真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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ザ・変態ONANIE/DMM戦
小川欽也
/
2014年06月24日
「
ザ・変態熟女 ‐イカせて下さい!‐
」(1992『ザ・変態ONANIE』の1999年旧作改題版/製作:新映企画株式会社/提供:Xces Film/監督:小川欽也/脚本:池袋高介/企画:伊能竜/撮影:伊東英男/照明:小林実/編集:フィルム・クラフト/助監督:石崎雅幸/監督助手:石川太郎/撮影助手:川井勝人/照明助手:小島和夫/音楽:OK企画/録音:ニューメグロスタジオ/効果:協立音響/現像:東映化学/出演:藤崎あやか・水鳥川彩・伊藤舞・野澤明宏・田崎潤一・栗原一良・二村仁)。企画の伊能竜は、向井寛の変名。
女子大生の―だから新題に於ける“変態熟女”とは何処から湧いて来た機軸なのか―水上昭子(藤崎)が、電話越しの婚約者とのテレフォン・セックスに燃える。受話器片手に秘裂に指を走らせる藤崎あやかの画が、複数に分裂しグルグル回転する万華鏡的な加工を施した上で、大絶賛現役のOKスキャットが起動してタイトル・イン。その頃当の婚約者・安井雄一(田崎)はといふと、出張先のホテルにて浮気相手の南野絵津子(伊藤)と実は実戦の真最中。ここで、田崎潤一が後の田嶋謙一、きれいな石野卓球風の顔も髪型もあまり変らないが、全体的に細い。一方、昭子宅の隣家のベランダでは野澤明宏(役名不詳につき以後ノジー)が洩れ聞こえる嬌声に大興奮。ノジーが息を弾ませネクタイを緩めるファースト・カットの、安定したギラつき感が堪らない。ハンサムとワイルドの絶妙なブレンドと、色気と張りのある発声。正直忘れられた感も強い野澤明宏といふ役者に対する評価は、低きに過ぎるものであつたのかも知れない。薮蛇な契機で盛り上がつたノジーを、妻のミホ(水鳥川)はおとなしく受け容れる。ノジーが買つたばかりのビデオカメラでブランコに乗るミホを撮影してゐるところに、昭子が通りがかる。カセットデッキで録音したテープ・レターも遣り取りしてみたりする安井に、ビデオ・レターを希望された昭子は、ミホに相談する。おお、ここでかう話が繋がるのか。そこで驚くのも如何なものかといふ疑問は一旦さて措き、老獪なのか豪快なのかよく判らない作劇術に吃驚する。
配役残り栗原一良は、兄貴には内緒の借金を返しに来る安井の弟・マコト、勿論何だかんだと未来の義姉を喰ふ。現:二村ヒトシこと二村仁は、上司であるノジー課長のビデオカメラを借りに来た道中、カラオケ帰りのミホと合流する工藤。
小川欽也1992年全十三作中第六作は、この時何が起こつたのか多分最初で最後の筈のエクセス作。因みに残りの十二本は全て大蔵で、和久名義。耳馴染みのあるOK劇伴以外に具体的に何がどうといふのは難しいが、確かに小川欽也の映画であるやうに見える。逆からいふと、新映企画と来ると大本命の新田栄にせよ誰にせよ、小川欽也の仕事であることを疑はせる要素は見当たらない。昭子と安井を軸に進行する色恋沙汰かと思ひきや、舞台は昭子宅と隣家―撮影上要は一部屋で事足りる―から殆ど外に出ない。少なくとも今の感覚ではとても家庭用には見えない馬鹿デカいビデオカメラを飛び道具に、捌けたノジー夫妻に素直に翻弄された昭子が、一人前のONANIE狂に開眼する―
我ながら何をいつてるのか全く判らない
―物語は逆の意味で鮮やか、物語といふほどの物語か?ある意味名人芸といへなくもない最小限スレスレの繋ぎで、濡れ場を連ねることにのみ全てを賭ける誠腰の据わつた裸映画。少々無理といふか直截にはツッコミ処の多いシークエンスも、今の目にも全く古びない、強靭な三本柱の裸が案外有無もいはせずすんなり呑ませる。特に、引き締まつた精悍な体躯も誇る野澤明宏と、絶対美人・水鳥川彩の絡みは異常な完成度。
今回、事前の下拵へ段階で激しくときめいたのは、出演者中に並ぶ栗原一良といふ名前。もしや、栗原良のリョウ・
ジョージ川崎・相原涼二
に続く五つ目の新名を遂に発見か!?と喰ひついたものの、純然たる単なる全くの別人でしかなかつた。
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