真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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駄楽ひまなときブログ
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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巨乳未亡人 お願ひ!許して…
荒木太郎
/
2014年12月21日
「
巨乳未亡人 お願ひ!許して…
」(2014/製作:多呂プロ/提供:オーピー映画/監督・脚本・出演:荒木太郎/撮影・照明:飯岡聖英/編集:酒井正次/音楽:モンタージュ・ファクトリー/助監督:三上紗恵子/撮影:宮原かおり・末永祐紀・畠山航/演出助手:三上一/製作進行:佐藤選人/ポスター:本田あきら/録音:シネ・キャビン/現像:東映ラボ・テック/タイミング:安斎公一/協力:花道プロ・小林徹哉・光永淳/出演:愛田奈々・松すみれ・星野ゆず・佐々木基子・石川雄也・野村貴浩・なかみつせいじ・今泉浩一・太田始・牧村耕次・那波隆史)。協力が、ポスターには花道プロと光永淳に、小林徹哉でなく小谷香織。音楽を担当したモンタージュ・ファクトリーといふのは、宮川透のバンドあるいはユニット。
タイトルからイン、続いて路傍の石たる文言が現れるのは、原作とでもいふつもり?いや、未だ山本有三の没後五十年が経過してゐない以上、精々原題か。兎も角クレジットが追走、ロングでモノレールを一拍挿んで、全裸で横たはり電話を取る松すみれが飛び込んで来る。リストラ後、別居中の妻・秋子(松)を始め周囲からも見放され八方塞がつた谷口周平(那波)は、町内のラジオ体操グループのマドンナ・垣花佐和子(愛田)と出会ふ。
配役残り―早えな―野村貴浩は、秋子の不倫相手・司博。佐々木基子は、佐和子と纏めてこの人等もリストランの倉田節。なかみつせいじと今泉浩一と太田始は、ラジオ体操メンバーの飲食店店主・杉山恒夫、袈裟を着てゐるゆゑ多分坊主の西脇実、職業不詳の近藤庄太郎。小谷香織含め協力勢と佐藤選人も、ラジオ体操の輪の中に見切れる。あと相変らず子連れの淡島小鞠(a.k.a.三上紗恵子)も、成長日記か。牧村耕次は、遺影の夫(不明)没後六年佐和子が面倒を見続ける、目下は痴呆症も発症した義父・種吉。元石屋で、琴線に触れる石を見付けると―元々最早殆ど覚えてない―我を忘れる。石川雄也は、金に窮した佐和子が文字通り一肌脱ぐ、白タクならぬ白売春の客。星野ゆずに関しては後述する。忘れてた、荒木太郎は谷口を悪し様にいふ噂話と滞る家賃を催促する―垣花家の―大家の声と、
クロブタカマトの「カマト運輸」
引越作業員、もう一人ゐる若い後輩は判らん。一応ツッコんでおくと、斯くもナノ尻穴な御時勢、今時の引越屋が幾ら待ち呆けを喰らはされてゐるとはいへ、客の部屋の前、乃至マンションの通路で煙草は吸はんよな。一歩間違へたらトラックの中でさへ許されない可能性も、己等不自由な世界を作るのがそんなに楽しいか。
はてさてな荒木太郎2014年第二作、松すみれのゴージャスなオッパイの陰から、野村貴浩が不意に身を起こし正しく出現するカットには、ピンクで映画なピンク映画らしい冴えが煌いた。徘徊する種吉が分け入つた薮の中にて、不自然極まりなくもそんなロケーションで寝てゐる星野ゆずと出会ふ件はまたエラい三番手の放り込みやうをと一瞬呆れかけたが、星野ゆずに関心を払はず種吉はそこにある大きな石を引き抜かうとする。即ち、種吉が石に激しく執着する種を事前に十全に蒔いた末に結実するシチュエーションであるといふ点は、三上紗恵子が終に辿り着き得なかつた論理性のビクトリー。イチ・ニ・サン・シ、すりすりすりすりとラジオ体操と称して訳の判らないオリジナル体操の、同時に異様な溢れんばかりの幸福感は、荒木太郎が今なほストライクを取れる数少ない決め球。転がり込んだ垣花家で、ありもしない金目の物を物色してゐる現場を佐和子に見咎められた星野ゆずが、信じて貰へなくていいと前置きした上で投げる「好きぢやなきや、寝なかつた」との捨て台詞も、上野オークラのマスコットガールとしてのふんはかしたキャラクターとは全く異なる相貌を呈した、星野ゆずのスレた突破力に加速されハクい。尤も、肝心の佐和子と周平の物語がスッカスカ。外堀がある程度豪華であつたとて、本丸が掘立では話にならぬ。それまで半ばでもなく見下すかのやうに周囲との接触を拒んで来た谷口が、愛田奈々の色香にチョロ負かされたといふならば万感の同感を以て肯くほかないにせよ、スッぽかした町内掃除に出し抜けに狼狽するかの如く改悛する。取つかゝりから快調にバタついたラブ・ストーリーは、以降も銀幕に愛田奈々が映し出されてゐる以外にはさして拡がるでも深まるでもなく。羨ましさが限りなく爆裂するラスト・ショットは素晴らしいものの、佐和子も佐和子で“覚悟”の一言を口にしたにも関らず、何だかんだ、何だかんだとしかいひやうのない展開に従ひ谷口と懇ろとなるに至るのでは、着地点が然るべき納まり処に納まつたといふよりは、正直単に水が低きに流れた印象の方が強い。これは純然たる好き嫌いに過ぎないのかも知れないが、那波隆史といふ人は笑顔の輪郭があやふやなので、下手な好い人役、もしくはハッピー・エンドにはどうしても御都合なり自堕落さが先に立つ。マキシマムにそもそも、今作の何が、何処が路傍の石かといふ話である。石好きの爺が出て来るだけだ、何だそりや。結局、事ある毎にフィルム文化の終焉を声高に嘆いておきながら、残された数少ない、指を折るにしても片手で足る本当に残り僅かな35mmフィルムで映画を撮る機会を、今回荒木太郎は何時もの気の合つた仲間と、すりすりすりすり漫然と茶を濁してしまつたと難じざるを得ない。そして、それは現代ピンクにとつてひとつの象徴的な光景でもあるだなどと、惚けた顔して筆を滑らせてのければ実も蓋もない、ババンバン。
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