真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「SEXライフ 熱い夜に抱かれて」(1993/製作:関根プロダクション/提供:オーピー映画/監督:川井健二/脚本:ミスター・チャン、佐々木優/撮影:伊東英男/照明:秋山和夫/音楽:リハビリテーションズ/編集:フィルム・クラフト/監督補:一ノ瀬教一/撮影助手:佐久間栄一/照明助手:春川博/助監督:佐々木優・井戸田秀行/効果:東京スクリーンサービス/出演:林由美香・伊藤清美・桜井あつみ・野澤明弘・牧村耕次・高田磨友子・三条まゆみ《友情出演》)。“配給:大蔵映画”ではなくオーピー映画提供としたのは、白黒のOP開巻に従つた。
 文字盤が甚だ見辛いデザインのおむすび型の目覚まし時計、なかなか止めあぐねる女の手の傍らから、伸びて来た男の手が止める。両親とは早くに死に別れた武井か武居か竹井か竹居兄妹の二人暮らし、夜の仕事で妹を起こしこれから寝る兄・悟郎(野澤)を、短大生の妹・梨沙(林)は寝惚けてゐるのか何処まで本気なのかパンティの尻を見せ誘惑する。当然悟郎は完無視、不貞起きした梨沙の仏頂面を押さへてタイトル・イン、ノジーを関根組で観るのは初めてだ。
 悟郎に悟られぬやうコンドームを手荷物に忍ばせ出撃した梨沙は、ロング・ショットの停留所にてバスを待つ。事そこに至る仔細はスッ飛ばした上で、ヌード撮影に応じた梨沙がハンサムなカメラマン・若宮トオル(牧村)と寝る絡み初戦―裸だけならばオープニング・クレジット中に朝シャワーあり―は、例によつて例によつて例によッッッッてノー・モーションで突入する果てしなく長い回想パート。二十年前も今と全く変らない、関根和美のお家芸に震撼する、まるで進歩してゐないともいへる。回想明けも回想明けで、停車したバスに梨沙は結局乗らない、一般の乗降客が乗り降りするカット―画はバス越し―が無造作に間延びすること間延びすること。
 配役残り先に飛び込んで来る三番手の桜井あつみは、若宮が梨沙に続き―先かも―手をつけるモデル、オッパイ要員。伊藤清美は、仮称摩天楼でバーテンとして働く悟郎の同僚ホステス・冴子。二つ上のコブつきながら、悟郎とは結婚を見据ゑた関係。ウィキペディアにも記載されてゐない別名である、イコール亜希いずみの高田磨友子は、亭主の不貞を知り摩天楼に怒鳴り上げに来る若宮の細君・みよ子、みよ子がどうやつて梨沙の兄が摩天楼に勤めてゐることを突き止めたのかは清々しく不明。当時既に引退状態であつた三条まゆみは、基本ボックス席の背中しか見せない、摩天楼ママ?単なるゲストどころかビック・スターにも関らず、満足にその人と知れる形で抜かれるのは瞬間的な1ショットのみ、贅沢にもほどがある。その他客要員に関根和美と佐々木優、みよ子乱入パートにもう三名見切れる。
 新東宝で一旦デビュー後二作目以降は―映画を離れた期間もあるにせよ―長く大蔵を主戦場に戦ひ続ける関根和美が、1993年から1995年にかけて使用してゐた別名義・川井健二の第一作。林由美香大蔵初参戦、以後関根組十二作連続主演といふ―殊に後者が常識外れの―特筆すべき点もありつつ、個人的には前田有楽がデジタル移行したのに伴ふ、フロンティア・リバイブが大きなトピック。何はともあれ、これで関根和美のハンドレッド戦が戦へる、まだ先は結構長いけどな。
 物語的には概ね濡れ場をマッタリ連ねるに終始しつつ、若宮との不倫も、何時も自分のことは後回しに面倒をみ続けて来て呉れた、兄の過保護が重たくなつた贅沢な反発であつた。梨沙が悟郎に押し殺した感情を爆発させ、何故かその場に現れた冴子込みで和解に至るクライマックスの舞台に、見晴らしの開けた公園を選んだ一手間が功を奏し、大した中身もなかつた気がする割に、観戦後の心持ちは思ひのほか爽やかに締め括る。それともうひとつ琴線に触れたのが、みよ子に突きつけられた若宮撮影によるヌード・スナップを、悟郎が今度は当人の梨沙に突きつけ激しく叱責する件。その際、「何なんだお前は!」と激昂した悟郎が梨沙を平手打ち、するものかと思ひきやグーで殴つたのには驚いた。何なんだお前はではない、お前が何なんだ。悟郎こと野澤明弘が観てゐて居心地が悪いくらゐいい人造形を強ひられる中での、突発的に火を噴くノジーぽさには拍手喝采した。


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