入りする編集部に顔を出すと、カメアシとしても使ふ若手編集員のテツヤ(千田)が、続々送られて来る投稿ビデオに目を通してゐた。テツヤが使ひものにならないと判断した、縛られた石原ゆりが延々モジモジしてゐるだけのビデオに目を留めた坂口は、ビデオを貰つて帰る。その前段のテツヤと坂口の会話、ビデオは撮らないのかと話を向けられた坂口が、「馬鹿野郎ビデオなんて間抜けなカメラ回してられつかよ、金のためだけに写真撮つてんぢやねえよ」と吐いてのける遣り取りには時代が感じられる。モデルの彼女(八萩)との心ここにあらずな一戦経て、一発キメた坂口は、改めて石原ゆりのビデオに目を通す。カーテンの隙間に覗く都電荒川線の路面電車に注目した坂口は、実際に電車に乗り、赤いカーテンの部屋を探してみる。
配役残り森山美麗は、坂口が足蹴にしながら撮影するデルモ・エミ。水上岳志は、エミと寝たテツヤに落とし前をつけに現場に現れ、高校時代はボクシング経験者の坂口に返り討たれるエミの男・マサヒコ。一旦交錯した後再びロストした石原ゆりの姿を求め、都電荒川線の駅で張る坂口に「今のが最終ですよ」と親切に教へてあげたのに、邪険にされる中年男は伊藤裕作。問題が梶野考の変名である征木愛造が、見れば判る顔なのに何処に見切れてゐるのか全く判らない。
第二戦「
制服美少女 先生あたしを抱いて
」(2004/監督・脚本:高原秀和/主演:蒼井そら)に十一年遡る仲野茂のピンク映画初陣は、安藤尋デビュー作、安藤尋いふても正直誰か知らんけどな(´・ω・`) それは兎も角大問題なのが安藤尋のウィキペディアの記述。“1989年頃より助監督として活動し、成人向け映画をへて1997年に「pierce LOVE&HATE」を監督したが、2002年まで劇場公開は果たせなかつた。1999年のオリジナル作品『dead BEAT』が劇場公開映画デビュー作となる”。いやだから、ピンクは劇場公開映画ぢやねえのかよと、事務的にツッコんでおく。
自撮りビデオの女に心を奪はれた男が、撮影場所を特定するところから女を捜す。物凄く
何処かで聞いたやうな気がする話
であることに関しては気付かないフリでもするとして、十一年後と殆ど変らない、歌よりは上手い程度の俳優・仲野茂は、ダブついたスーツにTシャツを合はせるクソみたいなファッションと、場当たり的かつ表層的な造形にも足を引かれ、一篇を支へきる主人公にしてはカッコばかりつけてゐる割に清々しく物足りない。それなりに粒の揃つた女優部も、腰も満足に振れぬ相手役と温存した石原ゆりを結構引つ張つた末結局満足に使ふなり見せ損なひ、ノルマをこなすのが関の山で共倒れる。立てたフラグを確実に回収する展開はそれなりに手堅く、部屋と電車とで切なく擦れ違ふクライマックスは手放しにドラマティック、かと思ひきや。何故か六分余した尺をしかも大概ユッタリユッタリ喰つておきながら、挙句綺麗に絶命させもしない中途半端なラストが止めを刺す。一言で片付ければ生煮えた一作が側面から繰り出す思はぬ威力の飛び道具が、驚くなかれ音楽を担当するのがジョン・ゾーン。90年代にはニューヨークと東京を行き来した上、古い日本映画好きでピンクのプリントの無造作なジャンクを難じてみせるほどであつたといふから、何かの弾みで上手いこと接点が発生したのであらう。
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