真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「監禁いんらん遊戯」(2013/製作:Blue Forest Film/提供:オーピー映画/監督:竹洞哲也/脚本:小松公典/撮影監督:創優和/編集:有馬潜/音楽:與語一平/助監督:小山悟/監督助手:奥村裕介/照明助手:小松麻美/協力:加藤映像工房・江尻と小鷹/出演:天野小雪・秋菜はるか・佐々木麻由子・津田篤・久保田泰也・岡田智宏・岩谷健司・倖田李梨)。
 適当に庭を弄るロッジの雇はれ管理人・天神四郎(岩谷)が、山道を近付いて来るトレンチ・コートの女に目を留める。トレンチの女・名倉遥佳(天野)が画面を右から左にスライドして捌けタイトル・イン。目標の五十店舗目前のラーメン店を経営する遥佳の夫・真澄(津田)は、交通事故の―リアルな―大怪我から漸く退院。真澄に何気な浮気の影も看て取つた遥佳は、転地療養先を探してゐた。天神が変に含みを持たせる一方、何故か不安定な遥佳は建物の構造上地下ではない床下部屋にて、激しい思慕の綴られたノートを発見する。そもそもそんな遺留品が残つてゐる不自然はさて措き、その場所はかつて丸山詩子(秋菜)が父親が恨みを買つた福原雅(久保田)に、誘拐・監禁された現場であつた。詩子が最初に福原の襲撃を受ける件、日傘が宙に舞ふ凄まじいクリシェは果たして如何なものか、逆に吃驚した。半裸に剥いた上目隠しと拘束した詩子に、福原はそれ以上だか以下に手を出さうとはしなかつた。代りに他の女(ボディダブルは天野小雪)との情事の気配に曝し続けた後(のち)不意に姿を消した福原は、詩子に強烈な自身に対する希求を刻み込む。話を聞く内何時しか詩子と自らを混濁させる遥佳に、天神は既に若くはない老いに壊れた女・長田五月(佐々木)と、本好きの人嫌ひ・湊川公一(岡田)とのもうひとつの“事件”についても語り始める。一瞬誤解しかけたが池島ゆたかの「巨乳奥様 エッチで御免なさい」に見切れる以前に、関根和美の「巨乳天国 ゆれ揉みソープ」がある佐々木麻由子は、何某以来のピンク出演を詮索するには早過ぎた。
 いはゆる曰くつきの物件に越して来た女が、因縁染みた魔性に囚はれる。竹洞哲也2013年タイミングの問題で控へめに最終第三作は、ホラーホラーといふほどには別にも何も全然怖くない、竹光ならぬ竹ホラー。我ながらクッソみたいに詰まらない冗談は、それが狙ひであるといふのは決して負け惜しみではない。二人の女が藪から棒にクロスする詩子篇は、女優部新顔二人の清々しいまでの心許なさに順調に失速。妙にピンク大賞での受けがいい山内大輔の向かうを張つた訳でもあるまいが、急におどろおどろしい方向に舵を切る五月篇はその点俄然格段に安定感を増しつつ、結局全篇を貫くメリハリの乏しさに屈し完全に不時着する。濡れ場の歪みの一点突破で品性の―更に―下劣な観客の琴線を激弾いてみせるでもなく、となると高々一時間に過ぎない尺をまるで停止したかに思はせる、よくいへばSF的な超高速移動を疑似体験出来る一作、それは全く話が違ふ。派手に卓袱台を粉砕するほどの今風にいへば草を生やすツッコミ処にも欠き、ただ単に面白くないといふ意味で裏ランキングに潜り込む可能性すら閉ざされた、ワーストの有力候補である、力が有るのか無いのだかよく判らない。

 配役最後に残り倖田李梨は、連鎖の最前線に踏み入れてしまつた女。


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