真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「人妻AVギャル 団地売春」(1993/製作:小川企画プロダクション/配給:大蔵映画/監督:小川和久/脚本:池袋高介/撮影:伊東英男/照明:内田清/音楽:OK企画/録音:ニューメグロスタジオ/編集:フィルム・クラフト/助監督:石崎雅幸/撮影助手:佐久間栄一/照明助手:佐野良介/現像:東映化学/タイトル:ハセガワ・プロ/効果:協立音響/出演:水鳥川彩・山岸めぐみ・英悠奈・久須美欽一・杉本まこと・栗原一良・山科薫・鳥羽美子・姿良三)。出演者中、姿良三は小川和久の変名。
 いきなり佳境の、テレフォンセックスに狂ふ水鳥川彩が飛び込んで来る開巻、スタート・ダッシュのトップ感は申し分ない。三年前ファンと結婚し寿引退したAVギャル・飯島彩こと目下団地妻の佐藤あけみ(水鳥川)は、旦那が長期出張中につき欲求不満を持て余し、旦那相手のテレフォンセックスに燃える。こちらは余裕ある旦那(久須美)を軽く顔見せ、何時ものテーマが起動してタイトル・イン。水鳥川彩はクレジットと併走する一仕事を手短に完遂、ところでその頃旦那の傍らにはといふと、性的込み込みのマッサージ嬢・ユリ(英)が。コッテリと英悠奈V.S.久須美欽一戦を消化した上で、佐藤夫婦は互ひに何となく疑心暗鬼を募らせ、てみたりもしつつ、その種が後々花開く訳では特にない。あけみが元AVギャルであつたといふ設定も、ここで旦那が無造作に投げる。仲良しの御近所(山岸)の登場噛ませ、またしても鳥羽美子がママの仮称「摩天楼」にて、飯島彩のファンであつた井上(杉本)から声をかけられたあけみは、白状こそしないものの気楽に二つ返事で意気投合。何処ぞに踊りに行く件は軽やかに割愛し、あけみは井上をサクサク自宅に連れ込む。
 配役残り、総計五つめの名義ではなかつた栗原一良は、井上からあけみに紹介される川野か河野。川野が井上の自慢話に喰ひつく、摩天楼のカウンターに二人並んでナポリタンを食ふファースト・カットが地味にイイ感じ。山科薫は、あけみには下手だと愚痴を零す割に別にさうも見えない、山岸めぐみの夫。そして二十年前ともなると流石に若い姿良三は、久須美欽一長期出張先の課長。課内にもう一人見切れる若い男は、定石からいふと石崎雅幸か。
 これといつてテーマもなく適当に選んで見てみた、今上御大・小川欽也の、全て和久名義による1993年全十作中第九作。井上を旦那の居ない家に上げたあけみが何故かいはゆるといふか純然たる手コキ―但しそこに旦那からかゝつて来た電話で点火、最終的には事に及ぶ―挙句に対川野戦に際しては、団地ソープを正しく本当に文字通り何時の間にか開業してゐたりする魔展開には、軽くでもなく吃驚した。因みに浮気になるので本番はしないとの大した方便で、それゆゑあけみ曰く“インスタントソープ”とのこと、何だそれ(´・ω・`)
 起承転結でいふと承部の、階段を階数ごとブッ飛ばす大を通り越した超飛躍さへさて措けば、流れる水の如く一時間を滞りなく見させる、スマートかどうかは兎も角、スムーズな裸映画。山科薫が転部として十全に機能し、山岸めぐみが叩き込む一応ブラックなオチはそこだけ掻い摘むとそれなりに堅い。結局終盤の鍵を握り劇映画の体裁を整へるのが山木品(やまぎしな/仮称)夫婦である以上、否めないビリング転倒に関しては気付かないふりをする。

 大事な枝葉を忘れてた、井上役の杉本まことはアテレコ。時期が時期だけに、主はとても特定出来ない。この頃には後年熟成する独特の間をもたせた口跡が大きく未完成であることもあり、九年後「若妻 敏感な茂み」(2002/主演:山咲小春)の時のやうに如何ともし難い違和感を爆裂させるでもなく、本人の声を知らない限り案外すんなり呑み込ませるのではなからうか。


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